秋田県内ではクマの目撃件数が増加しているほか、5~6月にかけてクマに襲われるなどして1人が亡くなり、4人がけがをしています。

クマに出合わないようにするため、クマよけの鈴を身に着けたり、撃退スプレーを携帯したりして外出することが日常の光景に変わりつつあります。

日常の光景の一つとなりつつあるのが「忌避剤」です。

忌避剤は、クマが嫌うとするにおいがするもので、クマを寄せ付けない一定の効果があるとされています。被害防止の“お守り”として、商業施設などはもちろん、個人でも活用が広がっています。

秋田市のスーパーマーケット「グランマート泉店」では、2025年秋から店舗の入口と従業員口、計3カ所に忌避剤を設置しています。

店の周辺や泉地区では2025年、クマが相次いで目撃され、入り口の自動ドアを手動に切り替えるなどの対応を余儀なくされました。

2024年には秋田市内のスーパーにクマが入り込み、従業員がけがをしたほか、丸2日以上クマが中にとどまる事態となり、事業者はいかに来店客と従業員の安全と命を守るか、課題を突き付けられました。

そこで導入したのが忌避剤です。

グランマート泉店・高橋誠店長:
「忌避剤は、クマを近寄らせない効果があると言われていて、非常にありがたい。客から『安心して買い物ができる』という声も聞かれているし、従業員からも『非常にありがたい』という言葉をもらった」

県内の多くの商業施設などで使われている忌避剤は、その名も『熊をぼる』。東北の方言で「追い払う」という意味です。青森県五所川原市のエコ・ワークが製造しています。

忌避剤はどのように作られているのか。クマ被害を減らすためにどのように活用すれば良いのか。製造現場を取材しました。

忌避剤の主な成分は、ハバネロの10倍の辛さとされる激辛唐辛子「ブート・ジョロキア」です。

栽培が難しいため輸入が主流ですが、エコ・ワークは土壌改良を重ねることで技術を確立し、種から作っています。

エコ・ワーク 石岡広志代表:
「ことし作付けしたジョロキアは全部で2900株。去年の2.5倍の作付けをした」

ジョロキアは水洗いして選別し、乾燥させて粉末にします。その後、カプサイシン成分を取り出すため、農業用のアルコールを加えて熟成させます。

石岡代表:
「ジョロキアのカプサイシンのにおいは、当然クマが逃げるくらいのにおいだから、人でも嫌がる人はいる。一般の人にも広く使ってもらえるよう、さらに数週間熟成させる。すると、より色が濃くなり、成分はますます強くなっている。角が取れたようなにおい」

クマは人間の数千倍も鼻が利くと言われているため、かなり離れた場所でもにおいを察知しますが、効果が長続きしなければ意味がありません。長期間においが持続するよう、熟成させたジョロキアに、木炭を作る時に出る煙を冷却した「木酢液」を加えます。

石岡代表:
「使用している木酢液は燻製(くんせい)くさいと思う。全部を醸造して混ぜることにより、期間を少しでも長く使えるようにしている。そうして完成した商品が『熊をぼる』。できるまでに1カ月近くかかる」

木酢液も虫や動物を寄せ付けない効果があるとされているほか、ジョロキアの蒸発スピードを緩やかにします。

石岡代表:
「クマが『熊をぼる』を嗅げば、自然発火、やけどしたような幻覚を見る。私たちも怖いが、山の動物にしてみれば山火事は怖い。それを連想させるにおいと液体」

こうして完成した『熊をぼる』は、山菜採りなどで使える携帯用の「ポーチタイプ」、木や壁などに「つり下げるタイプ」、つり下げ用の補充や布に染み込ませるなどして使う「大容量タイプ」の3種類があります。

2022年に販売を開始しましたが、当初はあまり知られていなかったため無料で配ることもありました。

2025年に需要が一気に高まり、売り上げは前年の2.5倍に。特に秋田県内で多く活用されています。スーパーや商業施設はもちろん、個人で購入する人も増えているということです。

効果を示す科学的なデータはありませんが、クマを寄せ付けない“お守り”として活用が広がっているようです。

一方で忌避剤は、あくまでもクマと私たちが、“生活圏のすみ分け”をするためのものです。

石岡代表:
「あくまで殺虫剤ではない。元々クマが街中にいるわけがない。ましてやクマも危険な場所へわざわざ行こうと思わないので、ここに人がいる、と場所を知らせる。クマに『今来れば危険だよ』と、においがする限り『場所を貸してね』と、そういう液体を私たちは忌避剤と呼んでいる。色々な方法で忌避剤を使ってもらい、皆さんの生活を守るために少しでも寄与したい」

『熊をぼる』はインターネットサイトから購入することができます。

秋田テレビ
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