3日に一度、針を刺す。その痛みは5年経っても慣れない。それでも彼女は道場に立ち続ける。

沖縄・小学6年生の島袋里琉(りる)さんは、県大会で何度も表彰台に立ち、これまで2度全国大会の舞台を踏んできた空手少女だ。しかし彼女の日常は、同世代の子どもたちとは違った「痛み」を伴っている。
自己免疫の異常によって発症する「1型糖尿病」と診断されながらも、心から打ち込める空手とともに日々の歩みを進める里琉さんの姿を追った。

5歳で憧れた空手

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里琉さんが空手と出会ったのは5歳の時。通っていた保育園で、後に通うことになる道場の木村竜仁館長が空手教室を開いたことがきっかけだった。

「スピードも力強さもあって、かっこいいなと思って、自分もやってみたいなって。木村先生に憧れて空手を始めました」

小学校に入学すると、木村館長が指導する劉衛流木村首里龍鳳館に正式に入門した。以来、里琉さんの空手への向き合い方は際立っていたと木村館長は振り返る。

「みんな楽しくワイワイやってるんですけど、里琉だけは真剣でした。本当になんかのめり込んでる。空手に一生懸命。すごい熱意を感じました、その時から」

里琉さんの熱意は、この時から傍目にも分かるほどだった。

小学2年生の秋、突然の宣告

本格的に空手を習い始めて1年が過ぎた秋頃、里琉さんの体に異変が起きた。激しいのどの渇き、急激なだるさを覚えた。検査の結果、告げられたのは「1型糖尿病」という診断だった。

1型糖尿病は、主に自己免疫の異常によってすい臓がインスリンをほとんど産生できなくなる病気だ。生活習慣が原因となることが多い2型糖尿病とは異なり、子どもを含む幅広い年代で突然発症する。

インスリンを外部から補充しながら血糖値を管理し続ける必要がある。

「空手ができなくなるのかなって、ショックだったりちょっと悲しかったりしました」。里琉さんの胸は締め付けられた。

診断を聞いた時、里琉さんの父親も同じように動揺したという。

「やっぱり聞いた時はとてもショックで…。なんて声をかけたらいいのか分からなくて、なんでうちの子が…という思いもありました」

診断を受けた後、急きょ入院生活が始まった。折しもコロナ禍の真っ只中で、感染対策のため家族間の接触も制限された。母親が付き添いで病室に残り、父親と兄は自宅でふたりの帰りを待った。

病院のベッドで泣いた日もあった。しかし担当医から、血糖値を適切に管理できれば運動を制限する必要はないという説明を受けた。

「聞いた時はめっちゃ嬉しかったです」

大好きな空手を続けられることは、大きな希望になった。里琉さんは入院中も自主練習を欠かさなかった。

一生付き合う痛さと怖さ

退院した後も、病との闘いは続いている。

里琉さんは1日に複数回注射をするのではなく、体に装着した機器で血糖値に応じて自動的にインスリンを注入するインスリンポンプ療法を使用している。ただし3日に一度は自分の身体に針を刺す必要がある。

「痛いです。怖いです」

発症から5年が経った今も、その感覚は変わらない。慣れることのない痛みと、一生向き合い続けなければならない。

練習中に血糖値が急激に下がり、低血糖になると補食をとって回復を待つしかない。時には練習を中断せざるを得ず、思うように体が動かないもどかしさの中、仲間が稽古を続ける最中にひとりコートの外に出ていく。それでも里琉さんは道場に通い続けた。

自分の誕生日でも空手の自主練習は欠かさず、練習した日はカレンダーを1枚めくるというルールを決めて、空手経験のある父親の指導を受けながら、地道に努力を積み重ねている。

病気になっても夢を諦めてほしくない

去年から里琉さんはインスタグラムを始めた。日々の練習の様子とともに、インスリン投与の場面も積極的に発信している。同じ病気を抱える子ども、あるいは別の困難を抱える誰かに届けたいメッセージがある。

「他の病気の子とか、同じ病気の子でも、病気になってない人でも、自分のやりたいことはできるから、夢を諦めないで頑張ってほしいです」

病気になっても夢を諦めてほしくない。そんな思いを込めて、里琉さんは自身の言葉で語り続けている。

3度目の全国大会へ

2026年5月2日に行われた空手の沖縄県大会で、里琉さんは小学6年生女子「形」の部で3位に入賞した。

空手の技の連続動作を演武する競技の形は、精度・力強さ・表現力が問われる。去年に続いて、全国大会への切符を手にした。現在、里琉さんが目指しているのは3度目の全国大会での表彰台だ。

「高血糖になったらイライラすることもあるんですけど、そういう時に打ち込めるのが空手。大切な存在です」

空手への情熱と、痛みと怖さも一緒に全国の舞台へ。里琉さんは挑戦し続けている。

沖縄テレビ
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