近年は資源量の減少により、価格の高騰が続いてきたウナギ。そんな状況を変えることが期待されているのが卵から成魚まで育てる「完全養殖」です。

2026年5月には一般向けに世界で初めて試験販売が実施されましたが、ここに至るまでに、研究者には多くの苦労がありました。

「稚魚がなにを食べるのかわからなかった」ところから、サメの卵を食べることがわかり、エサを開発したこと…水の汚れで死ぬ稚魚のため、1日1回は水槽の入れ替えが必要なこと…

さらに取材を進めると、養殖の場合、ほとんどがオスになるというウナギが、琵琶湖に放すとほとんどがメスになるということが判明。

研究の進展が“ウナギを食べやすい”未来につながりそうです。

■「めちゃくちゃおいしい」農水大臣も絶賛

2026年5月、卵から成魚まで人の手だけで育てた”完全養殖ウナギ”が、世界で初めて一般向けに試験販売されました。

販売前に試食した鈴木農水大臣は「めちゃくちゃおいしいです。ただおいしいという言葉しか出ません」と絶賛。

1尾5000円という試験的な価格設定ながら、あっという間に完売しました。

販売を実施したのは大分県の水産会社ですが、この完全養殖研究の第一人者は、これまでマグロやノドグロの養殖で大きな成果をあげてきた、近畿大学水産研究所にいます。

■「誰も育てられなかった」20年以上の暗中模索

近畿大学水産研究所の田中秀樹特任教授は、16年前に水産研究教育機構で世界初のウナギ完全養殖成功を果たしたチームの中心人物。

その後、近畿大学に移り、大学としては世界初の完全養殖成功を達成しました。

60年以上前から始まったウナギの完全養殖への挑戦。大変長い道のりでした。

「卵がとれてふ化したけど、世界中で誰も全く育てられなかったのが20年以上続いた」と田中教授は振り返ります。

最大の壁は”エサ”。ふ化直後のウナギが何を食べるのか、誰にも分からなかったのです。

試行錯誤の末、田中特任教授は「サメの卵」を食べることを突き止めました。

■コストは1匹約4万円から約1800円に…非常に繊細な稚魚「毎日水槽の移し替え必要」

現在はより安く安定したエサに改良し、水槽の大型化などによって、育成を効率化しています。

その結果、1匹あたりの育成コストは2016年度には4万円ほどかかっていたものが、現在では約1800円に抑えられました。

しかし、育成には多くの手間がかかります。田中特任教授は「1日5回エサをやるが、水がだんだん汚れてくる。汚れに触れると傷んで死んでしまうので、毎日1回、きれいな水槽に移し替える」と説明します。

非常に繊細ですが、技術の確立によって稚魚の安定供給が可能になれば、価格の安定化につながると期待されているのです。

将来的な夢として田中特任教授が口にするのは、品種改良です。

【近畿大学水産研究所 田中特任教授】「柔らかくて脂がのって、ふっくらしてうま味がいい、人にとって都合のいい特徴を持ったウナギを作りだすこともできるかもしれない。

近畿大学水産研究所というお店をやっているので、いつかそこにウナギのメニューを出したい。食卓やお店に出せるよう夢見ています」

■「天然に近いように育てる」大阪の養殖場

ウナギを安定的に食卓に届ける取り組みは、大阪でも始まっています。藤井寺市の「れいわ水産」では現在、1万匹以上のウナギを養殖しています。

将来は数十万匹の養殖を目標に掲げる代表の田川裕二さんが特にこだわるのは、次の2点です。

・エサ:独自配合の企業秘密レシピ。栄養満点で「人間も食べられる」ほど。
・水:藤井寺市の井戸水を飲料水レベルにろ過して使用。泥臭さをなくす効果がある

【れいわ水産 田川裕二代表】「天然資源を守っていかないといけないことなど、いろいろな問題点を抱える中で、大阪の地でウナギの養殖をすることで、いろんな方に喜んでいただけるのではないかと」

養殖を始めて約5年。今では大阪府が認定する「美陵鰻(みささぎうなぎ)」ブランドとして料亭などへも出荷されています。

■琵琶湖に放流すると…「非常に大きく脂がのり…メスになる」

さらに取材を進めると、”関西の水がめ”琵琶湖がおいしいウナギを育てるカギを握っているという情報にたどり着きました。

滋賀県立大学の田辺祥子准教授は、近畿大学などとの共同研究で養殖場ではあまり成長しなかったウナギの稚魚を琵琶湖に放流すると、大きく成長すrという研究結果を発表しました。

他の沿岸域で養殖されたものに比べて「非常に大きく、脂がのった」状態に育つということです。

さらに「琵琶湖に放流するとウナギはメスになる」と田辺准教授は説明します。

成長の過程で性別がわかれるウナギは、養殖ではほとんどがオスになりますが、琵琶湖に放流された個体は、なぜかほとんどがメスになることがわかったということです。産卵できる個体が増えることは、資源の持続的な確保に直結します。

【滋賀県立大学 田辺祥子准教授】「琵琶湖に着目してもらって、ここを養殖場の一つとして考えてもらい、研究など色んな施策が進めばいい」

(関西テレビ「newsランナー」2026年6月10日放送)

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