2026年7月、秋田県で開催される全国高校総合文化祭(あきた総文2026)。美術・工芸部門に出場する秋田市の栗田支援学校美術部では、生徒たちが限られた時間の中で互いに支え合いながら作品の完成度を高めている。仲間との対話を力に変え、自分だけの表現を追求する日々。その中心にいる生徒の挑戦に迫る。
放課後の教室に広がる創作の時間
秋田市の栗田支援学校美術部には、中学部と高等部合わせて7人が所属する。活動は週に2回。決して長くはない時間だが、生徒たちはそれぞれの被写体と静かに向き合い、制作に没頭する。
特徴的なのは、個々の表現を尊重しながらも、自然と生まれる助け合いだ。
部長の檜森瑠奈さんは、「みんなで協力すると『色はどちらが合うか』『森をつくるなら黄緑色も足してみようか』などとアドバイスができ、それが一番楽しい」と制作の魅力を語る。
仲間との何気ない言葉のやり取りが、作品に新たな視点をもたらしている。
彫刻に魅せられた挑戦
その中でひときわ集中力を見せるのが、高等部3年生の佐藤凱斗さんだ。
美術を本格的に始めたのは高等部に入ってから。それまでも工作は好きだったが、一歩を踏み出す勇気が持てなかったという。
「小さい頃から工作が好きで家で作っていたが、中学の頃は勇気が出せず美術部に入れなかった。高校に入り、頑張ってみようと思い参加した」と話す。
入部後は、立体表現である彫刻に魅力を見出し、独創的な作品づくりに取り組んできた。
4カ月かけた渾身の一作『侵食』
2025年の秋田県高校総合美術展で、佐藤さんの転機となる出来事が訪れる。
彫刻作品『侵食』が「特賞」を受賞したのだ。
制作期間は約4カ月。うつむく女性像を通して、内面から静かに侵されていく複雑な心理を表現した。
細部へのこだわりについて佐藤さんは、「服のしわを強調して、顔を少し左下に傾けて、何かに侵食されているような表現を頑張った」と語る。
さらに、「『この人は何かあったのかな?』『大変な人生だったんだろうな』という深い独自の読みをしてほしい」と作品に込めた思いも明かした。
見る人の想像を引き出す作品は、静かながら強い存在感を放っている。
全国の舞台へ 新たな一歩
この評価を受け、佐藤さんは7月に秋田県で開催される全国高校総合文化祭への出場を決めた。
全国から集まる作品に触れることは、自身の表現を広げる大きな機会となる。
佐藤さんは「色々な人と触れ合って、他の人の作品を見て学びを得て、細かいところを参考にして今後の作品につなげたい」と意気込む。
仲間とともに広がる表現の可能性
栗田支援学校美術部の活動は、個人の技術を磨くだけでなく、仲間との関係の中で表現を深めていく場でもある。
助言し合い、刺激を受け合う中で生まれる作品の数々は、生徒たちの成長そのものだ。
この夏、地元秋田で迎える全国の舞台。
佐藤さんの挑戦と美術部で積み重ねた時間は、新たな表現へとつながっていく。
(秋田テレビ)
