「部活動地域展開」のシリーズ、今回は「移動」の問題です。活動が学校から離れることで、生徒の移動手段や保護者の送迎の負担が課題となっています。子供の活動機会と安全、両方を守る仕組み作りが問われています。
■練習場所への「送迎サービス」
長野市犀陵中学校の2年生・佐藤央汰さん(14)。
放課後、10人乗りのワゴン車でクラブ活動に向かいます。
所属するのは、長野日本大学学園が運営するサッカークラブです。
学園は、4月からクラブ活動の送迎サービスを始めました。
佐藤さんは火、木、金の3日、利用しています。
送迎サービスを利用・佐藤央汰さん:
「中学校からそのまま(練習場所に)行けるので、結構楽になりました。(到着が)20~30分早くなった」
■地域展開で長くなる「移動距離」
学校から練習場所のグラウンドまで、車で20分〜30分。
以前は、一度帰宅し母親が車で送迎していました。
運転は教職員3人が交代で担当。
この日は、クラブの代表を務める原大助さんがハンドルを握ります。
学校から離れた場所で活動するケースが増える、地域クラブの活動。
子供たちの「移動距離」も長くなる傾向にあります。
■「遠いと困る」クラブ選択に影響
地域スポーツ・文化クラブ連携委員会・櫻ヶ岡中・柳沢新 教諭:
「1年生の中で、地域クラブに参加してる人どれくらいいる?スポーツでも文化系でも」
長野市では、平日も含めほとんどの部活動が地域クラブに移行しています。
市街地にある櫻ヶ岡中学校も、2026年度から13あった部活動全てがなくなりました。
4月、5月の放課後は、2025年まで新入生の部活見学でにぎやかでしたが、2026年は静か。
廊下には、20以上の地域クラブから届いた勧誘のチラシが貼り出されていました。
クラブ活動への参加を検討中の1年生。
活動場所は気になるようです。
バレーボールクラブを希望:
「(練習場所が)遠かったら困ります。(親が)仕事してるから、会社から帰って送迎はつらいかな」
美術クラブを希望:
「美術クラブに入ろうとほとんど決めてます。(活動場所が)この学校なので、送迎も必要ないし、放課後普通に行けばいい」
美術か合唱を希望:
「美術クラブかNGC(合唱クラブ)に入りたい。自分がやりたいのがどっちか。あと、クラブ活動の場所で決めてます。(親には)『送ってあげるよ』と言われるけどやっぱり少し気になる」
■費用や送迎が壁に…参加率が低下
以前は、全校生徒の約7割が部活に参加していましたが、地域展開が進むにつれ参加率が低下。
学校は実態調査を進めています。
これまでの気軽さが消え、「費用や移動などが壁になるケースも今後増えるのでは」と心配します。
地域スポーツ・文化クラブ連携委員会・櫻ヶ岡中・柳沢新 教諭:
「生徒がやりたいって気持ちがあっても、家庭の事情、(親の)仕事が忙しいってこともあるので、送迎の問題で参加できなくなってしまうのは残念な気持ちがあります」
また、移動が生じる関係で活動のスタートが遅くなり、暗くなってから自転車で帰宅するケースも増えているといいます。
■共働きの「両親の負担減らしたい」
長野日大学園は地域展開の受け皿の一つ。
サッカークラブ「ブリジャール」には67人が在籍し、長野市内の別の中学校10校の生徒も参加しています。
送迎サービスを利用する佐藤さん。
両親が共働きで、弟と妹にもそれぞれ習い事があり、「親の負担を軽くしたい」と利用を決めました。
佐藤央汰さん:
「(理由は)親の負担が減ること。家事とか送迎とかやりくりしてくれているので」
さらに―。
佐藤央汰さん:
「(グラウンドに)早く着いて、余裕ができてのびのびサッカーができるように。仲間と協力して点を取ったり勝ったりするのが楽しいです」
■磐越道バス事故「他人事ではない」
そんな中、福島県の磐越道で起きた部活動の遠征バスの事故。
移動時の安全管理の重要性が改めて浮き彫りになりました。
長野日本大学学園・添谷芳久 理事長:
「(学園でも)県外に遠征に行くことがかなりある。(事故は)他人事には思えない。安全意識をさらに高めたいと思いました」
■危険運転数をカウントして見守り
送迎サービスを始めるため、導入したシステムがあります。
長野日本大学学園・添谷芳久 理事長:
「動き出しますね。地図が表示された。今、ちょうど国道を移動しているのが見えます」
「見守りつき送迎サービス」。
パソコンに示されるのは、車両の位置や速度など、送迎バスのリアルタイムの運転状況です。
さらに、赤く示された数字は―。
長野日本大学学園・添谷芳久 理事長
「危険運転数ということで、急ブレーキ、急アクセル、急ハンドルの数がカウントされていく。ここが一番大事な部分。危険運転のカウントがあるかないか」
運転は安全が最優先。
渋滞が起きても抜け道は使わず、決まった道を行きます。
長野日大ラボ 部活動コーディネーター・原大助さん:
「時速20キロ(を出す)まで5秒かける安全対策があって、アクセルペダルに足をポンと置いて、足の重みがそのままスピードになっていく感じ。乗ってる子供たちが不安になることが一番いけない。心が安定した状態をつくる。それが保護者の安心にもつながる」
■「一層の安全」県も公的支援を視野
システムや送迎サービスの構築・維持管理は、学園と、東京海上日動火災保険、長野トヨタ自動車の三者が連携。
利用者には、クラブ活動の月謝とともに、システム登録料として2000円を納めてもらい運行しています。
長野日本大学学園・添谷芳久 理事長:
「地域展開の活動では、本校だけでなく他校の中学生も乗せる場面があるので、より一層、安全の意識、仕組みを整え取り組みをスタートさせた。あとは運転する先生方の疲労、どれくらい心配なことがあったか、ケースを積み重ねながらより良いものにしていきたい」
遠征バスの事故を受け、県と教育委員会は今後、部活動など校外活動の安全確保へ、移動手段も含めた引率方法の指針作りに取り組みます。
また、送迎サービスの公的な支援を視野に、実証実験も計画しています。
県教委 柳沢誠 教育主幹:
「広域的に活動する子供たちが安心して安全に活動に臨めるよう、県が主導してワンボックスカーを貸し出す、保険に加入するとか支援したい」
■送迎と安全はセット 仕組み急務
送迎の保護者は―。
孫を迎えに来た祖父:
「普通に来れば(車で)20分くらいだと思うけど、混んでいれば大変だと思います。親だけでできない部分もあるし、少しでも手伝いできればいいかなと」
息子を迎えに来た父親:
「会社にも協力してもらって、早めに切り上げるとかやっている。特に帰りは暗いので(心配)。安全面は大事ですね。多少金額が負担になったとしても」
長野日大ラボ 部活動コーディネーター・原大助さん:
「送迎ができてから、安全安心をというのは順番が違う。活動場所に送り届けることの中に、安全安心は入っている。セットで考えないと」
子供の活動機会を守り、安全を守る。
社会全体での仕組み作りが急がれます。