富山県氷見市の古刹に、ハンドボールで青春を駆け抜けた女性僧侶がいる。彼女が手がける「世界に一つだけのお守り」が、夢を追う中高生の心の支えになっている。

600年の歴史を持つ寺で生まれた「勝々守」


富山県氷見市に、600年以上の歴史を誇る西念寺がある。そこで僧侶を務める關野洋香さんが、今年3月に氷見市で開催されたハンドボールの全国大会「春中ハンド」の出場選手たちに向けて特別なお守りを作った。


その名は勝々守(かちかちまもり)。
「勝ちに勝ちを重ねていく人生を過ごしてもらいたい。その思いで勝々守と名付けた」
名前に込められた願いは、試合での勝利だけにとどまらない。これから生きていく長い道のりで、何度でも立ち上がれる強さを持ってほしいという祈りだ。
手書きの梵字と「願い紙」 世界に一つだけの理由

お守りの中には、關野さんが一枚ずつ手書きした梵字が納められている。阿弥陀様を表すその文字には、「不安を取り除いて安心と安らぎを与えてくれる」意味があるという。
さらに、このお守りが「世界に一つだけ」である理由がもう一つある。選手たち自身が目標や決意を書き込む「願い紙」が同封され、それをお守りの中に一緒に入れる仕組みになっているのだ。
「自分の思いを書いてもらい、それを中に一緒に入れることでお守りを持った方だけの世界に一つだけのお守りにしてもらいたい」
自分の言葉で書かれた願いと、僧侶の祈りが一つに重なるお守り。選手たちにとって、試合会場に持ち込む特別な存在となっている。
全国ベスト4、国士館大学へ 青春をハンドボールに注いだ日々

關野さんが選手たちに寄り添える理由は、自身のプレーヤーとしての経験にある。小学生のころからハンドボールに打ち込み、氷見高校時代には全国ベスト4を経験。その実力はスポーツ推薦で名門・国士館大学への進学へとつながった。
華やかな競技生活の裏側で、關野さんは揺れ続けていた。

「高校生の時に、父が脳梗塞になった。2回目の手術が大学生の時にあって、こんなことをやっていて良いのかな、私家のこと、お寺のこと何も分かっていない」
ハンドボールへの情熱と、寺を継ぐ責任感の間で葛藤した末、關野さんは跡継ぎになることを決意した。通信制の大学で仏教を学びながら、父・弘賢住職のもとで修行を重ね、僧侶としての道を歩み始めた。

娘と並んでコートに立つ 元選手の母として


現在、關野さんの日課の一つは、春中ハンドでの優勝を目標に活動する小学6年生の次女・芙弥さんと一緒に練習することだ。取材日には所属チーム「HC氷見」のチームメイトも集まり、コートに活気が満ちていた。
「不安や迷いを少しでも取り除けるようなサポートを僧侶としてしていきたい」
選手として全国の舞台を知り、僧侶として人の心に寄り添う関野さんだからこそ、子どもたちへの言葉には重みがある。
「勝々守カップ」で氷見をハンドボールの聖地に

2006年の第1回大会から氷見で開催されてきた春中ハンドだが、来年度からは別の場所での開催が決まっている。長年、氷見に全国の中高生を呼び込んできた大会がなくなることは、地域にとって大きな変化だ。
しかし、關野さんはその先を見据えている。

「色々な方達の力を借りて是非、勝々守カップを開催したい。春中ハンドボールが氷見で開催されなくなっても、勝々守カップでハンドボールの聖地に全国の皆さんが集まる大会にしたい」
僧侶として祈り、母として励まし、元選手として夢を語る。關野洋香さんの挑戦は、一枚の願い紙と小さなお守りから力強く広がっている。
(富山テレビ放送)
