書店員ではなく、出版社のスタッフがブースに立ち、自ら手がけた本を手に取った人へ直接語りかける。そんなイベント「本の産直市」が、富山市のショッピングセンターで開かれた。「本が売れない」と言われる時代に、地域の書店と出版社がタッグを組んで挑む新たな試みだ。

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書店ピークから20年、「閉店が加速度的に多くなっている」

インターネットやWEBコンテンツの普及とともに、富山県内でも書店の数は減り続けている。清明堂書店アピタ富山店の松井重樹店長はこう振り返る。

「20年ほど前に大型化が進んで、そのあたりが書店のピークだった。閉店が加速度的に多くなっている状況で、もう一度本に触れてもらい、おもしろさを知ってもらいたいと思った」

こうした危機感を背景に、清明堂書店が企画したのが「本の産直市」だ。名前の通り、書籍を発行する出版社が中間業者を介さず、直接読者へ本を売り込む場となっている。

「自分たちで作った本を自分たちで売る」

4月のイベントには、北陸地域をはじめ全国の出版社などが参加。parubooks(南砺市)の佐古田宗幸代表理事は、ブースに並べた本についてこう説明した。

「北陸をテーマにした本、会社の隣のアニメ制作会社の記念誌だったり、北陸三県のローカル線を取材した本とか、自分たちで作った本を自分たちで売っています」

大手書店の棚では見かけにくい地方発の本が、作り手自身の言葉とともに読者の前に並ぶ。それが「産直」たるゆえんだ。

「タイトルや表紙を見てもどういう内容かわからない本」を届けたい

富山の郷土に根ざした出版を40年以上続けてきた桂書房も出展した。2026年4月に経営を引き継いだ川井圭さんは、今回のイベントへの手ごたえをこう語る。

「普段書店では見られない本とか、説明することで売れるかもなという期待が持てそうな本を持ってきた。タイトルや表紙を見てもどういう内容かわからない。私が説明して興味を持ってもらえたらなと思って」

桂書房には1993年発行の「納棺夫日記」という代表作がある。映画『おくりびと』の原点とされるこの作品は、地方出版としては異例の5万部を売り上げた。現在、川井さんが手がけているのは「富山にまつわる伝説」をテーマにした新書で、明治時代の新聞記事をもとに準備を進めているという。

「本自体は縮小されている印象はない」

会社の売上はピーク時にあたる2000年頃の半分に落ち込んでいる。しかし、川井さんには一つの確信がある。

「本が売れないというのはあるかもしれないが、本自体は縮小されている印象はない」

実際、出版のペースは3カ月に2〜3冊と、以前から変わっていない。本を出したいという依頼は今も絶えないのだ。

地域の書店と出版社が協力して本を売っていく今回の試みは、桂書房にとっても新たな読者との接点となった。

「地域の書店とはこちらも地域の本を出しているので、うまく一緒に本を売っていけたら。桂書房もこれまで40年以上やっている、これまで以上に皆さんに求められている本をつくっていきたい」

「本の産直市」、2回目の開催を検討

清明堂書店では、「本の産直市」の2回目の開催を検討している。書店の棚に並ぶだけでは出会えなかった本が、作り手の熱量とともに読者の手に届く。その小さな積み重ねが、富山の「本の文化」を支えていく。

(富山テレビ放送)

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