実際、キャリアや転職活動でも、この罠にはまることがあります。
「失敗は自分のせい」
「だからすべてうまくいかない」
「これからもずっとダメだ」

うまくいかないことが続くと、ついこう考えがちですが、その必要はありません。

たとえば、転職活動で面接に落ちたのは、単にその会社と「今の自分」の相性が合わなかっただけです。会社が求めていたのは魚で、自分が持っていたのは野菜、そんなマッチングの違いであることがほとんどです。

選ばれなかった…で終わりにしない

先ほどの「選ばれなかった相談者のYさん」にこの話をすると、その方は動き出しました。選ばれなかった経験で「終わり」にしませんでした。

感情を整理したあと、上司にフィードバックを求め、次のプロジェクトで必要とされるスキルを具体的に洗い出しました。そして、こう明かしてくださいました。

「選ばれなかった悔しさは今も消えません。でも、言葉づかいだけはそのままにしたくなかったんです」

どういうことなのか。

人は自分の言葉に引っ張られて生きていきます。だからこそ、まずは頭の中の言葉から変えていく。「落ちた=終わり」ではなく、「落ちた。ここから始まる」に、書き換えてみる。

まずは頭の中だけでも、書き出す言葉だけでも二項対立をやめられるでしょうか。もう白黒思考はいらないのです。「良いか悪いか」「成功か失敗か」。

こんな単純な枠組みで評価できるほど、私たちの働き方も生き方も小さくありません。選ばれなかった経験は、自分の感受性や信念を確認するチャンスです。

何に傷つき、何を取り戻そうとしたのか。こんなに自分を知れる機会はありません。傷ついたことのある方に、この言葉をお伝えさせてください。

……創造の創が「きず」だということは意外に知られていないようです。(絆創膏という薬もあることです。)創造の創は、もちろん「物事の始まり、始め」という意味ですが、物事の始まりが「きず」だということは大変意味深いという気がします。
─『詩のすすめ 詩と言葉の通路』(P47)

『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)

佐野創太
「退職学(R)(resignology)」の研究家/メルマガ「キャリアの休憩室」編集長。著書、監修書に『脱 会社辞めたいループ 辞めたいけど辞めたくない人のための転職思考法』(サンマー
ク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)、『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本(知りたいことシリーズ)』(主婦の友社)がある。

佐野創太
佐野創太

「退職学(R)(resignology)」の研究家/メルマガ「キャリアの休憩室」編集長1988年、静岡県浜松市生まれ、神奈川県横浜市育ち。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、2012年に大手総合人材系企業に新卒入社。転職エージェントとしてベンチャー企業から大手企業の中途採用と求職者の転職を支援する。その後シンクタンクに転職するも1カ月で早期退職。前職に契約社員として出戻り、新規事業の責任者として求人プラットフォームを立ち上げ、Webメディアの編集長と採用担当を兼務する。介護離職を機に2017年、退職学®の研究家として独立。自身が「会社辞めたい」ループに陥った経験と、のべ1500名以上のキャリア相談から、「退職後も声をかけられる最高の会社の辞め方」を体系化した。ミュージシャンや経営者へのインタビュー、大手結婚相談所のオウンドメディア編集長、キー局の新サービス立ち上げなど、メディアと編集の現場を渡り歩く中で生成AIの可能性に注目。自分の仕事をAIに自分から置き換える「AI退職」を実践しながら、2022年からAIコンサルタントとしても活動。地方新聞社の新規事業開発、地方銀行のAI導入、出版ゼミのAIサービスの立案、大手人材系企業の採用広報AI制作などを手がけることで、人間らしい働き方を探る実験を続けている。著書、監修書に『脱 会社辞めたいループ 辞めたいけど辞めたくない人のための転職思考法』(サンマーク出版)、『ゼロストレス転職 99%がやらない「内定の近道」』(PHP研究所)、『転職・退職を考えたら知りたいことが全部のってる本(知りたいことシリーズ)』(主婦の友社)がある。妻と子どもの3人暮らし。GLAYが好き