物価高や人件費の上昇を受け、政府は診療報酬を約30年ぶりの高水準で引き上げたが、医療機関の8割超が「不十分」と考えていることが、FNNの取材で分かった。病院の倒産は増加し、2024年は過去最多を更新するなど、医療を取り巻く環境は厳しさを増している。地域医療が抱える深刻な実態と、“医経分離” の新たな発想に迫った。

資金が底をつき…

東京・吉祥寺にある吉祥寺南病院では、建物の周りが白い壁で覆われて、解体作業が進められていた。地区で唯一、重症患者を24時間受け入れていたが、おととし9月に突然、診療を休止した。

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地域住民は「不安。どこに行けばいいのかしら」「結構診療に通っていた。(今は)遠くの方に行かなきゃいけない」と話す。

病院を見つめるのは元院長の藤井正道さん。救急を積極的に受け入れるなど改革に取り組んだが、「最後は停電、水漏れ、それからエレベーターが止まった。(収益が)プラスになった分、全部修繕費に持ってかれた」と振り返る。

築50年以上の建物は激しく老朽化。建て替えしようにも、資金は底をつき、休止せざるを得なかった。

8割の病院が「不足している」

日本の病院の7割は赤字経営。

政府は、今年度の診療報酬改定で、医師らの人件費などにあてる部分を3.09%引き上げた。3%超えの引き上げは、およそ30年ぶりの高水準となる。

これで病院の経営は改善するのか。取材班は、関東の病院100施設を無作為に抽出し、アンケートを実施。24施設から回答を得た。

引き上げられた診療報酬について、病院経営が持続可能なものか尋ねたところ、およそ8割が「不足している」と回答。

また、物価上昇などによる経営環境についても9割以上が「厳しい」と答えた。

その他にも、「経費に見合う報酬が必要」「収入は国が決めるため努力には限界がある」といった声もあった。

院長は経営に取り組む時間なく

「急な話ではあったので、正直、不安とか、心配なこととかがあった」

埼玉県川口市の安東病院で院長を務める安東真理さん(32)。去年、院長だった父親が亡くなり、急遽、経営を引き継ぐことになった。

経営に取り組みたいが、その1日に密着してみると…。

「じゃあ、ちょっとチクッとします」
「糸持ち上げながら切るから少しチクチクする感じ」

3時間で10人以上の診察を終え、ようやく昼ご飯。しかし、鍋の蓋を取ろうとしたその瞬間、看護師から連絡が入る。

食事をテーブルに運ぶ途中にも、またもや連絡が。

席につくと、休む間もなくご飯を口に運びあっという間に完食した。

安東真理さん:
(昼食時間は)だいたい10分、15分で。患者さんには、ゆっくり食べて、よく噛むんだよって言っているのに。

午後になると、病院の外へ。院長自ら訪問診療に向かう。

午後1時 高齢者施設でお年寄り10人ほどを診察。午後3時、再び病院に戻った院長は、息つく暇もなく手術を行う。午後4時半になると、入院患者の病室を回って診察。午後5時、患者の対応は終わったが、まだ事務作業が待っていた。

安東真理さん:
方針とかは考えられるんですけど、細かい数字とかそういう細かいところになってくると、ちょっと私も手に負いきれない。

この日、病院の経営を考える時間はほとんどなかった。

病院経営の責任者でもある安東院長。月に1度は経営の専門家に助言を受けながら、なんとか経営を切り盛りしている。