家庭でも学校でも会社でも、「ほめて育てる」が常識になって、「叱る」ことが少なくなってきた。そのような中、部下の機嫌を損ねるのが怖くて注意できないと悩む上司が増えているという。教育に詳しい心理学博士の榎本博明さんは、そんな「ほめ育て社会」は一見やさしい社会のようで、かえって残酷な社会ではないかと指摘する。
『じつは残酷な「ほめ育て社会」』(日経BP)から一部抜粋・再編集して紹介する。
「パワハラ」が怖くて注意できない
家庭や学校での「ほめ育て」の風潮は、職場における人材育成に困難をもたらしている。
書類の書き方が間違っていても、注意すると落ち込んだり反発したりして、どうにもやりにくい空気になるため、どう注意するかに気をつかわなければならない。
客に対する態度や言葉づかいがあまりに不適切で、そこは改善してもらわないと困るわけだが、うっかり注意すると自分を全否定されたかのように落ち込んだり、反発してふて腐れた態度になったりするため、注意するのが気が重くてしようがない。
仕事のやり方があまりに雑で、もっとていねいにやってもらわないと困るのだが、注意しても「なんか、感じ悪いことを言ってるな」と感じるだけみたいで、なかなか染み込まず、改善されないので、どう注意すれば効果があるのか悩んでしまう。
何をやらせても手際が悪く、もっと頭を使って仕事してほしいのだが、うっかり注意すると、ひどく傷つくのか泣き出したり、ときにパワハラを受けたと触れ回られてしまうこともあったりして、つい注意するのを躊躇してしまう。
このような悩みを多くの経営者や管理職が口にする。これでは仕事力が高まるように鍛えてあげることがなかなかできない。
「注意=否定」と受け取る若者
親から叱られたことがなければ厳しいことを言われたこともない。学校の先生もほめるばかりで叱らないし、厳しいことも言わない。そんな環境で育ってきた今の多くの若者は、ちょっと注意されただけでも、自分を否定されたと受け止め、感情的に反発する。

