食べ物をスムーズに飲み込むことができないという障害がある人は、全国に100万人以上いるとされています。
今回、その障害がある16歳の少女の家族を取材しました。
母親は「家族で同じものを食べたい」との思いから、ある食べ物を開発しました。
リンゴの形をしたカラフルなデザート。
スプーンを入れると中からはリンゴのジュレが。
笑顔で食べる16歳の少女。
食べ物をうまく飲み込むことができない障害があるため、普段の食事はペースト状にする必要があります。
そんな中、このリンゴのデザートは、飲み込みがうまくできない人もそのまま食べられるケーキで、お母さん自らが考案したもの。
永峰玲子さん:
障害があるから仕方ないと諦めるんじゃなくて、どうしたらできるようになるだろうかと考えて、絶対にみんなと一緒に食べることを諦めないでほしい。
「おいしいね」と喜ぶ娘の顔が見たい。
ケーキ実現の裏側にあるお母さんの思いです。
遠藤玲子キャスターを迎えてくれたのは、永峰楓音さん(16)。
楓音さんは重度のてんかん性脳症「大田原症候群」という難病を抱えています。
歩くことを含め、体を自由に動かすことができず、言葉も話せません。
お昼ごはんの準備をしているのは父・雄介さん。
この日のメニューは2度揚げしたジューシーな唐揚げです。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
唐揚げとか大好きなんですよ。16歳だから油ものが大好き。
完成かと思いきや、唐揚げをミキサーに入れていきます。
食べ物をうまくかんだり飲み込むことができない娘のため、毎食、母親の玲子さんが飲み込みやすくなるよう加工しています。
ミキサーに入れている白い粉末は、飲み込みをサポートする「とろみ剤」です。
遠藤玲子キャスター:
とろみ剤は楓音さんにとって大事?
楓音さんの母・永峰玲子さん:
めちゃくちゃ大事ですね。どうしてもゴックンという動作が上手にできないので、間違えて肺の方に入ってしまわないようにという配慮が必要。
遠藤玲子キャスター:
離乳食のこと思い出しました。離乳食作るときにとろみをつけると習いましたね。
飲み込むことが難しい子供たちにとって、食事は命に関わる問題です。
両親用のごはんとペースト状に加工した楓音さん用のごはん。
味は一緒ですが見た目は違います。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
ご飯をあげるときに「おいしいね」って(娘に)言ってはいるんですけど、自分も心のどこかで「本当においしいのかな」と思ってしまう。「申し訳ないな」と思いながらあげている。親心としては、自分も食べておいしいものをおいしいねと言ってあげたい。
遠藤玲子キャスター:
確かに見た目の要素って食事はありますもんね。
永峰さん親子にとって、さらに高いハードルになっているのが外食です。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
同じものを食べさせてあげたいという気持ちはあるので、(店に)ミキサーとかを持参したりするんですけど。
遠藤玲子キャスター:
音が…ってことですよね、ミキサーの。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
「迷惑かけてないかな?」とか、いろんなことを確認しながらやるので。
外食の際は両親が食べるものとは別に、楓音さん用のレトルト食品などを持参する必要がある店がほとんどでした。
この日、永峰さん親子が訪れたのは近所のそば店。
入ってみると、カウンターの上にミキサーが。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
貸し出し用のミキサーで、「ご自由にどうぞ」と書かれているので、私たち手ぶらで来ることができるんですよね。
注文したアツアツの天ぷらそばもミキサーにかけられ、楓音さんのもとへ。
お店でできたてのものを家族一緒に食べられるのは格別の喜びだといいます。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
いつもレトルトとかが多いので、こんなにおいしいものを食べられるのは本人もうれしい。ミキサーがあるお店だと「やっていいんだ」と思える。気軽さとウエルカムさが本当にありがたいです。
少しずつ広がる理解の輪。
楓音さんのように食べ物をスムーズに飲み込むことが難しい摂食嚥下(えんげ)障害がある人は、高齢者を含め全国で100万人以上いるとされています。
永峰さんは現在、同じような子供を持つ家族のコミュニティーを立ち上げ、悩みを共有したり情報交換をしています。
20代のころ、渋谷109の“カリスマ店員”だった永峰さん。
持ち前の明るさやトーク力を生かし、コミュニティーのママたちとあるアイデアを実現させます。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
(ミキサーなどの)加工が大変な中、みんなと一緒に食べられるのは憧れ。それをみんなでかなえようと、インクルーシブフードという概念のお食事ができました。
インクルーシブフードとは、障害がある、なしにかかわらず、誰でも同じものを一緒に楽しめる食べ物のこと。
永峰さんたちのアイデアは、洋菓子店の協力を得て約半年かけて形になりました。
それが、リンゴケーキです。
遠藤玲子キャスター:
見た目もりんごあめのよう。
楓音さんの母・永峰玲子さん:
私たち子供の時にワクワクした。この子たちにも同じような経験をさせてあげたい。
甘いもの好きな楓音さんは、このリンゴケーキが大のお気に入り。
あっという間に完食です。
遠藤キャスターも試食させてもらいました。
遠藤玲子キャスター:
おいしい!一瞬でとろけて滑らかで…。すくったあとに(ケーキの中の)層を感じながら食べられる経験が本当に貴重で。口の中が楽しいってすごい大事なこと。
見た目や食感にこだわったこのリンゴケーキは、イベントでわずか15分で完売。
「お子様ランチを体験してほしい」との思いから生まれたお弁当も、永峰さんらママのアイデアが詰まったインクルーシブフードです。
インクルーシブフードを開発・永峰玲子さん:
子供たちの輝く目と、言葉が話せない子供たちも多いが、いつも感動して泣きそうになります。
遠藤玲子キャスター:
本当に知ってほしいなと改めて私も思いました。
インクルーシブフードを開発・永峰玲子さん:
「食」は誰もが必要なことだし、食べてる時って皆さん幸せじゃないですか。かむ力や飲み込む力が弱くなっても、絶対にみんなと一緒に食べることを諦めないでほしい。