長野県松本市の「楽団ケ・セラ」。障害のある団員が演奏を通して自立を目指そうと結成され24年。今は団員20人が「仕事」として練習に励んでいます。5月16日の定期演奏会では、11曲が初挑戦。熱のこもった練習で最終調整しています。
■「なるようになるさ」
障害がある20人で構成される松本市の「楽団ケ・セラ」。2026年、結成24年を迎えました。
楽団の名前の由来は、スペイン語で「なるようになるさ」。メンバーは日々前向きに、そして、楽しく音楽に向き合っています。
キーボードなど・胡桃往さん(27):
「演奏できてうれしい気持ち」
キーボード・水間啓耀さん(31):
「楽しいです。(どんな時が楽しい?)みんなで合わせる時かな」
キーボードなど・大谷あきほさん(24):
「みんなと一緒にうまくできるのが、とても幸せです」
■モットーは「音楽で飯を食う」
「楽団ケ・セラ」の始まりは2002年。ダウン症など知的障害がある5人で結成されました。
その後、徐々にメンバーを増やし、「音楽で飯を食う」をモットーに、公民館や福祉施設などのイベントで演奏して、収入を得てきました。
サイトウ・キネン・フェスティバルでは、スタッフに演奏を披露したことも。現在は定員いっぱいの20人が活動しています。
メンバーにとって音楽は「仕事」。平日は午前9時から午後3時半まで出勤し、練習に取り組みます。
これはNPO法人が運営する就労継続支援B型事業所の「作業」にあたり、年間50回のコンサートの演奏料が工賃=つまり給料になる仕組みです。
全国的にも珍しい仕組みで、メンバーは音楽で収入を得る、いわば「プロの演奏者」です。
楽団ケ・セラ 音楽主任・岩崎純子さん:
「プロだよという自覚を持ってもらうということや、『ケ・セラ』の音が聞きたいと思っていただけるように、日々練習をしている」
■20~40代までの幅広いメンバー
5月16日には定期演奏会を控え、詰めの練習の真っ最中。20代から40代まで幅広いメンバーが息を合わせます。最年少は20歳の会津日菜子さん。
キーボード・会津日菜子さん(20):
「キーボードは弾くところが好きです。(楽団のみんなは?)大好きです!優しいところです。(定期演奏会はどんなところを見てほしい?)真剣なところを見てほしい」
20年近く在籍するベースの丸山圭さん(41)は「ケ・セラ」の兄貴的存在。
ベース・丸山圭さん(41):
「皆さまに聞いていただくのが仕事なので、当日もしっかりやっていきたいと思います」
後輩の丸山ゆずきさん(25)にベースを教える立場でもあります。
ベース・丸山圭さん(41):
「冗談も言いながら、楽しくやっていける楽団だと思います」
圭さんにはこんな見せ場も―。
詩吟歴33年の歌声で「天城越え」のボーカルも。
■スタッフが工夫して指導
一方、ベースの弟子・ゆずきさんにも見せ場があります。
♪「ケセラセラ」/Mrs.GREEN APPLE
楽団にちなんだ新曲のボーカルに挑戦。
ベース・ボーカル・丸山ゆずきさん(25):
「ファルセット(裏声)をキープしながら、がんばりたい」
大好きなテーマパークに行くために、貯金も頑張っています。
ベース・ボーカル・丸山ゆずきさん(25):
「(テーマパークが)好きなので、行くためにお金を貯めているので、毎日。今年はちょっとは行けないな」
障害の特性などに応じて、スタッフがパートや楽譜をアレンジし、工夫して指導しています。
集中力が高く物覚えの早いマリンバの鈴木克将さん(23)は、主旋律を引き立てる複雑なオブリガード(助奏)の演奏で曲を盛り上げます。
♪「地上の星」
マリンバ・鈴木克将さん(23):
「すごく難しい楽譜を渡されますが、パシっと決まると気持ちがいいです。マリンバがたのしいでーす!」
♪「ロッキーのテーマ」
ロッキーのテーマは楽団にとって定番ソング。
ドラム歴23年の下垣駿さん(33)が重厚なサウンドで支えます。
ドラム・下垣駿さん(33):
「ロッキーのテーマは、お母さんがどうしても聞きたい」
■個性豊かな進行に注目
2026年はメンバー全員が司会にも挑戦します。
キーボード・下平真子さん(21):
「クラシック音楽が大好きです。特にブラームスのシンフォニーがお気に入りです」「次の曲はYMCAです」
キーボード・山下水緒さん(42):
「私はラブライブが大好きで、いつもこんな声ですが、これでも一応、42歳であります。次の曲は『糸』よ」
自己紹介も踏まえた個性豊かな進行にも注目です。さらに楽器だけでなく、ダンスも披露します。手話も交えて、観客を飽きさせません。
大谷あきほさん(24):
「「前でやるので、お客さん全員と一緒にやりたい気持ちです」
橋本千恵子さん(32):
「手話もやるので、いろいろやっています。(観客が)喜ぶようにアピールしたいです
■「お客さん全員が笑顔に」
定期演奏会は16曲中11曲が初挑戦。2026年度の活動の軸になる重要な機会です。
ギター・小沢佳典さん(23):
「いい演奏をつくり上げる、みんなで協力するっていう感じで。お客さん全員が笑顔になれるような演奏をしたいです」
楽団ケ・セラ音楽主任・岩崎純子さん:
「メンバーがまず音楽が好きであるということは大きいと思います。音楽なので一緒に始まって一緒に終わらなきゃいけないですよね。それは彼らにとってはすごく大変なこと。私たち以上にやっぱり絆を感じているんじゃないかな」
24年の歴史と挑戦を重ねる「楽団ケ・セラ」。定期演奏会を皮切りに、2026年も新境地を切り開きます。