中道改革連合は、皇族数の確保策をめぐり、党の統一見解を決定し、15日に与野党各党が参加して開かれる全体会議で表明する。立憲民主党と公明党という2つの政党の衆院議員が合流して結成された党内は、安全保障政策や皇室観などをめぐって意見の隔たりも見られる。今回、立憲民主党出身者が反発するなど、党内の取りまとめでは難航もしている。党内の状況、そして取りまとめに向けた舞台裏などについて、関係者への取材を通じて迫った。

笠検討本部長「まとめられなければ党として問われる」

「皆さんにとって満点かというと、そうではないかもしれない。しかし、意見は意見として、それぞれ主張しながらも、最終的には一任をいただき、まとめさせていただいたことについては心から感謝を申し上げたい」

12日、執行役員会での報告を終えて、こう語ったのは中道改革連合の笠浩史衆院議員だ。党内に新たに設置された「安定的な皇位継承に関する検討本部」で本部長を務めている。

「安定的な皇位継承に関する検討本部」で本部長を務める笠議員
「安定的な皇位継承に関する検討本部」で本部長を務める笠議員
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この日の執行役員会では、前日に検討本部の会合で取りまとめた見解を笠氏が報告し、了承された。

皇族数の確保策をめぐっては、政府の有識者会議が示した「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」案と「旧宮家の男系男子を皇族に迎える」案を軸に、これまで与野党では議論が進められてきた。

中道改革連合が決定した見解では、「女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する」案を「優先的な方策として認めるべきである」とした。

夫と子の身分を皇族にするかどうかについては明確な方向性を示さず、「当事者の御意向など、個別の事情等を勘案しながら適時適切に対応する」とした上で、皇室典範改正の際に付則の検討条項とすることを求めている。

一方、「旧宮家の男系男子を養子に迎える」案については、前日の会合で笠氏が示した案では「認めることも考えられる」としていたが、出席議員からは「認める」ではなく、「検討」とするべきだとの意見も上がったため、党の見解では「制度化することも考えられる」とした。

笠氏は記者団の取材に対し、「党としてこれだけ大事なテーマでまとめることができなければ、党としてどうなのかということが問われる」とした上で、次のように強調した。

「初めて皇室典範の改正をする。その議論に、私たちもリーダーシップを持って、衆院の野党第1党として関与していかなければならない。そして、国民の幅広い理解をいただき、この国会、立法府における合意形成ができるように、役割、責任を果たしていかなければならないということでまとめさせていただいた」

立憲・公明出身者で分かれる意見 アンケート結果で浮き彫りに

中道改革連合は4月15日、約1年ぶりに開催された安定的な皇位継承に関する全体会議に初めて参加。衆参両院の正副議長と13の政党や会派の担当者が集まった。

各党派が皇族数確保に向けた見解を表明する中、中道改革連合は統一見解を示すことができなかった。このため、森英介衆院議長は1カ月後に開く次の会議までに党として見解をまとめるよう申し入れた。

皇族数の確保策をめぐっては、立憲民主党と公明党の出身者で、それぞれの考え方に隔たりがある。

旧宮家の男系男子を養子に迎える案をめぐっては、中道改革連合が結成する前の立憲民主党は「憲法14条の平等原則に違反する疑義がある」として慎重な姿勢を示していたのに対し、公明党は前向きな立場を取っていた。

それは党内の意見集約のために実施したアンケート結果でも浮き彫りとなっている。

4月9日に開いた検討本部の会合後、記者団に笠氏らが明らかにしたアンケート結果では、回答したのは44人。

女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案には42人が賛成し、「どちらとも言えない」が2人いたが、「反対」と答えた議員はいなかった。

ただ、女性皇族の夫や子どもに皇族身分を付与するかについては、賛成10、反対19、どちらとも言えないが15で、賛否が分かれた。

また、旧皇族の男系男子を養子に迎えて皇族とする案についても、賛成24、反対7、どちらとも言えない13で、意見が割れた。

「男系男子を養子に迎える」案の容認報道に反発の声相次ぐ

それから約1カ月後の7日、検討本部の会合で、旧宮家の男系男子を養子に迎え皇族とする案について認める方向で大筋一致したと、報道各社が報じると、衆院選で落選した立憲民主党出身者を中心に異論が相次いだ。特に強く反発したのが立憲民主党元代表の枝野幸男氏だ。

枝野氏は自身のSNSで、報道を引用し、「嘘ですよね?間違いですよね?」と投稿。その後も「万が一にも、天皇制を破壊しかねない旧皇族養子案を認めるなら、お付き合いはしきれない」などと投稿を続けた。

枝野氏「嘘ですよね?間違いですよね?」
枝野氏「嘘ですよね?間違いですよね?」

11日の検討本部の会合後、記者から枝野氏と話したか尋ねられると、笠氏は「賛成、反対の立場から直接そんなに人数は多くないが、意見もいただいた。両方ある。ただ、枝野さんからは直接の意見はいただいていない」と述べた。

また、笠氏は「この問題は全議員が全て賛成するという解はない」とした上で、次のように指摘した。

「意見が全員一致しないからまとめられないということになると、我々は正副議長の全体会議でまとまらないということを言って一任するしかなくなる。今後の制度設計にも、色々な形でこれから議論していく時に、しっかりとした主張ができなくなるという懸念もある」

枝野氏の投稿については、党幹部の1人は「代表経験者がSNSでいきなりあんな失礼な表現で投稿するなんてありえない」と不快感を示した。また、あるベテラン議員は「政治家だから自らの意見を言うのは当然だ。しかし、SNSで口汚い表現で批判するのはいかがなものか」と眉をひそめた。

こうした中、小川氏は8日の記者会見で、「様々な方々から懸念の声が上がっていることは謙虚に受け止めたい。それぞれに、それぞれなりの一理ある主張だ」と述べつつ、次のように指摘した。

「国会の全体状況、皇室をめぐる喫緊の課題に具体的な対策が求められているという状況、あらゆることを総合判断していかなければならない局面にある」

その上で、「様々な批判や懸念には謙虚に耳を傾けつつ、一定の結論、着地を図っていくという方針に変わりはない」と述べた。

さらに、枝野氏の主張に対し、「大先輩であるだけに、なおさら謙虚にその声に耳を傾けたい」とした上で、「一定の結論を見いだしたいという全体方針に影響はない」と強調した。

検討本部長に笠氏起用が念頭に 小川氏は慎重に布石

「結論を見いだしたい」とした小川氏だが、見解の取りまとめに向けて慎重に布石を打ってきた。特に要となる検討本部長への笠氏の起用が挙げられる。

笠氏は当選9回のベテラン議員で「安定感」がある。そして、中道改革連合の結成時には共同国会対策委員長を務め、旧民主党や立憲民主党でも長年、「国対族」として実績を積み、与野党に幅広い人脈を持つ。その手腕を信頼する関係者は多い。

笠氏起用へ小川代表は慎重に布石
笠氏起用へ小川代表は慎重に布石

検討本部立ち上げにあたっては、小川氏の念頭には笠氏の本部長起用があった。小川氏は8日の会見で、笠氏を起用した経緯について次のように説明している。

「就任いただくにあたって、笠本部長自身を含め、周辺の主だった方々を含め、私自身が相当丁寧にコミュニケーションを取った上で、就任をお願いし、この体制が発足しているということは経緯として念のため申し添えたい」

筆者は3月18日午後、衆院議員会館にある笠氏の事務所を訪ねる小川氏の姿を確認している。前日に行われた党の常任幹事会では、党内に会議体を設置することを決定していた。

関係者によると、会談の中で小川氏は笠氏に対し、本部長就任を打診。その際、取りまとめに向けた進め方についても協議した。

この中では、立憲民主党や公明党とは現場間で意見交換はしつつも、中道改革連合として独自の党見解を取りまとめる方針を確認した。

3党で見解を一致させることにこだわれば、時間も大幅に要し、収拾がつかなくなる恐れもある。

また、小川氏は事前に水面下で前共同代表の野田佳彦、斉藤鉄夫両氏とも人選について協議し、笠氏を起用する方針を伝えるなど、慎重に根回しも進めた。

小川氏の決意「党内融和、そして摩擦を恐れずに前進していく」

「党内外のさまざまな意見を集約したものであり、笠本部長はじめ関係者の尽力に敬意を表する」

立憲民主党出身で前共同政調会長の本庄知史氏は13日、自身のSNSにこう投稿し、次のように続けた。

「報道はいろいろとあったが、『本部長とりまとめ』を丁寧に読めば、今上陛下、秋篠宮皇嗣殿下、悠仁親王殿下までの皇位継承の流れを『ゆるがせにしてはならない』、いわゆる女性宮家の創設が『優先的な方策』、旧宮家男系男子養子案は『制度化することも考えられる』ものの、『慎重な制度設計を行わなければならない』、将来の女性天皇も引き続き議論ということだ」

本庄氏「将来の女性天皇も引き続き議論ということだ」
本庄氏「将来の女性天皇も引き続き議論ということだ」

当初、本庄氏は「旧宮家の養子案には賛成しない」と表明していたが、13日の投稿では、「現在の国会内外の政治状況を考えれば、バランスの取れた内容に落ち着いたと私は思う」とつづった。

また、公明党出身の幹部からも「笠氏のおかげで、多くの議員が受け入れることができる文章になった」と評価する声が上がった。

そして、13日に行われた中道改革連合の議員総会でも、党の見解が決定したことが報告されると、出席議員からは大きな拍手が沸き起こった。

先述の8日の会見の中で、小川氏は「いよいよ2カ月余りの後半国会となる」とした上で、次のように語っている。

「中道改革連合として様々な困難があることはあえて承知の上だが、全力を挙げて、党内融和、そして摩擦を恐れずに前進をしていく姿を持って、党のアイデンティティーと存在感をしっかり発揮していくように努めたい」

皇族数の確保策で党の見解を取りまとめた中道改革連合だが、憲法改正や沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画などをめぐっては意見の隔たりもある。

「党内融和」か、「摩擦を恐れず前進」か、小川氏ら執行部の難しい舵取りは続きそうだ。

(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局