逃走した容疑者の捜索や、認知症高齢者の徘徊、子どもの迷子まで…。広島県警でベテラン警察犬として活躍する「クリア」と、夢をかなえて鑑識課警察犬係に配属された岸夕鶴さん(25)が、二人三脚で歩む日々に密着した。

幼い日、警察犬と歩く姿に「一目ぼれ」

特別な訓練を受け、事件捜査や行方不明者の捜索で力を発揮する警察犬。その嗅覚は人間の何千倍もあるとされ、道路や現場に残されたにおいを頼りに行方を追う。

ベテラン警察犬のクリアと、若手警察官の岸夕鶴さん
ベテラン警察犬のクリアと、若手警察官の岸夕鶴さん
この記事の画像(7枚)

広島県警の直轄警察犬「クリア」は7歳。黒と茶の毛並みが印象的なシェパードで、鋭く立った耳と引き締まった顔立ちがいかにも頼もしい。一方で、少し臆病な一面ものぞかせる。
「こんな子なんですけど、めっちゃいい子です。ねえ、クリちゃん」
岸さんは、クリアをなでながら優しく声をかけた。
2025年、念願だった「警察犬係」に配属された岸さん。2026年現在、警察官としては8年目だが、ハンドラーとしてはまだまだ新米だ。

小学1年生の頃、フラワーフェスティバルのパレードで警察犬を連れた警察官の姿に心を奪われた。
「警察官が警察犬のシェパードを連れて歩いている姿を見て、一目ぼれしてしまって。私もこの人たちみたいに警察犬と一緒に働く人になりたいと思ったのがきっかけです」

警察犬のイベントに参加する岸さん
警察犬のイベントに参加する岸さん

その思いを抱き続け、15年以上。
夢だった場所に立った岸さんは、「めちゃくちゃうれしくて。まさか自分が警察犬係になれると思っていなかったので、ちょっと泣きました」と笑う。

ベテラン犬に学び、現場で磨く判断力

「クリア、立って!座れ!」
訓練では、言葉と体の動きで的確に指示を送り、クリアとの呼吸を合わせる。
だが実際の現場では、“におい”の追跡だけでなく、警察犬の反応をどう読み取るかというハンドラー自身の判断力が問われる。

ある行方不明の子どもの捜索で、クリアは家の周囲をくるくる回り、そこからあまり動こうとしなかった。しかしその意味を十分にくみ取れず、後に家の敷地内に置かれていたバイクの狭いトランクに隠れていたことが判明した。

相棒のクリアと行方不明者の捜索に奮闘する岸さん
相棒のクリアと行方不明者の捜索に奮闘する岸さん

クリアの反応に気づけていれば、もっと早く子どもを見つけてあげられたかもしれない――。
その経験は、岸さんに大きな課題を残した。いまは、クリアの動きを一つ一つ細かくうかがいながら経験を重ねている。

広島県警 鑑識課 警察犬係・八田智彦 警部補(左)
広島県警 鑑識課 警察犬係・八田智彦 警部補(左)

そんな岸さんをそばで支えるのが、先輩ハンドラーの八田智彦警部補だ。
八田警部補は、岸さんについてこう語る。
「犬を扱うこと自体は問題ない。あとは現場でのやり取りや判断。経験を積んでもらえれば」
ベテラン警察犬と大先輩に助けられながら、岸さんは成長を続けている。

犯罪現場の最前線へ 相棒と挑む次の夢

広島県警によると、2025年に警察犬が出動した件数は413件。2021年以降、毎年400件以上の出動事案があり、2026年も3月末までの3カ月間で96件に上る。

警察犬の出動件数(出典:広島県警)
警察犬の出動件数(出典:広島県警)

県警には直轄警察犬5頭に加え、民間で飼育・訓練される嘱託警察犬25頭が所属。通常は直轄警察犬が出動するが、要請が集中した場合や遠方では嘱託警察犬も現場を支える。

広島県警 鑑識課 警察犬係・岸夕鶴さん
広島県警 鑑識課 警察犬係・岸夕鶴さん

近年は行方不明者の捜索だけでなく、犯罪現場での出動機会も増えている。
岸さんは、ハンドラーとして次なる目標を見据える。
「刑事部鑑識課なので犯罪現場に出て、証拠や犯人の手がかりになるようなことが警察犬でわかる活動ができたら」

幼い日に憧れた警察犬との仕事。その夢は、頼もしい相棒・クリアとともに人々の安全を守る現実となった。新米ハンドラーとベテラン警察犬の歩みは、今日も続いている。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
テレビ新広島

広島の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。