兵庫県姫路市で2カ所の市営住宅から合わせて126個、大阪府堺市の刑務所職員宿舎でも16個。水道メーターを狙った盗難事件が全国で相次いでいる。
取材を進めると、犯行には”空き部屋を見分ける目印”の悪用や、銅相場の急騰という背景が浮かび上がってきた。
■「天井からザーっと流れてきていた」
4月22日未明、姫路市内の集合住宅に住む男性が異変に気づいた。
上の階の水道管から水が吹き出し、自室の天井が濡れ始めたのだ。
住民:上からど真ん中から(水が)ポトポトっと。3日かけて何十回も拭いたか。汚いさびついた水で、服はびちょびちょ、お布団もびちょびちょ。
天井は変色し、漏電で電球の交換まで余儀なくされた。
原因は”水道メーターの盗難”だった。止水栓を閉めないままメーターが引き抜かれ、配管から水が噴き出し続けていたのだ。
この集合住宅だけで29個のメーターが盗まれ、被害額はおよそ16万円に上った。

■「空き部屋と分かっているところを盗んでいった」
記者が現場を確認すると、被害を受けた部屋のポストには養生テープが貼られていた。
チラシが入れられないようにするための目印で、この集合住宅では半数以上が空き部屋。どの部屋が空いているか、一目で見分けられる状態になっていたのだ。
姫路市上下水道局の担当者はこのように語る。
姫路市上下水道局 担当者:入居されてるお部屋でメーターを取ったら、すぐに水道が使えなくなるので。
すぐに通報されることは容易に想像できるので、空き部屋って分かっているところを盗んでいったのかな、と。

■姫路市が緊急会見 被害126個・70万円超
事態を受け、姫路市は4月28日午後3時から緊急会見を開いた。
市内2カ所の市営住宅で、合わせて126個のメーターが盗まれ、被害総額は70万5600円に上ると発表。
市は警察に被害届を提出しており、警察が窃盗事件として捜査を進めているということだ。
被害は姫路市だけではない。東京都や神奈川県でも同様の事件が続発し、静岡市では3月下旬、水道メーター10個を盗んだ疑いで男2人が逮捕された。

■銅1トン、2017年の約3倍に高騰
なぜいま、水道メーターが狙われるのだろうか。
水ジャーナリストの橋本淳司さんはその背景に”銅の高騰”を挙げる。
水ジャーナリスト 橋本淳司さん:水道メーターに使われている銅合金が高価になっている。太陽光発電のケーブルや電気自動車に使われていたり、デジタル社会の基幹的な物質になっている。
銅1トンあたりの取引価格は、2017年のおよそ70万円から、2026年3月には209万円にまで跳ね上がった。
兵庫県伊丹市の金属くず買い取り業者「金田商事」によると、水道メーターの青銅部分(およそ1.4キロ)は1900円ほどで買い取られるということだ。
金田大地社長は「青銅でできているものは結構少ないので、ほしいというメーカーさんがいる。あれば積極的に買い取っていくことになる」と話す。

■「役割分担やネットワーク型犯行の可能性も」
橋本さんは、手口の変化も指摘する。
水ジャーナリスト 橋本淳司さん:水道メーターの盗難は昔からあったが、犯人は『生活費を稼ぐため』という供述が多かった。
(今は)大量盗難、広域での発生が目立っていて、下見役とか実行犯とか売却ルートとか、一定の役割分担やネットワーク型犯行の可能性も指摘されています。

■ルール軽視の”もうけ重視”業者の存在
東大阪市で70年以上、金属の買い取りを続ける「古谷商店」の古谷康夫社長は、業界内の構造的な問題を指摘する。
古谷商店 古谷康夫社長:うちがいくらなのかを調べた上で、『それよりも高く買います』というような提案をする業者が多くいると、よくうちを利用してもらってるお客さんから聞きます。
ルールを軽視しながら、価格だけを重視するというような傾向にある人たちは多く見受けられる。特に金属の値段が上がれば上がるほど、そういった業者の数は増える傾向にはあります。
国はこうした事態を重く見て、今年6月から買い取り業者に売却者の本人確認などを義務づける法律を施行し、取り締まりを強化する方針だ。
(関西テレビ「newsランナー」2026年4月28日放送)

