東日本大震災で被災した宮城・岩手・福島の今を伝える「明日への羅針盤」、4月29日は宮城からです。震災で壊滅的な被害を受けた宮城県南三陸町の水産加工会社が、ウニの陸上養殖に取り組んでいます。駆除されたウニを再生するという大胆な発想です。
宮城県南三陸町戸倉地区。志津川湾に面したこの一角に、大きな水槽が何基も並んでいます。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「(ここは?)ギンザケの水槽です。これは今年の夏の出荷、あとは11月に分けて出荷します。ナマコ…この辺ですか。ナマコは底を泥のような感じにして、それをナマコが食べて栄養にする」
水産加工品などを手掛けるケーエスフーズ。海産物の陸上養殖も行っています。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「これが出荷ウニ、今年の。これが出荷するウニです」
2021年から始めたのが、キタムラサキウニの陸上養殖です。
近年、志津川湾では海水温が上昇したことで、キタムラサキウニの動きが活発になり、その数も増えました。
結果的に、エサとなる海藻が激減。いわゆる「磯焼け」と呼ばれる現象です。
こうしたウニは身がほとんど入っていません。漁師たちが定期的に駆除していますが、西條さんはここに着目しました。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「ウニも全部、元々は廃棄されるウニ。それを海から回収して、身を入れて出荷しようという。廃棄されているものと廃棄されているものとで商品を作ろうという、そういう考え方でスタートさせました」
西條さんの言う、もう一つの廃棄されるものとは?
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「ウチ、ワカメ扱ってまして。ワカメってすごい廃棄物が出る。その廃棄する量も莫大な量になりますから、何とかこれを使えないか?といろいろ考えていった時に、ウニも廃棄されていることがわかったし、その他野菜も廃棄されている。昆布も廃棄されている。じゃあ廃棄されているもので、商品づくりができないかと」
自社工場で廃棄物として出る海藻類のほか、外部の加工施設から廃棄物として出る野菜をエサとして利用。費用としてかかるのは、外部から持ってくる野菜の輸送費だけだそうです。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「みんなこういう風に、葉を引っ張っていきますよね。浮いている葉をつかまえて引っ張っている。(ウニも野菜を餌とみている?)そうです、そうです」
さらに取り組むのが、自前でのウニの繁殖。
従業員 渡辺知冬さん
「(これメス?)はい、ちょっと待ってれば…あ、出てきた。卵は黄色っぽいというか、それがメスの卵です」
これも、元は駆除したウニ。それを陸上で育て、人工授精させる技術も確立しました。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「これオスで、向こうがメスなの?」
従業員 渡辺知冬さん
「この2つがメスで、こっちがオスですね」
ここは震災前から西條さんの会社の養殖場でした。
しかし、津波で水槽を始めとした全ての施設が流されました。施設を再建するまでおよそ10年かかりましたが、西條さんはウニの陸上養殖は震災がきっかけになっていると言います。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「元々ここはギンザケの稚魚を育てる養殖場だった。震災の後に海が変わって、海藻類が不足して磯焼けということで急激に騒がれ始めて、それが今回の事業をスタートするための一つの要因にはなっている」
震災が原因となって駆除が必要になったウニを、食用に再生させたこの取り組み。見据えるのは、水産業の新たな未来です。
ケーエスフーズ 西條盛美会長
「捨てるものを減らそうということと、何とかそれを事業にできないかの2つをかみ合わせていった中で、持続可能だと言われれば、持続可能な方向に進んでいるということですかね」
順調にいけば、今年は5月上旬に出荷予定。それを前にこの日、ウニの身入りを調べました。担当者が、味もチェックします。
従業員 佐藤芳光さん
「うん、うまい、ばっちり。(いい感じですか?)全然いい感じ…臭みない、おいしい…ごはんが欲しい(笑)」
震災で大きく変わった海の環境を逆に利用した取り組みが、着実に進んでいます。