アメリカとイランの交渉をめぐる不透明さが続くなか、主要な中央銀行が会合を開く中銀ウィークを迎える。 物価や景気の先行きは世界的に視界不良に陥り、各国の金融政策は様子見姿勢が強まりそうだ。

日銀利上げ確率急低下

先陣を切る日銀は、27〜28日に金融政策決定会合を開催する。

3月末まで日銀からは、利上げへの「地ならし」とも捉えられる情報発信が相次いでいた。需給ギャップを再推計して、2022年1~3月期以降は需要が供給を上回り、インフレ圧力がかかりやすい状態が続いていたとの見方を示したほか、経済・物価に対する中立的な「自然利子率」の再推計値を公表したことで、日銀がどこまで利上げを続けるかの参考値とされる「中立金利」は、下限が0.1ポイント切り上がった。基調物価についてのリポートでは「2%に向けて緩やかに上昇している」と明記した。

しかし、その後、市場では、日銀の利上げ観測が大幅に後退した。中東情勢の緊迫化が続くなか、植田総裁は、4月13日、信託大会に寄せた挨拶文で、「国際金融市場で不安定な動きがみられ、今後の動向に注意が必要だ」との認識を示し、「緊迫が長期化した場合、サプライチェーンへの影響を通じて、企業の生産活動に下押し圧力がかかるリスクもある」とした。

G20財務相会合後、片山財務大臣と共同記者会見を行った植田総裁(ワシントン 16日)
G20財務相会合後、片山財務大臣と共同記者会見を行った植田総裁(ワシントン 16日)
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その後も、日銀から利上げを示唆する発信がなかったことで、利上げ期待は急速にしぼんでいく。植田総裁は、G20後のワシントンでの16日の会見でも、「2%の物価目標を持続的・安定的に実現するという観点から最も適切な対応を選択していく」と述べるにとどめた。金利スワップ市場の取引動向から東短リサーチなどが算出する4月会合で利上げを見込む確率は10日時点で57%だったのが、14日には31%になり、24日時点では5%に急低下した。

日銀は、今回の会合では、中東情勢の混乱が国内の景気・物価情勢にどう影響を広げるのか見極め切れないとして、利上げ是非の判断を次回6月会合に持ち越し、政策金利を0.75%程度で据え置く公算が大きくなっている。原油価格の高騰や石油製品の供給網への影響がどのように波及していくのかを慎重に判断するとの見方が強い。

相場変動が大きくなりやすいGW

注目は、会合後28日の植田総裁の記者会見での発言だ。外国為替市場の円相場は、先週一時1ドル=159円80銭台をつけ、160円台が再び視野に入っている。原油価格の高止まりやホルムズ海峡の不透明な情勢が続くなか、市場参加者が早期利上げに消極的だと受け止めれば、円安が加速する可能性がある。日本が大型連休期間に入る翌29日は、祝日で取引が薄くなり、額の少ない取引でも大きな値動きにつながりやすい。

実は、2年前の2024年4月末に、日銀会合後の植田総裁の会見を受けて円安が急速に進み、5月初めにかけて政府・日銀による円買い・ドル売り介入が断続的に実施されたことがある。当時の会合で日銀が政策金利の据え置きを決め、植田総裁が「基調的な物価上昇率に円安が大きな影響を与えていない」と発言したことで円相場は円安が加速、日本が祝日となった4月29日には一時160円台に急落したが、一転して5円を超えて急騰し、その後も大きく乱高下した。市場関係者からは、160円を超える水準になると為替介入への警戒感が高まるとする見方が出ている。

ガソリン高でアメリカの消費者心理は悪化

アメリカのFRB=連邦準備制度理事会も28〜29日、金融政策を決める会合を開く。インフレ懸念が高まるなか、3月の消費者物価指数は前年同月比3.3%上昇し、約2年ぶりの高い伸びとなった。生活必需品ともいえるガソリン価格が跳ね上がり、レギュラー価格は3月末に、消費者が割高だと感じる節目とされる1ガロン(約4リットル)あたり4ドルの水準を超えた。消費者心理は悪化し、ミシガン大が公表した4月の消費者態度指数は急低下して、1952年の統計開始以来の最低を記録している。

4月28〜29日のFOMCは、パウエル氏が議長として臨む最後の機会になる見通し
4月28〜29日のFOMCは、パウエル氏が議長として臨む最後の機会になる見通し

トランプ大統領から後任議長の指名を受けたウォーシュ元FRB理事に対する連邦議会の承認手続きが進むなか、今回の会合はパウエル氏が議長として臨む最後の機会になる見通しだ。市場は政策金利の据え置きを予想するが、パウエル氏の発言内容にも関心が集まっている。

日経平均は再び6万円超えか

原油価格は節目の1バレル100ドル再到達が視野に入る一方で、今週も日米の主要企業で1〜3月期の決算発表が相次ぐ。AIや半導体関連企業を中心に好調な業績が追い風となって、日経平均株価は再び6万円台を目指す可能性がある。

4月23日、日経平均株価は一時、初の6万円を突破した
4月23日、日経平均株価は一時、初の6万円を突破した

大型連休を前に取引参加者が次第に減り、相場変動が大きくなりやすい傾向のなか、日米での金融政策を決める会合や企業決算など注目材料が集中する週になる。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)

智田裕一
智田裕一

金融、予算、税制…さまざまな経済事象や政策について、できるだけコンパクトに
わかりやすく伝えられればと思っています。
暮らしにかかわる「お金」の動きや制度について、FPの視点を生かした「読み解き」が
できればと考えています。
フジテレビ解説副委員長。1966年千葉県生まれ。東京大学文学部卒業。同大学新聞研究所教育部修了
フジテレビ入社後、アナウンス室、NY支局勤務、経済部にて兜・日銀キャップ、財務省・内閣府担当、財務金融キャップ、経済部長を経て、現職。
CFP(サーティファイド ファイナンシャル プランナー)、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、農水省政策評価第三者委員会委員