ホルムズ海峡で緊張が続く中、世界の船員労組などでつくるITF=国際運輸労連は22日、FNNの取材に応じ、海峡周辺で足止めされている船員の厳しい状況を明らかにした。
中には、発砲などといった軍事行動への不安に日常的にさらされ、PTSD=心的外傷後ストレス障害の症状が出た人もいるという。
帰国後にPTSDも
ITFによると、ホルムズ海峡周辺では、約600隻、2万人の船員が足止めされている。
これまでに、約1900人の船員から相談が寄せられ、このうち半数近くが賃金や契約条件に関する問い合わせだったほか、帰国を求める相談も相次いでいるという。
ITFはこれまでに、450人の帰国を支援したとしている。
帰国した船員の中には、PTSDの症状がみられるケースもあった。
ITFで海事オペレーションの調整を担うジョン・カニアス氏は、現地では発砲などといった軍事行動、至近距離で危険にさらされる状況が続いていて、船員たちは強いストレスの中に置かれていると説明する。
船員は船を運航する訓練は受けていても、戦闘地域で行動する訓練を受けているわけではない。家族の不安も重なり、心理的な負担は深刻だという。
帰国できる人もいる一方、多くは現場に残らざるを得ず、交代要員の確保も難しくなっている。安全上の懸念が大きいため、代替要員の派遣を避ける動きが出ているからだという。
大きさと積み荷でルートが変わる
「通航できる」との発表があっても、多くの船はすぐに海峡を離れられなかった。
その理由について、カニアス氏は「積み荷の違い」も指摘する。タンカーなどの大型船は、積み荷が多くて深く沈んでいるため、通れる水路が限られ、自由に逃げたり迂回したりしにくい。
そのため、オマーン側ではなく、ホルムズ海峡の特定の深い水路を通る必要があるという。
通航には許可が必要になり、イラン側の治安当局の承認が求められるケースもある。
一方で、停戦中に海域を離れた船もあった。
立ち往生していたクルーズ船の一部などで、これらは空荷で喫水が浅かったため、比較的浅い水路のオマーン側を通れたためだという。船の大きさや積み荷の有無によって、脱出できるかどうかが分かれる実態もうかがえる。
日本の海運との接点
この問題は、日本の海運とも深く関わっている。カニアス氏によると、現地にいる船員の多くはフィリピン人で、日本の船主もフィリピン人船員を多く採用している。
ITFが関わる労働協約の適用対象となっている約1万5000隻のうち、約2500隻が日本船主の保有船だという。
ただ、足止めされている約600隻のうち、日本船が何隻かは不明だとしている。
物流正常化に「半年から1年」
現時点では、食料や水の深刻な不足は起きていないものの、ITFは、状況がさらに長期化すれば補給にも支障が出る恐れがあると指摘する。
そのうえで、仮に安全な通航が再開したとしても、物流が正常化するまでには6カ月から1年ほどかかるとの見通しを示した。海の上の危機は、船員の命と暮らしだけでなく、日本を含む各国の物流や経済にも長く影を落としそうだ。
(執筆:FNNロンドン支局長 髙島泰明)
