牡蠣(カキ)の味を競う全国大会で、有明海で養殖された新たなブランド牡蠣が優勝、日本一に輝いた。カキの身は大きく膨らんでいて、口に入れると濃厚な味が広がる。美味の秘密は養殖方法と品種改良にあるという。

有明海で養殖された牡蠣が日本一に

美味な竹崎カニで知られる佐賀・太良町。
有明海に臨むその地で15年前からカキの養殖を続けているのは境田耕治さん(48)。

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境田さんが育てたカキは、今年2月に東京の豊洲市場で行われたカキのおいしさを競う全国大会の生食の部で優勝。みごと日本一に輝いたカキは「秋月(しゅうげつ)」と名付けられたブランド牡蠣だ。

カキ漁師 境田耕治さん:
自分が育った竹崎の海が一番と評価されたので、めちゃくちゃうれしかった。竹崎が一番になりました

栄養を蓄え続ける…新たな養殖方法

太良町の竹崎漁港から船で約5分の有明海の沖合。
境田さんの『カキの養殖いかだ』に案内してもらった。

カキの養殖いかだ(佐賀・太良町の沖合の有明海)
カキの養殖いかだ(佐賀・太良町の沖合の有明海)

有明海のカキの養殖は、稚貝を付着させたホタテの貝をロープにはさみ海に落とす「カルチ式」が一般的だ。

しかし、境田さんは去年から試験的に稚貝を1粒ずつバラバラの状態で専用のバスケットに入れる「シングルシード養殖」を始めた。

この養殖方法に挑戦した狙いを境田さんは次のように説明する。

カキ漁師 境田耕治さん:
カキの殻先を波とバスケットで削り、殻の成長を止めて、その栄養を身に蓄え続ける。身がパンパンになっていく

大きく膨らんだ身に育つというのがメリットという「シングルシート養殖」。
しかし、この方法ならではの大きな苦労もある。

1粒1粒の成長を見極め出荷まで選別

シングルシート養殖では、出荷までにやらなければならない作業は多く、かなりの労力が必要だという。

カキ漁師 境田耕治さん:
網にフジツボとか汚れがめちゃくちゃ夏場に付く。それを定期的にお世話。めちゃくちゃ大変

単にカキの成長を待てばいいというものではない。
境田さんは、1粒1粒のカキの成長を見極め、出荷できるまで選別を続ける。

1粒1粒のカキの成長を見極め出荷できるまで選別
1粒1粒のカキの成長を見極め出荷できるまで選別

カキ漁師 境田耕治さん:
これはまだ殻先が伸びてだめだよねとか、これは削れて最高とか、この中から選別する

大きく膨らんだカキ…濃厚な味は格別

境田さんが養殖した“日本一の牡蠣”。
その味は…

大きく膨らんだ生のカキを口に入れると濃厚な味が広がっていく。その美味は格別だ。

境田さんが丹精込めて育てたブランド牡蠣「秋月」は、他のカキと比べて約2倍の価格で取り引きされ、東京や海外の飲食店からの注文も多いという。

「品種改良」で品質安定し旬も長期に

境田さんが養殖しているカキが美味しい理由には、もうひとつ秘密がある。
それは「品種改良」。

全国大会で優勝したブランド牡蠣は、産卵しないように品種改良された“3倍体”と呼ばれるカキ。
他のカキとどう違うのだろうか。境田さんにきいてみた。

カキ漁師 境田耕治さん:
これまで(のカキ)は卵を持ち産卵する。だから味のピークがある。3倍体は産卵しないように品種改良をしているので、ある程度むらがなく品質が安定する

さらに、これまでは半年しか収穫できなかったカキが約10カ月収穫でき、旬の時期も長くなった。

「次世代の漁師の希望になれば」

新たなカキ養殖に挑戦する背景には、漁師の置かれている厳しい環境があるという。境田さんはカキ養殖のほか、コハダ漁などもやりながら生計を立てていた。

カキ漁師 境田耕治さん:
いま魚だけでは漁師を継いでとは言えない状況。どうにかせんといけんなと思って3倍体にチャレンジした

“カキのブランド化”が有明海で漁を続ける次世代の漁師の希望になればと境田さんは話す。

カキ漁師 境田耕治さん:
安定した収入があれば息子や後継者に継がせられる環境になると思っている

父親とともに船に乗りその姿を見てきた二十歳の息子、壮馬さんは「不安もあるが、それ以上に(漁師を)やりたい気持ちが今の自分は強い」と言う。

カキ漁師・境田耕治さん:
有明海で日本一の品物が作れるというのが若い人たちに証明できたので、息子に限らずチャレンジしてくれたらと思っている

漁業を守り続けるための地道な取り組みが有明海沿岸の小さな港町で続いている。

サガテレビ
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