広島県三原市大和町・蔵宗。祖父の代から育てられた土壌と木を守ろうと、大学を出て広島市内から戻ってきた吉岡理佳さん(26)が、家族とともにぶどうづくりを本格的に始めた。かつては人手が減り畑を閉める話もあったが、今は看板犬「専務」も加わり、昔ながらの手法と新しい暮らしがつながっていく。
若い世代の移住
「大学を卒業したのが去年で、4月からこっちに引っ越してきて一緒にやっている」という吉岡理佳さん。祖父が約30年前から始めたぶどう園の再生を目指し、家族と同居しながら畑を引き継いでいる。かつては継ぐ人がいないために木を伐採したり畑を手放したりした場所もあったが、理佳さんの決断で動きが生まれた。
ぶどうづくりの考え方
理佳さんは「この土地を守るということに重きを置いている」と話す。一本の木で作る実の量を抑え、味を濃くする栽培方法を採る一方、古くからの土壌や木を大切にする姿勢を維持している。土づくりには地域のかやぶきの古材を使い、自然の働きを活かすことを重視している。
土壌と循環
蔵宗地域ではかやぶき屋根の家が今も多く、屋根の葺き替えで出るかやを譲り受けて堆肥化し、畑の土の改良に使っている。「かやをもらってきてから色んな動物たちの力を借りながら土状になっていく」と理佳さん。100年の役目を終えた素材が次の世代の栄養になるという、循環を意識した取り組みだ。
現場の作業
畑では細かな手作業が続く。枝の皮を削ぐ作業は、虫の侵入や病気を防ぐために欠かせない手入れだ。「皮を削いでやるんです。皮の間に虫が入ったり病気になったりよくないので」と理佳さん。一本一本の木に時間をかける栽培で、年数を経た木(約20年)や今年植えられた若木が混在している。
家族と地域のつながり
84歳の祖父・榎誠浩さんは、かつてはもっと広くぶどうを栽培していたが、後継者がいないことから畑を縮小していた。「もう閉めるつもりだった」と語る祖父に対し、理佳さんは戻ってきて一緒にやる決断を示した。祖父は心配もあるが、理佳さんのやる気に対し「教えられるところは教えてあげようかな」と受け止める姿勢を見せている。
看板犬「専務」と暮らし
理佳さんとともに来た犬は「せんちゃん」と呼ばれ、地域では「専務」として親しまれている。もともとは保護された犬で、移住に伴い一緒に生活を始めた。畑を案内する際にも犬は同行し、地域の暮らしの一部となっている。
品種と今後
畑には人気の品種「藤稔(ふじみのり)」などが見られる。理佳さんは土と木を守る方針のもと、昔からの技術や資源を活かしながらぶどうを育てている。地域の資源を生かす手法や家族での継承が続くことで、蔵宗の里山は少しずつ息を取り戻している。
広島県三原市蔵宗のぶどう園では、若い世代の移住と家族の協力によって、長年培われた土壌や栽培技術が受け継がれている。理佳さんは「土地を守る」ことを軸に、かやの堆肥化や丁寧な手入れで品質を追求しつつ、祖父の経験を学びながら歩んでいる。看板犬「専務」も加わった新しい日常は、昔と今がつながる前向きな営みを感じさせる。
テレビ新広島
