AIの需要拡大を背景に、「データセンター」建設の波が押し寄せている。社会を支える新たな基盤として期待が高まる一方で、電力や水資源、騒音、情報開示のあり方などをめぐり、地域住民の不安や反発も各地で顕在化している。急拡大するデータセンターは、地域社会とどのように向き合い、共存への道を探っているのか。
世界のデータセンターの約13%が集まるアメリカ・バージニア州北部で、最新型のデータセンターの取り組みを取材した。

“データセンター銀座”内部を取材

NTTグローバルデータセンターのブルーノ・ベルティ副社長が自ら案内したデータセンターはバージニア州ラウドン郡の通称「Data Center Alley」にある。いわば「データセンター銀座」のど真ん中だ。

通常、データセンターは扱う情報量の多さからセキュリティー上、取材に応じる機会は多くはない。「データセンターに対する誤解を解く最善の方法の一つは、実際に人々にデータセンターの内部に入ってもらうことです」とベルティ氏は話す。

ブルーノ・ベルティ副社長がサーバー室で冷却システムを説明
ブルーノ・ベルティ副社長がサーバー室で冷却システムを説明
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アメリカにあるNTTグローバルデータセンターでは、住民との法的トラブルは抱えていないという。だが、全米各地では日本と同様に、「電気代高騰の原因になっている」「騒音や大気汚染など環境問題を引き起こしている」など、住民の不安や反発の声は絶えない。

では、データセンター側の見方はどうなのか。住民の声をぶつけた。

電気代高騰の原因?

―――データセンターが電気代をつり上げているのか?

それは違います。私たちがデータセンターを建設する際は通常、地元の電力会社と連携し、必要な電力が確実に供給されるよう調整が行われます。電力会社はデータセンターに対し、特定の電力量を割り当てています。従って我々が地域社会から電力を奪っているわけではありません。確実に電力を確保するため、私たちは送電設備や変電所など多額の初期投資をしますが、この負担を私たちが地域社会に負わせるようなことはありません

屋外には電源システムがずらり
屋外には電源システムがずらり

―――電力確保の見通しがつかないまま、建物を先に建設するケースもある。住民の中には送電線や鉄塔が住宅敷地内に敷設される計画を通告された人もいるが?

多くの電力会社は、これまでの送電線の敷設ルートが最適ではなかったことに気づき始めています。建設を急ぐあまり、不適切な判断がなされたケースもあったようで、今は電力業界でルートの敷設方法の見直しが進められています。

騒音や大気汚染などの問題と対策

―――データセンター周辺の騒音問題はどのように対応している?

屋外で発生している原因の一つは「発電機(ジェネレーター)」です。もう一つは「冷却機(チラー)」です。発電機は非常事態が発生した際に稼働し、顧客の事業を守ります。稼働すれば、停止している時に比べて大きな音が発生します。冷却機はファンを稼働させ、建物内部から熱を排出する役割を担っています。これらの騒音を確実に低減させるため、防音壁などの技術をこれまで以上に積極的に導入しています。

別のデータセンターで数分おきに黒煙を目撃
別のデータセンターで数分おきに黒煙を目撃

―――取材中に別のデータセンターで煙突から出る黒い煙を目撃したが、これは普通のこと?

黒い煙というのは、正常ではありませんね。少なくとも私たちのデータセンターではありません。工場や産業系の施設に比べるとデータセンターから発生する汚染は極めて少なく、非常用の発電機が稼働する時を除き、汚染物質は発生しません。ディーゼル燃料を使用する発電機が稼働したとしても、フィルターや炭素除去装置が備えられているので黒い煙は出ないはずです。

また、私たちはディーゼル燃料から「HVO(水素化処理植物油​)燃料」に切り替えています。これはディーゼルに比べてはるかにクリーンで、排出量を大幅に削減できる燃料です。

NTTの発電機の煙突にはフィルターと騒音軽減策
NTTの発電機の煙突にはフィルターと騒音軽減策

―――どういう時に発電機は稼働する?

3つのケースがあります。1つ目は設計通り、電力供給に何らかトラブルが起きて発電機が自動的に稼働する場合です。これは極めてまれです。2つ目は定期点検を行う場合です。点検の頻度や方法はメーカーによって異なります。3つ目は電力会社側から要請があった場合です。寒さや暑さなど気候で地域社会の電力需要が逼迫した際、要請に応じて独立運転に切り替えるケースです。