イラン情勢の混乱を受け、日本ではすでにプラスチック製品の価格高騰や供給不安の声が相次いでいる。
特に重要なのが石油由来で食品トレーやゴミ袋などの生活用品から人工透析などの医療機器まで、さまざまなものに使われている「ナフサ」。
見えてきたのは、記憶に新しいあの「令和の米騒動」に似た、中間業者による“出荷控え”や“価格上昇”が始まっているという現象だった。
この石油への高まる危機感の中で、高市総理が「日本全体として必要となる量は確保されている」と語る中、同じ自民党所属で大臣経験者でもある河野太郎衆院議員は「日本全体が逆風にさらされている」と懸念を示した。
河野太郎議員:プラスチックの節約、『できることはやっていきましょうね』と政府全体としても呼びかけてもいいんじゃないか。
■石油由来の原料がすでに3割も値上がり 商品を入れるポリ袋が納入停止も
東大阪市にあるプラスチック製品を作る現場では、石油由来の原料がすでに3割も値上がりしているという。
カワキタ 河北一朗社長:最初はそこまで長引くとは思っていなかったんですよ。ちょっと今困ったなというのが正直なところですね。
長引く中東危機の波。大きな懸念の一つと言われるのが「ナフサ」の不足だ。
石油を精製して作られる「ナフサ」は、プラスチックのコップや容器、食品のトレーやパック、ゴミ袋など、あらゆる分野で使われる生活用品などに欠かせない原料で、国内需要のおよそ4割を中東からの輸入に頼っている。
河北社長の会社には、7日、こんな連絡が…
カワキタ 河北一朗社長:こういう袋類の値上げの案内があったと思ったら、翌日にはもう供給停止のメールが社員宛てに来まして。
商品を入れるポリ袋が納入されなくなったのだ。
カワキタ 河北一朗社長:(イラン情勢が)どうなるか不透明なのでまだ予断を許さない状況…こればっかりはもう自社の努力ではどうしようもない。
『おいトランプ!お前自分本位じゃないぞ!もっと世界のことを考えてやってくれよ』と言いたいです。

■命を守る医療の現場にも大きな影響が
さらに大阪でその影響を探っていくと、命を守る医療の現場でも、無数のプラスチックが使われている。
血液の不純物を取り除く「透析治療」。週3日、継続しなければ命に関わる事態にもなりかねませんがそのチューブなどはナフサ由来なのだ。
【大阪暁明館病院 櫻井勇介広報室長】「透析をされるたびにセットして、ろ過することになる。患者にとって1番大事な、この『ダイアライザー』というものが供給不安定になってしまうリスクが考えられる」
そしてこれだけにとどまらず、手術や点滴に使う生理食塩水の容器もナフサ由来です。
大阪暁明館病院 薬剤課課長:プラ容器がほとんどなので影響は大きいのかなと思うし不安が大きい。
この病院では在庫があり、すぐには影響がないものの、もしもの時の不安がつきまとう。
こうした声は、食品にも。豆腐店の店主はナフサ不足の懸念について「パックとか袋とか、もう頼んだ。きのう(業者が)『なくなるで』と言いに来たから」と説明。
飲食店の店主も「ラップ系上がるのはきつい。自分を削って頑張ります」と語った。

■アメリカ・イランが2週間の停戦に合意 原油不安の解消なるか
こうした状況で8日、「文明全体が滅ぶ」とトランプ大統領が警告していた期限直前に停戦が合意。原油不安の解消に期待も高まるが、専門家はこう指摘する。
エネルギー経済社会研究所松尾豪代表:タンカーをペルシャ湾に入れて、恒常的に中東の油を世界の市場に出していく必要がありますけれども、これが安定的に出てくるかどうかが今後の焦点です。
一方、7日、高市総理は日本の原油不安について国民にメッセージを発信。
高市総理:原油及び石油製品の日本全体としての必要な量は確保されております。
また、ナフサについてはSNSで国内需要の4カ月分を確保できているとし中東以外からの輸入量も増やす考えを示した。
つまり今国内に「ナフサ」は確保されているというのに製品の供給不安が起きている状況なのだ。

■業者による“出し渋り”「令和の米騒動」に似た構図も
さらに価格の問題も。奈良県内の工場で医療機器を製造するメーカーの社長は、全ての工程でナフサ由来の材料を使うため、価格の高騰が大きな負担となるという。
広陵化学工業 中西司社長:(ナフサ由来の原料価格は)5%、10%もあれば、一気に30%以上あがるというものも。
広陵化学工業 坂上浩一係長:原料の業者が)企業努力では抑えられなくて上げさせてくださいと。
(Q.逆に出荷するときに価格は上げていない?)
広陵化学工業 坂上浩一係長:今のところ(値上げは)やっていない。
専門家は…
エネルギー経済社会研究所 松尾豪代表:いわゆる流通の目づまりと政府は言っていますけれども、(業者が)在庫を厚めに持つことで最終的に使用する方のところで不足感が出てきているという状況だと。
取材の中で見えてきたのはおととしの「令和の米騒動」の時にも騒がれた、業者による“出し渋り”に似た構図。中間の業者などが、出荷を控えたり、価格を上げたりすることもあるということだ。

■医療機器メーカーでは機器を「再利用」することで節約も
医療機器メーカーでは、原料が欠品する最悪の事態に備えて新たな対策も。
広陵化学工業 井奥祐輔工場長:テストでつくったものは新しい原料を使わずに粉砕して、原料に戻して再利用して使う、
インフルエンザの検査機器を作る際のテスト稼働を取材すると、これまでは都度作られた機器は捨てていましたが、再利用で「節約」を始めたということだ。
必要なものを届けるために民間企業それぞれの現場で努力が続いている。
広陵化学工業 中西司社長:供給ができないとなってくると医療現場、さまざまな影響が出てくるのでそういったことがないようにまずそこを第一に。

■「置き換えられるものは置き換えていくことを進めていく必要」
「あらゆる可能性を排除しない」としながらも私たち国民にまだ明確な節約の呼びかけはしていない高市総理。
与党・自民党の大臣経験者でありながら「節約」の重要性を説く河野太郎衆院議員が取材に応じた。
河野太郎衆院議員:日本全体がいま逆風にさらされている。一致団結してこの危機を乗り越えていくというのが大事なこと。社会全体として不必要なものは使わないようにしようよということはやらなければいけません。
そして、政府に求められることは…
河野太郎衆院議員:量はある。ただ値段は上がるから置き換えられるものは置き換えていくことを進めていく必要がある。
プラスチックを節約して他のものに変えていこうということはこれまでもやってきた。これを機会に『できることはやっていきましょうね』と政府全体としても呼びかけてもいいんじゃないか。
大切な製品を必要なところに行き渡らせるために、値上げの許容など協力が求められている。
(関西テレビ「newsランナー」 2026年4月9日放送)

