運転手不足への切実な対策 市民の足に起きた変化
ライバル同士のバス会社が手を組み、運転手や車両を共有する「共同運行」が、2026年4月1日から島根・松江市でスタートした。
全国10例目となるこの取り組みは、深刻化する運転手不足という課題への切実な答えだ。
便利になる一方で運賃も変わる…市民の日常の足に何が起きているのか取材した。
バス会社が“競争”から“協力”…異例の共同運行
共同運行に乗り出したのは、松江市交通局と一畑バス。
これまでライバル関係にあった両者が、重複する区間のある2つの路線についてルートを統一し、運転手や車両を出し合って運行する。
いわば「ひとつの会社のように」協力するかたちだ。
こうした取り組みは、すでに広島市や岡山市でも実施されており、松江市は全国で10例目となる。
地方都市が直面する交通問題に対し、業界の垣根を越えた解決策として注目される。

地域の足が失われる前に…運転手不足が突きつけた現実
共同運行が導入される直接のきっかけは、深刻化する運転手不足だ。
松江市では、2024年から運転手不足を理由とした路線の廃止や減便が相次いでいた。
このまま手をこまねいていれば、地域の足がさらに失われかねない状況だった。
一畑バスの吉田伸司社長は、「地方の都市で一般路線を黒字化していくのは難しい。地域の自治体の皆さん方と話をしながら進めなければならない」と語る。
そのうえで「運転手の労働条件の向上を図りながら運転手を確保していくひとつの態勢ができた」と、今回の共同運行に手応えを示した。

20分おきに走る安心感 「等間隔ダイヤ」で利便性向上に期待
共同運行によって、一部の区間では午前9時から午後4時まで20分ごとの等間隔でバスが運行される。
「次のバスはいつ来るのか」という不安が減り、時刻表を細かく確認しなくても乗れるようになることが期待される。
運行本数も全体で増加し、平日は13便、休日は15便増えることになる。
バスの本数が少ないことが利用をためらわせる要因のひとつだっただけに、この増便は利用者にとって大きな変化となりそうだ。
松江市の上定市長も「市民のみなさんにはたくさん乗っていただいて利便性を確かめていただいて、またお声を頂戴したうえで常に改善を図っていきたい」と呼びかけている。

30年ぶりの運賃改定 松江中心部は一律250円 一部区間は値上げも
便利になる一方、運賃にも変化がある。
共同運行に伴い、両社の運賃が共通化された。
市の中心部の一定範囲内では、どちらのバスに乗っても一律250円の均一運賃が適用される。ただし、乗車区間によっては値上げとなる場合もある。
また、この範囲を超える場合は距離に応じた運賃が上乗せされ、現在の運賃が260円を超える区間では1割の値上げとなる。
今回の運賃改定は、消費税率の改定を除くと1996年以来、実に30年ぶりのこととなる。
値上げによる増収は、運転手の待遇改善など人材確保に向けた取り組みに充てられる予定だ。
2028年度には、市と一畑合わせて約1億9000万円の収支改善が見込まれている。

地方の交通を守る「共同運行」…「使いやすいバス」をどう守る?
運転手不足は松江市だけの問題ではない。
全国の地方都市が同様の課題を抱えるなか、ライバル会社が協力して限られた資源を有効活用する共同運行は、有力な解決策のひとつとして今後さらに広がる可能性がある。
「使いやすいバス」を維持するためには、運賃改定も含めた地道な取り組みの積み重ねが欠かせない。
松江市の試みが、地域の公共交通のあり方を考えるきっかけになるかもしれない。

