「米を欲してたのか、その価格を欲していたのか」——備蓄米を販売しながら、そんな疑問を抱いたという鹿児島市の米店主の言葉が印象に残る。品薄と価格高騰が同時進行した「令和の米騒動」から約1年。米の価格は乱高下を繰り返し、米店も農家も翻弄され続けた。あの騒動は何を変えたのか。鹿児島市の老舗米穀店を訪ねた。

備蓄米30トンを完売——「みんな米を欲してたのか、価格を欲してたのか」

鹿児島市の二之宮米穀店は、2025年7月から12月にかけて政府の備蓄米30トンを販売した。購入制限を設けなかったにもかかわらず、備蓄米は早々に売り切れた。

店主の二之宮行宣さんはこう振り返る。「(備蓄米)そんなにみんな欲してたのって。米を欲してたのか、その価格を欲していたのか、(販売していて)わからない」

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備蓄米の放出によって、全国のスーパーにおける米の販売価格は2025年6月以降に3000円台まで下落した。しかし新米が出回り始めると価格は再び上昇に転じ、2026年1月には5キロあたり4416円まで達した。

価格が一転して下落——「過剰在庫」と「米離れ」が重なった

ところが、2026年1月をピークに米の価格は下落へと向かい、最新の数字は3900円台となっている。二之宮さんはその背景をこう説明する。

「過剰在庫になっている。(令和7年の)生産量が増えたことが一番。米の高値で消費者が米離れをしていったというのがいちばんの原因だろう」

さらに3月の決算を前に、在庫を減らそうとした卸売業者が値を下げたことも、販売価格の下落に拍車をかけた。

高値が続いた時期、同店では5キロ2800円の規格外米を販売するなど、消費者の選択肢を広げる工夫を続けてきた。

「卸業者から米を買ったことがない」——仕入れ方が180度変わった1年

価格の乱高下は、米店の仕入れ方そのものを変えた。二之宮さんは言う。「1年で180度変わった。去年の例の備蓄米から、卸業者から米を買ったことがない」

消費者に少しでも安く提供できるよう、卸売業者を通さず農家から直接買い付けるスタイルに切り替えたのだ。現在、熊本県産の銘柄米を5キロ3500円で販売しており、その売り場には2025年産の米が所狭しと積み上げられている。

2026年の価格を左右する「超早場米の農協買入価格」

県内では超早場米の栽培も始まりつつある中、2026年の米の価格動向はどうなるのか。二之宮さんが注目するのは、超早場米が市場に出回った際の農協の買入価格だ。

「超早場米が入ってきた時に農協の買入価格がいくらなのか。高けりゃ(消費者は)買わないし、低けりゃ農家は困る。(値段が低ければ)農家が耐えきれなくなって、次の年には作らないってなると、また米不足になる。いいあんばいのところで価格が推移すればいいのかなと思う」

消費者・農家・米店、三者が共存できる「いいあんばい」の価格——その言葉には、この1年間で身をもって感じた苦労がにじんでいる。

世界情勢も変動要因に——主食をめぐる不安は続く

備蓄米の放出から1年が経った今も、先行きに対する懸念は消えない。イラン情勢など世界情勢の変化を背景に、包装資材や燃料の価格も変動しており、米農家を取り巻く経営環境はさらに厳しくなる可能性がある。

生産量・消費動向・流通コスト・国際情勢——これほど多くの要素に左右される食品が、私たちの毎日の食卓を支えている。令和の米騒動が残した問いは、まだ答えが出ていない。

【動画で見る▶「令和の米騒動」は今 米価格は? 備蓄米が本格流通して1年】

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