マイナ保険証を利用していない人が医療機関で保険診療を受けるときに使う『資格確認書』。
政府は「マイナ保険証を持っていない人にのみ『資格確認書』を自動交付する」方針であったが、大阪府の後期高齢者医療広域連合は、有効期限が切れる8月以降、後期高齢者全員に自動交付することを決定したという。
都道府県規模としては全国初となるそうだ。
“原則マイナ保険証”を目指す国の動きとは逆行しているともいえるこの動きがなぜ起きているのか。
その理由として「夫婦間であってもマイナ保険証の利用実績によって、交付される人とされない人が出てしまい、問い合わせ対応など自治体への負担も大きくなる」ということなどが挙げられているという。
■「資格確認書」当初は「マイナ保険証持たない人のみ」も混乱避けるため「75歳以上全員」に
去年から利用がはじまった『資格確認書』は、『従来の紙・プラスチックの健康保険証』と大きさや書かれた内容がほぼ同じで、受付で提示するだけの利用方法も同じ。『健康保険証』の替わりと言える。
去年7月、後期高齢者や国保の人の『従来の健康保険証』の期限が切れた。
政府は当初、「マイナ保険証を持っていない人にのみ『資格確認書』を自動交付する」としていましたが、高齢者を中心に「自分がマイナ保険証を持っているかわからない」といった人が多く、混乱を避けるため、「75歳以上の後期高齢者全員に『資格確認書』を自動交付する」ことになった。
『資格確認書』の有効期限は、「5年以内で保険者(保険制度の運営主体)が設定できる」と定められており、各保険者が自由に決められる。
後期高齢者や国保の人の『資格確認書』は、『従来の健康保険証』にならい、期限が1年に設定されているため、今年7月に有効期限が切れる。
■大阪府の後期高齢者医療広域連合「自治体への負担も大きく」75歳以上全員への交付決定
厚労省は今年1月、後期高齢者の医療制度を運営する、各都道府県の「後期高齢者医療広域連合」に対し、「75歳~84歳のマイナ保険証保持者で、一定の利用実績(※1)がある方へは、8月以降『資格確認書』を自動的に交付しない取り扱いにすること」と通知している。
大阪府保険医協会によると、これに対し、大阪府の後期高齢者医療広域連合は「夫婦の間でも利用実績次第で、資格確認書が発行されるかどうか差が出るなど、混乱が強く懸念される」、「問い合わせ対応など自治体への負担も大きくなると予想される」などの理由から全員に対する自動交付を決定したのだという。
※1:直近1年間でマイナ保険証の利用が6回以上あり、かつ概ね直近3か月以内に利用実績がある場合
■マイナ保険証以外の確認書類は必要だ!
さらに地方自治の専門家でマイナ保険証問題に詳しい幸田雅治氏(神奈川大学名誉教授、弁護士)は「“マイナ保険証以外の確認書類”は絶対に必要だ」と指摘する。
【幸田雅治氏 神奈川大学名誉教授/弁護士】
マイナ保険証を持ち歩く機会が増えれば紛失の危険性が高まります。しかし現状は再発行までに5日から1カ月程度かかり、その間、医療機関の受診等に問題が生じてしまいます。
またカードリーダーの不具合等でマイナ保険証が利用できないトラブルは、今も多数発生しており、その結果「医療機関の窓口でいったん10割支払う」ケースが増加しています。
マイナ保険証が使えないと保険医療が受けられないというのは、「人権としての医療アクセス」が侵害される事態と言えます。
そして何より、厚労省の通達内容の「個々のマイナ保険証の利用実績を確認し、資格確認書の送付の有無を判断する」「後期高齢者を年齢で区切って送付の有無を決定する」といったことは、自治体や後期高齢者医療広域連合の職員の方たちに、多大な事務負担を発生させます。
医療情報は『要配慮個人情報(センシティブ情報)』です。
より慎重な取り扱いが求められる作業の負担が増えるのは危険なことです。
ミスは許されません。
このような問題を解消するためには、マイナ保険証の保有状況や利用の有無を問わず、全ての被保険者に対して、本人からの求めによるのではなく、プッシュ型で資格確認書を交付するとともに、さらにその有効期限をできるだけ長く設定し、当該期限が経過する時期に自動的に更新するという措置をとることが最も適切とだと考えます。
医療現場の混乱を回避しつつ、被保険者の利益を守るという点からも、今回の大阪府の全員交付の方針は評価すべき対応と考えます。
(幸田雅治氏 神奈川大学名誉教授/弁護士)
■大阪府保険医協会「患者に負担と混乱もたらさないため、すべての人に『資格確認書』の自動交付を」
【大阪府保険医協会 坂元いづみさん】
ひとつのご家庭の中で、資格確認書が送られてくる人、こない人が分かれるのは混乱を招きます。友人や知人の間で違いが出るのもそうです。
ましてや昨年、全員に自動配布したのでなおさら「どうして?」となることでしょう。
これ以上、医療現場と患者に負担と混乱をもたらさないためにも、すべての人への『資格確認書』自動交付を強く求めます。
(大阪府保険医協会 坂元いづみさん)