少子化や教職員の働き方改革を背景に進められてきた中学校部活動の「地域クラブ」への移行が、2026年4月から平日の活動にも広がり、本格化する。岩手県内では地域差がある中、花巻市では地域資源を生かした先行的な取り組みが進んでいる。子どもたちの活動機会をどう守り、そして新たに生じる課題とどう向き合うのか。現場の声を取材した。
部活動の「地域移行」とは何か
全国の公立中学校で進められている部活動の「地域クラブ」への移行は、これまで休日の活動を中心に進められてきたが、2026年4月からは平日の活動にも広がり、いよいよ本格化する。

この取り組みは、これまで学校の教職員が担ってきた部活動の運営や指導を、地域のクラブが担う形へと移行するものだ。
ただし、学校から部活動が完全になくなるわけではない。このため、誤解を避ける目的で、最近は「地域移行」ではなく「地域展開」という言葉も使われるようになっている。

この「地域移行」の背景にあるのが少子化だ。部員不足により、学校単位では大会に出場できない、活動そのものが成り立たないといったケースが増えている。

もう一つの大きな理由が、教職員の働き方改革である。専門外の競技を指導する負担や、休日の活動による長時間労働が長年課題となっていた。

国はこうした状況を受け、2023年度からの3年間を「改革推進期間」と位置付け、休日の部活動を中心に地域クラブへの移行を進めてきた。
そして2026年度からの6年間を「改革実行期間」とし、平日の活動も含めた地域移行を加速させる方針だ。
花巻市の取り組み
岩手県内では、休日の活動であっても地域クラブへの移行が進んでいない自治体が多く、地域差があるのが現状だ。人材不足や活動場所の確保が課題となるケースも少なくない。

こうした中、地域クラブでの活動に力を入れているのが花巻市だ。市内には27の地域クラブがあり、市内の2年生と3年生の18%にあたる254人が所属している(3月1日時点)。
市は、指導員への謝礼の支払いや施設利用料、屋外照明代の減免など独自の支援策で地域クラブの活動を後押ししている。
花巻市教育委員会学校教育課の川村拓久指導主事は、「中学校生徒の活動の場の保障として、地域資源を活用して移行に向けて地域クラブを立ち上げやすい体制を構築しようとしているところ」と話す。
野球クラブの現場
花巻市で活発に活動している地域クラブの一つが「花巻ベースボールクラブ」だ。市内6つの中学校から13人が集まり、一つのチームとして活動している。
地域住民が中心となり、2024年2月、市で初めての地域クラブとして活動を開始した。
結成前、各学校の野球部では、年によって試合に必要な9人がそろわず、合同チームを組んだり、解散したりを繰り返してきた。
地域クラブで活動することで一つのチームとして、継続的に大会へ出場できるようになり、2025年の県中総体ではベスト8に進出した。
矢沢中学校2年の生徒は、「中3までずっと一緒のチームで試合ができる。1年ごとにチームの人たちが変わらず、最後まで一緒のメンバーで優勝を狙える」と話す。
クラブではすでに平日の活動も行っており、午後6時から8時まで週4日、土日はどちらか1日の午前9時から正午まで、週5日の活動が基本となっている。
チーム結成から2年、順調に活動を続けている。
見えてきた課題と成果
一方で課題も見えてきた。遠方から通う生徒にとって、保護者の送迎は欠かせない。
矢沢中学校2年の生徒は、「毎日父に送ってもらっていて、片道30分ほどかかる」と話す。
保護者からも、「会社の方にお願いして調整してもらって送迎できるような環境。親の送迎の関係上、練習に間に合う間に合わないというところも心配されている方もいると思う」といった声が上がる。
また、さまざまな地域から生徒が集まることで、チームづくりの難しさもある。
湯本中学校野球部で外部コーチを務めていた金矢晃始監督は、日中は社会福祉施設でケアマネージャーとして働きながら指導にあたっている。
金矢監督は「学校ごとの決まりとかもやっぱりあるので、それを調和するというのは難しいが、それもある意味楽しみの一つ」と前向きに捉える。
部活動の地域クラブへの移行が進んだことにより、教職員の働き方にも変化が出ている。
2025年12月、花巻市教育委員会が休日の部活動を地域クラブに移行した中学校の教職員45人を対象に行ったアンケートでは、73.3%(33人)が部活動の負担が「減った」「少し減った」と回答した。
花巻市教育委員会学校教育課の川村指導主事は「学校と地域が協力して子どもたちを育成するという体制が、より強固なものとなっていくことが望ましい。またその結果、中学校の先生方の働き方改革に寄与できればいい」と話す。
子どもたちが生き生きと活動する姿がある一方、指導人材や活動場所の確保などを理由に、地域移行が進まない自治体もある。
部活動の地域移行は、いま大きな転換点を迎えている。
