シリーズ『熊本地震10年あの日を忘れない』、今回は県内で増えている在留外国人への対応について考えます。
『震度7』の揺れに2度襲われた益城町で先日、地震の経験や知識が乏しい外国人を対象に防災について学ぶイベントがありました。
【熊本県国際課 松尾 誠志さん】
「災害の時は政府が助けてくれる。でも、地域の人との助け合いもとても大切」
3月22日、益城町で開かれた『防災まちあるき』。熊本地震から10年を前に、外国人に地震について知ってもらい、地域とつながりを築いてもらおうと熊本県が初めて企画しました。
参加したのは、カンボジアやインドネシア出身で益城町で働く実習生のほか、中学校で英語の授業のサポートをするアメリカ出身のALTの計12人。全員が熊本地震を経験していません。
【インドネシアの技能実習生 ラマダニさん】
「地震とか津波はインドネシアでも起きているから、どう防いだらいいのか知りたい」
(カンボジアのグループが石垣について話す)
「危ない、危ない」
「地震の時に倒れる可能性がある」
参加者は自分たちが暮らす地域を巡り、危険と思われる場所について話し合いました。
(インドネシアグループ)
「瓦って何からできている?」
「瓦はもともと粘土でできている。陶器、茶碗とかと同じ」
「日本家屋というものは大体、粘土質の瓦が使われている。ただ重いので、地震については不利な部分がありました」
イベントが行われた益城町上小谷(かみおやつ)地区の周辺には布田川断層帯が走っていて、熊本地震ではその一部が地表に出現しました。
傾斜地の多いこの地区は2度の震度7の激しい揺れで擁壁の石垣が崩れるなどして、多くの住宅が被災しました。
「壁面も10年前はこのような感じではなかった。比較的地震の後で固めるようにコンクリートにしてある。安全、危険はなくなっている状態」
また、参加者は地区の一時避難場所となっている広場で、設置されている防災用井戸の使い方なども学びました。
【カンボジアの特定技能実習生 ムン ソクナンさん】
「カンボジアは地震がない。日本に来て初めて地震があり、緊張した。もう少し大きな地震があったら経験がないし、どうしたらいいか外国人で分からないし、心配」
【カンボジアの特定技能実習生 ティ・パジンハイさん】
「地震があったら、近所の人に『手伝って』『避難方法を教えてください』とお願いしたい」
【アメリカのALT 武井 ルルさん】
「(熊本地震の話を聞いて)とてもショックを受けた。日本の地震は局地的に激しい。日本人が互いに助け合ったり思い合ったりすることを、とても尊敬している」
防災まち歩きの途中では地域の人たちとコミュニケーションをとる姿も見られました。
【上小谷地区自主防災クラブ防災士 山本 健司さん】
「防災の面から見ても外国人や観光客は一緒に力を分け与えないといけない。いざとなった時は、こちらも手を差し伸べるし、向こうも手を差し伸べてくれる。そのような関係をつくらないといけない」
熊本県内で暮らす外国人の人数の最も新しい数字は去年6月末時点で約3万人です。熊本地震が起きた2016年が約1万人ですので、3倍近くに増えています。
台湾やベトナムやフィリピンなど東南アジアの国と地域の人たちが多く、少子高齢化による人手不足や、菊陽町へのTSMCの進出などが増加の背景にあるとみられています。それだけ増えていると、熊本地震を経験していない外国人も多いと思われます。
益城町の『防災まちあるき』に参加した外国人全員が熊本地震を経験していないということで、地震の経験や知識が乏しい外国人を支援する態勢というのが今、求められています。
熊本地震の際に外国人の支援に当たった熊本市の国際交流会館で、当時の話を聞きました。
【熊本市国際交流振興事業団 八木 浩光 常務理事】
「騒然としていた。各避難所に行ったとき、日本語だけの情報なのが(外国人避難者にとっては)非常に不安で、ストレスを感じたと思う」
日本語教室などを開き、在留外国人を支援する熊本市の国際交流会館です。熊本地震の際には県内で唯一の外国人避難対応施設となり、1日に最大40人の外国人が避難しました。
国際交流会館では当時、多言語による情報発信をしていましたが、熊本県内全域で見ると「被災した外国人に必要な情報を届けられなかった」と指摘します。
こうした課題に対し、さまざまな対策が講じられています。
熊本県はホームページの多言語対応に加え、去年8月から、英語やベトナム語などの5つの外国語別のSNSを開設しました。旅行客の目にもつきやすく、在留外国人にとって身近なフェイスブックを使用し、災害時には、避難所への避難を呼びかけるなど必要な情報をそれぞれの言語で発信するということです。
また、地震や台風、火事などそれぞれの災害への防災対応について、多言語と分かりやすい日本語で書かれたパンフレットを掲載。ダウンロードすることもできます。
このほかにも熊本県内では、避難所で外国人対応に当たるスタッフの研修や観光地での避難訓練が英語で行われるなど平時からの備えの部分でも変化が生まれています。
八木さんは、「災害が起こってからでは遅い。普段の生活の中から、外国人と地域の住民がつながりを持ち、何かあったら助け合う『共助』の関係を築いておくことが大切」と話しています。