発達障害と診断される学生が増加している。課題は、学校での支援。障害に悩む学生と大学側の取り組みを取材した。

体調不良の原因『ADHD』と診断

「3週間で10キロくらい体重が急激に落ちてしまって、そのまま生活がうまくいかなくなった」。

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福岡市西区の九州大学伊都キャンパスで、4月から4年生となるミキさん(仮名)の学生生活は、これまで決して順風満帆ではなかった。

大学1年の途中で体調を崩し、殆ど授業に出られない状態になり、退学も頭をよぎったという。藁にも縋る思いで病院を受診。その結果、体調不良の根本の原因が『ADHD』であると分かったというのだ。

発達障害の1つであるADHD。ミキさんは、スケジュール管理や1つのことに集中することが苦手だ。「30分前のアラームで『あ、準備あったんだ』って思い出して、また準備する。それでも、その後忘れる時もあります」と話す。

高校卒業までは、特に困ることはなかったミキさん。大学では1日の予定を自分で管理することに苦戦した。生活や体調に異変が現れたという。

「高校の授業のようにルーティン化されていないものが凄く苦手。そこがストレスになったということは、大いにあると思っています」とその当時の状況を振り返る。

年々増加する発達障害を申告する学生

ミキさんは、ADHDと診断された現在、学校側に特性を申告した上で大学生活を送っている。

診断されて、正直なところは、安心したという。病院に行っても『あなたは支援を受けていい』って言われないかもしれないと心配だったのだ。『やっぱり私って支援を受けてもいいんだ』みたいな気持ちになれて安心したという。

ミキさんのように学校に発達障害を申告する学生の数は、社会的な理解が広がったことなどを背景に年々増加している。2024年は、全国で1万2000人近くに上り、10年前の4倍以上に増えた。

九州大学でも増加傾向で、2024年度は62人が申告。大学では、発達障害の学生に対して、課題の提出期限延長を認めたり、試験を課題で代替したり『合理的配慮』と呼ばれる取り組みを進めている。

九大『ピアサポーター』も学生支援

大学における『合理的配慮』とは、障害のある学生が他の学生と平等に教育を受ける権利を享受・行使できるよう、大学が必要かつ適切に行う変更や調整を指す。2016年4月に施行された『障害者差別解消法』などに基づき、大学に法的義務として課せられている。

『九州大学インクルージョン支援推進室』の脇浜幸則助教は、「発達障害が、学習面で障壁になっていることに気付いていなくて、何を調整したら勉強しやすくて、学習の機会が保障されるかということを学生自身も考えていく機会になっているのではないか」と語る。

また、九州大学では、学生の有志が、障害がある学生を支援する『ピア(仲間)サポーター』という取組みに力を入れている。発達障害のある学生をピアサポーターが支援する大学は、全国でも数少ない。週に1回ミーティングを行い、障害者支援に必要な知識を身につけている。

『ピアサポーター』
『ピアサポーター』

ミキさんも、ピアサポーターの支援を受けている。この日は、単位取得の振り返りや来年度の目標などについて確認することが目的。

サポーターの学生から「課題は大丈夫?」と聞かれると、「期限過ぎちゃって」とミキさんは正直に状況を説明する。「苦手なタイプの課題が、全然、出せなかったのが課題なんですけど。試験勉強ができるようになったのが大きかったと思う」。

ミキさんは、客観的に自分を見つめ、改善した点についても前向きに分析し、伝えることができた。「結構、大変でしたね。この課題の数」とピアサポーターの教育学部3年、深堀由倫香さんがミキさんの話を受け止める。

「自分自身の困っていることは、親しい人ほど言い辛い。それを相談できるっていう凄く有難い場になっていると思う」。ピアサポーターは、ミキさんにとって今では欠かせない存在になっているようだ。

ピアサポーターの活動に参加している法学部4年の古瀬健心さんもまた、活動に手応えを感じていると話す。「最初は『これを言って大丈夫かな』と変な気遣いをしてしまっていた。

自分たちもリラックスして話せるようになって、お互い笑顔で楽しく支援ができるようになってきたと感じています」。

「障害が理由で大学進学のハードルが高かった人もいるかもしれないが、サポート体制や配慮が受けられるのなら、大学に進もうと決断する人が増えているといい」と専門家である『鳴門教育大学発達臨床心理学』の小倉正義教授は語る。

発達障害を申告する学生の増加に伴い、現在では、私立大学を含む全ての大学が様々な支援を行っている。学生の学びの場が、平等に確保されるよう大学側の努力が求められる。

(テレビ西日本)

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