静岡を代表する農産品と言えばお茶やミカン、イチゴを思い浮かべる人が多いと思いますが、いまレモンを新たな特産品にしようという取り組みが広がりを見せています。
日照時間が全国トップクラスを誇る静岡。
1年を通して気候が温暖なこともあり、レモンの栽培に適していると言われています。
ただ、瀬戸内レモンで有名な広島や静岡と同じようにミカンが特産品となっている愛媛や和歌山と比べて収穫量に大きな開きがあるのが現状です。
県農産振興課・大橋ゆかりさん:
瀬戸内のあたりと比べると風が強く、少し病気になりやすい。雨も多いのでレモンの栽培が伸びてこなかった。レモンはミカンやイチゴと違い家庭でそのまま食べるものではなく、市場に出してスーパーで売られるというよりは、市場に出して加工するメーカーや企業へということが多いと思うが、その辺の連携・販路の確保ができてこなかったのが伸びてこなかった理由だと思う
こうした中、レモンを静岡の新たな特産品にしようという取り組みが始まっています。
レモンを通じた地域活性化を目指している小田庸介さん。
元々はフリーマガジンの編集長をしていましたが、5年前、未経験ながら農業の世界に飛び込みました。
きっかけは取材先でたまたまもらったレモンだったと振り返ります。
ワダイコ・小田庸介さん:
どうやって使おうか正直少し困ったところが当時あった。レモンが日常に結びついていないことを知るとともに、その時もらったレモンで作った塩レモンがとてもおいしかった。ビジネスとして何か立ち上げられたらおもしろいのではないかと当時考えた
静岡県静岡市葵区に自らの畑を構え、近隣の農家の協力も得ながらレモンの栽培に挑戦しているほか、駿河レモン堂というブランドを立ち上げ加工や販売にも注力。
これまでに、様々な料理の味を引き立ててくれる「塩レモン」とフレッシュな風味が特徴の「虹色レモンシロップ」の2つの商品を開発しました。
ワダイコ・小田庸介さん:
静岡県のレモン=駿河レモンという形で県外や世界に発信していく、商品を輸出していくことをしたい
静岡のレモンを多くの人に知ってもらい、消費量を増やしていくことを目的としているため、商品化にあたっては自身の畑で採れたものだけでなく他の農園で育てられたレモンも使用。
仮にB級品であっても農家に利益が残る価格で仕入れることを心がけています。
ワダイコ・小田庸介さん:
私がこのB級品を「この値段で買う」と言ったら、「A級品は倍ぐらいの金額で売らないといけないよな」という発想に自然となってくれると思うので、それを狙ってやっている
松永農園・松永信彦さん:
農家にとって一番苦手なのは、自分が作ったものを売っていくマーケティングが一番苦手。1世代・2世代の間、ずっと農協に頼りっぱなしで、売ってもらうことに慣れてるため、自分で売る努力をせずに済んでいた。自分で売るためには値段の交渉から設定まで全部やらないといけない。それが一番苦手。やらなくて済んでいたから
3月には6次産業化に向けたサイクルをより強固なものとするため、農家や加工業者などを巻き込み駿河レモン堂協同組合を設立。
現在のところ名を連ねる事業者は4つに留まりますが、今後取り組みの輪を広げていきたい考えです。
ワダイコ・小田洋介さん:
民間だけでは無理なので、農協や行政も巻き込んでいきながら、一緒に地元の名産品を育てていく形にしていけたらいい
一方、磐田市では県内を含む民間企業3社が設立した農業法人によるレモンの大規模栽培が始まりました。
LEMONITY・鈴木貴博 社長:
契約栽培の一歩先、サプライチェーン一体型ということで、(商品を)作る人も農業に関わり良いものを作っていく。農業にも最大限の利益、消費者にも最大限の利益。消費者に一番おいしく安価なものを届けられるように、というのが目的
活用するのは元々お茶を育てていた畑。
まずは4ヘクタールの畑で約2000本のレモンを育てるところから始め、今後は先端技術を駆使したスマート農業を取り入れるとともに、地域の農業高校や障害者支援施設なども巻き込みながら2035年には100ヘクタールまで拡大することを目指しています。
LEMONITY・鈴木貴博 社長:
磐田をレモンの産地に、とスタートしているので、農地が確保できればどんどん規模を拡大していきたいし、関係者を増やして農業をやって利益を出せるような作物に変えていきたいと思っているので、本当に1歩目だが、産地にできたらいいなと思う
ミカンやお茶のイメージが強い静岡にあってレモンが新たな“顔”となり得るのか…
安定した生産体制の構築はもちろん、行政や地域の下支えが成否のカギを握りそうです。