約28年前に福岡県が開発したものの、管理が難しく大量生産できないキノコを県と共同研究してブランド化に成功。味と歯ごたえはもちろん、見た目のインパクトも強めな『博多すぎたけ』の魅力を取材した。
全国で1カ所だけ“幻のキノコ”
訪ねたのは、キノコの産地として知られる福岡・大木町。

出迎えてくれたのは、28年前からキノコの生産を手掛ける『ドリームマッシュ』専務取締役の廣松真輔さん。

早速、キノコを栽培している場所に案内してもらうと、主力のブナシメジが所狭しと並んでいる。

「キノコは、温度と湿度が重要。凄く乾燥に弱いので温度管理としっかりとした湿度が大事で、ここは秋の森の中を再現しています」と廣松さんは語る。

1日2.5トンものシメジを出荷している廣松さんだが、実は、全国で廣松さんの会社でしか生産されていない「びっくりするキノコがある」という。

『幻のキノコ』― 扉の向こう側に案内されると、そこには、これまで見たことがないような見た目のキノコが生産されていた。名前は『ヌメリスギタケ』。廣松さんによると、「福岡県が約28年前に開発した品種」だという。
収穫も少量『博多すぎたけ』とは
全国で唯一、廣松さんの所でしか生産されていない『ヌメリスギタケ』。温度や湿度を最適の状態に調整した施設でも大量に生産することが難しいことから『幻のキノコ』と呼ばれている。
カサの方がナメコみたいな感じでトロみがあって、茎(柄)の方は、しっかり歯応えがあってエリンギみたいな感じ」と廣松さん。福岡県と共同で研究に取り組み、実に10年の時をかけて遂に商品化に成功。

ブランドキノコ、『博多すぎたけ』として販売にこぎつけたと話す。とは言っても収穫量は少ない。通常は1つの容器から収穫される量は、シメジだと300グラムほどになるが、『博多すぎたけ』は、わずか100グラムのみ。しかもカサが傷つきやすく繊細なため、収穫には細心の注意が必要だ。

「博多すぎたけは、全国で、うちしか作っていないので、いろんなことが初めての挑戦になる。生産と販売ですね。見た目に特徴があるので、そこが苦労しました」と振り返る廣松さん。

一般の人の目には、ブナシメジとほぼ同じ環境で育っているように思えるが、『博多すぎたけ』は、温度や湿度調整が難しい。

試行錯誤の末、ようやく辿り着いた栽培方法で、6年前から安定した生産ができるようになったという。

気になるのは、その味だ。廣松さんに美味しい食べ方を聞くと、お勧めは、「博多すぎたけとアスパラ、ベーコンのオイスターソース炒め」。

実際に食べてみると、カサの部分は、ぷるんとしていて、茎(柄)は、しっかりと弾力がある。1度に2度美味しい味わいが特徴だ。

廣松さんは「二刀流です」と笑顔で胸を張り、『博多すぎたけ』は、炊き込みご飯や味噌汁など、「どんな料理にも合う“万能キノコ”」だと胸を張る。

現在は、オンラインショップと道の駅で販売されている『博多すぎたけ』。徐々にその味と食感が知られるようになってきているが、認知されるまでには時間がかかったと廣松さんは話す。

「お客さんにメインのシメジを販売する中で、『博多すぎたけはどうですか?』と勧めていったところで、凄く興味を持たれる業者が増えていったので、そこが一つ、『博多すぎたけ』を増産できるタイミングになった」と廣松さんは語る。地道な営業が実を結び、国内のホテルはもちろん、3年前から香港や東南アジアなど海外の5つ星ホテルからも注文が入るようになった。

認知度が高まりつつある『博多すぎたけ』を生産する廣松さんには、新たな目標がある。「今は、国内需要が主ですが、海外からも少しずつ注文がきているので、アジアを中心にどんどん馴染んでいってほしい。大木町のキノコが世界中の皆さんに注目されるようにやっていきたい」。

味、そして食感の良さが広く認知されつつある『博多すぎたけ』。新たな福岡の特産品として、世界中で知られる日も、そう遠くはないはずだ。
(テレビ西日本)
