年々進む温暖化で、福島県の果樹栽培が岐路に立たされている。リンゴ栽培に100年以上携わってきた農家も「思うようなリンゴができなくなった」と苦悩。そんな中、気象予報士と共に東北での「柑橘栽培」という一大プロジェクトに挑む。
“フルーツ王国”を襲う温暖化
福島県では温暖化の影響が深刻化している。代表格のモモ“あかつき”は出荷時期が早まり、サクランボは実がくっついてしまう事例が増加するなど、「フルーツ王国」の果樹は岐路に立たされている。
そうした中、福島テレビの清野貴大気象予報士は、ある果樹に注目した。それはミカンなどの「柑橘」である。東北の福島県でも柑橘の栽培はできないものか、一大プロジェクトが始まった。
リンゴ農家が直面する現実
柑橘は暖かい地域で育つイメージがあるが、近年では新潟県佐渡市や茨城県筑西市でもミカンが栽培されている。
実は、福島市にも柑橘栽培を検討している人がいた。福島市のリンゴ農家・阿部幸弘さんである。阿部さんは、大正時代から100年以上続く「果樹園やまと」の3代目で、『全国りんごコンクール』で金賞を受賞したこともあるリンゴ栽培のスペシャリストだ。
その阿部さんは「実は震災以降から、なかなか思うようなリンゴができなくなってきた。原因は温暖化」と語る。
影響が顕著に出たのは2023年であった。農林水産省はリンゴ栽培の適地を、年間の平均気温が6~14℃の地域としている。しかし、福島市の近年の気象データを見ると、2023年から年間の平均気温が適地の基準を超える15℃以上を記録するようになっていた。
阿部さんは「とにかく夜温も高い。日中の温度も高いということで、早生品種ってほぼ全滅だった。形はリンゴの形になるけども、色がつかない、柔らかくなってしまう、果肉の味にも影響が出る」と窮状を訴える。
さらに、夏の日差しによる日焼けでリンゴの木肌はボロボロになり、気温上昇でこれまでいなかった害虫が生息するようになり、木が食べられる被害も出ていた。
こうした状況から、阿部さんはリンゴとは異なる柑橘の栽培を思いついたという。
気象予報士とタッグで挑戦
そこで、同じく福島での柑橘栽培に注目していた福島テレビの清野気象予報士が、阿部さんと共に挑戦することを提案し、快諾を得た。
しかし、冬は寒い福島で本当に栽培できるのかという不安が残る。柑橘栽培の最大の敵は「寒さ」である。
果樹栽培に詳しい福島大学の高田大輔准教授は「栽培条件を著しく下回る最低気温が1回でもあれば、対策をしないとその瞬間寒さで枯れる。商業的には、これをクリアしなければいけない」と指摘する。その一方で「とはいえ、凍害対策を含め、誰かがチャレンジせねばならないかもしれない」とも語った。
データが示す栽培の可能性
福島周辺で食用ミカンを栽培している新潟県佐渡市と茨城県つくば市の気象データを、清野気象予報士が考察した。
冬の最低気温を比較すると、対馬暖流の影響で冬でも暖かい佐渡がプラス2℃と最も高く、晴れて放射冷却が効きやすいつくばは氷点下1.7℃と最も低くなっている。福島は、佐渡よりは寒いものの、つくばよりは暖かいという結果であった。
ミカンが寒さに耐えうる温度は氷点下5℃とされている。氷点下5℃以下になる日は、つくばが関東平野の放射冷却の影響で福島より格段に多く、この点から見ると福島でも栽培は可能だと考えられる。
プロジェクトは次回、寒さに強くておいしい柑橘の苗を探しに新潟へ。栽培する品種を決定する予定。
(福島テレビ)
