中東情勢の緊迫化を受けた原油価格の高騰が、地方の現場を直撃している。秋田県内ではガソリン価格が一時、過去最高水準まで上昇。政府の補助金で値下がりに転じたものの、依然として高止まりが続き、重油を使う漁業の経営を大きく圧迫している。漁師からは「このままでは続けられない」との切実な声も上がっている。
原油供給不安でガソリン急騰 一時190円超
秋田県内のレギュラーガソリン価格は、2月から3月初めにかけて1リットル当たり155~160円台で推移していた。

しかし、現地時間2月28日にアメリカとイスラエルがイランを軍事攻撃したことで状況は一変した。原油輸送の要衝・ホルムズ海峡が事実上封鎖状態となり、原油供給への不安が一気に高まった。
この影響で、県内の平均小売価格は3月16日時点で190.8円と過去最高を更新。その後、政府の補助金が反映され、23日時点では181.1円まで下がったが、依然として高い水準が続いている。

石油情報センターは「30日以降も値下がりが続き、2週間ほどで全国平均が170円台に下がる見通し」としている。
直売所も価格転嫁できず不安募る
燃料高騰の影響は、生活に身近な水産物の現場にも及んでいる。
秋田県漁協が運営するにかほ市の直売所では、タコやアンコウ、イワシなど旬の魚が並ぶ一方で、今後のコスト増を懸念する声が聞かれた。
冷蔵ケースや製氷機を動かすための電気代、魚の輸送費など、燃料価格に直結する経費の上昇が見込まれているが、価格転嫁は簡単ではない。
県漁協金浦物産センターの齋藤重樹店長は「見通しがきかず、何とも言えない。コストが上がっても価格転嫁はできないと思う。魚の単価を上げるとなると、お客さんに申し訳ない気持ちがある」と表情を曇らせる。
重油13円超値上げ 漁師「大赤字」
より深刻なのが、燃料を大量に消費する漁業の現場だ。
にかほ市の金浦漁港を拠点に沖合で底引き網漁を営む佐藤正勝さんの漁船は、重油を使用している。
佐藤さんによると、重油価格は3月10日時点で1リットル119円だったが、26日から132.5円に値上がりするとの通知を受けた。値上げ幅は13.5円。
燃料タンクの容量は1600リットルで、3~5日に一度給油するため、1日の漁あたりの燃料費は1万円近く増える計算だ。
佐藤さんは「完全に大赤字。この事業を続けていけるのかどうか分からない。ハタハタもいなくなっていて、かなり深刻な問題」と危機感を募らせる。
燃料節約で漁場縮小へ 漁獲減は避けられず
佐藤さんはこれまで、男鹿市沖から山形県との県境付近まで広い範囲で操業してきた。しかし、燃料費の高騰を受け、今後は漁場を狭めることも検討せざるを得ないという。
「遠くまで行くのは、そこに魚がいるから。近場にいれば何の問題もないが、魚が取れるかどうかは行ってみないと分からない」と話す佐藤さん。燃料を節約すればするほど、漁獲量が減る可能性が高まるというジレンマに直面している。
出漁4回の冬を越え 安定供給を切望
この冬はしけが続き、2025年12月から2026年2月までの3カ月間で、佐藤さんが漁に出られたのはわずか4回だった。冬場に落ち込んだ収入を取り戻そうとした矢先、追い打ちをかけるような燃料高騰だった。
「頑張りたい気持ちはあるが、経費ばかり増えていく。重油の価格がこれ以上上がるのは本当に厳しい」と佐藤さんは話す。一日も早く中東情勢が落ち着き、原油が安定して供給されることを願うしかない。
政府はガソリン以外の石油製品にも補助を行う方針だが、競りで決まる魚の価格はすぐには上がらず、現場の苦境は続きそうだ。
(秋田テレビ)
