世界で高まる抹茶ブームを背景に、鹿児島県が茶産地としての存在感をさらに高めようとしている。JAグループ鹿児島は3月23日に記者会見を開き、建設費26億円をかけた県内最大規模の抹茶生産施設を鹿児島市に新設する方針を明らかにした。一方で、中東情勢による農業コストへの影響や、指宿市での牛肉不適正表示問題がもたらす風評被害への懸念も示された。
「今一番はアメリカ」――年間300トン規模の抹茶施設を建設
県経済連の柚木弘文会長は会見で、「世界的な抹茶ブームでもありますので、今一番はアメリカ」と輸出への期待を語った。新設される施設は、年間300トンの抹茶生産が可能な県内最大規模のものとなる予定で、2027年11月の完成を目指している。建設費は26億円が見込まれており、かごしま茶ブランドの確立・強化に向けた中核的な拠点として位置づけられる。

抹茶はここ数年、スイーツや飲料への活用を通じて欧米を中心に人気が急拡大している。鹿児島県はもともと国内有数の茶産地であり、この世界的な潮流を生産体制の強化につなげる狙いだ。輸出先として特にアメリカ市場が注目されており、今回の施設建設はその需要に応えるための具体的な一手となる。

中東情勢が農業に影を落とす――燃料・輸送費の高騰に懸念
一方、明るい話題だけではない。柚木会長は中東情勢が農業分野に与える影響にも言及し、「一番影響があるのが燃料だと思っている。状況を把握しながら適宜にその対策を講じていきたい」と述べた。
具体的には、肥料を例に挙げ、海上輸送費の高騰がさらなるコスト上昇を招いているとして、すでに現場レベルで影響が出始めていることを認めた。資源価格の動向については引き続き注視し、適切な対応策を検討していく考えを示している。

農業は燃料や肥料などの輸入資材に依存する部分が大きく、国際情勢の変動が生産コストに直結しやすい。鹿児島県の農家にとっても、遠い中東の情勢が身近な経営問題として迫ってきている現状がある。
牛肉の不適正表示問題――「一瞬で信用失墜」ブランドへの打撃
また、JA県中央会の山野徹会長は、指宿市の水迫畜産が牛肉商品において牛の種類・原産地・個体識別番号に関する不適正な表示を行っていた問題について言及し、県内産の他の牛肉への風評被害が広がることへの強い懸念を示した。
山野会長は「今まで鹿児島の和牛として築きあげてきたことが一瞬で信用失墜というか、残念なことなので原因を究明して、頑張っていかなければならない」と語り、長年かけて積み上げてきたブランドイメージが傷つくことへの危機感をあらわにした。

鹿児島の和牛は全国的にも高い評価を受けており、その信頼は生産者たちの地道な努力によって支えられてきた。今回の問題について原因究明と再発防止に向けた取り組みが急務となっている。
前進と課題が交錯する鹿児島農業の今
今回の記者会見では、抹茶施設の新設というポジティブなニュースと、コスト高騰や不適正表示問題という課題が同時に浮き彫りになった。世界市場へ打って出る攻めの姿勢を示す一方で、足元のリスクへの対応も求められている。JAグループ鹿児島が鹿児島ブランドの信頼をいかに守り育てていくか、地域農業の行方が注目される。
(動画で見る▶「かごしま抹茶」大型投資26億円で加工施設建設へ 年300トン体制で米国を狙う )
