2026年度予算案をめぐっては、3月13日、野党側が異例の審議時間の短さなどを理由に反対する中、年度内成立を目指す政府与党は、衆院予算委員会と衆院本会議での採決に踏み切った。高市政権と、これまで秋波を送ってきた国民民主党との亀裂が深まったことは間違いない。

衆院選で歴史的大勝を果たした高市政権だが、いまだ参院での与党過半数割れという状況は続いており、今後の政権運営に影響を与える可能性もある。国民民主党の高市政権に対する不信感、そして今後の向き合い方などについて、関係者への取材を通じて迫った。

国民民主・玉木代表「おかしいという感じは世論調査で出ている」

「長い目で見た時に、謙虚でやるところは謙虚にやらないと、力で押し切ってしまってよいところとよくないところがある。大きな力を持ったがゆえに、少数者の意見、少数者に託された国民の意見を丁寧に聞くことをぜひ求めたい」

高市政権について苦言を呈した玉木代表(3月17日)
高市政権について苦言を呈した玉木代表(3月17日)
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予算案の衆院通過から4日後、記者会見で高市政権についてこう苦言を呈したのは国民民主党の玉木代表だ。そして、「やはりちょっとおかしいのではないかという感じは週末の世論調査でも出てきている」と指摘した。

高市政権の支持率(FNN世論調査)
高市政権の支持率(FNN世論調査)

FNNが14・15両日に実施した世論調査では、高市内閣の支持率は67.1%。依然として高水準ではあるが、2月調査の72.0%から4.9ポイント下落し、2025年10月の政権発足以来初めて60%台となった。

また、世論調査では2026年度予算案について、「審議時間を削っても年度内の予算成立を目指すべきだ」と考える人は全体の48.1%に対し、「予算成立が年度をまたぐとしても審議時間を削るべきでない」と考える人は47.2%で拮抗している。

国民民主は16日採決を提案するも政府与党は

予算案が衆院を通過する3日前の10日、自民党の鈴木幹事長は国会内で、国民民主党の榛葉幹事長と会談し、早期成立に協力を要請した。これに対し、榛葉氏は与党が目指す13日の衆院通過に「協力することは難しい」との考えを伝えた。さらに翌11日、榛葉氏は鈴木氏に対し、週明け16日の衆院通過なら採決で賛成する意向を伝えた。

採決の決定前に、筆者の取材に対し、国民民主党の幹部は「与党側が16日の採決を受け入れるかはまだ分からない。ただ、受け入れられない場合には、金輪際、協力はしない」と強気の姿勢を見せていた。しかし、与党側はこの提案を受け入れず、13日の採決に踏み切った。

榛葉氏(3月13日)
榛葉氏(3月13日)

衆院での採決を控えた13日の記者会見で、榛葉氏は「強引な強行採決ではなくて週をまたいだらどうか、それだったら賛成できるという提案をさせていただいた。これをも飲まずに衆院では強行ということで、残念ながら予算には反対」と述べた。そして、「よいパスを出したつもりだ」として、提案した理由について次のように説明した。

「過去最速が66時間だ。最強与党で過去最大の予算だからこそ丁寧に審議をしなければダメだ。今、衆院59時間だ。あと1日やったら66時間を超える。高市内閣は強いだけではなく、強くて丁寧で優しい内閣だ、おごった運営ではない、多くの審議をやり与党・野党の声をしっかり聞いたということが後世に伝わっていくことが大事だ」

玉木代表16日の衆院採決「一石三鳥なのに官邸が拒否」

採決がなぜ13日では反対で、16日なら賛成だったのか。国民民主党がこだわった理由は審議時間だけだったのか。

採決の翌日、玉木代表は自身のSNSに投稿し、「一見、日程闘争に見えるかもしれないが、実はそうではない」として、次のように説明した。

「16日以降の採決を提案したのは、それが高市内閣にとっても、国民生活にとっても一石三鳥だと考えたからだ」

そして、玉木代表は「高市内閣にとってのメリット」として3点、挙げた。

まず、審議時間について、「あと1日審議を行えば、過去最短の66.5時間に並ぶため、国会軽視の批判を避けられる」と指摘。

2点目として、「年度内成立にこだわらず暫定予算案を編成すれば、そこにイラン情勢に対応した対策を盛り込め、4月1日から執行可能だ」とつづった。

最後に、3点目として、「国民民主党の協力」を挙げ、2026年度予算案の賛成にとどまらないとして、次のように強調した。

「再来年度以降の予算や憲法改正、皇位継承問題といった『国論を二分する』政策への協力も視野に入る。参院で与野党の議席数が拮抗する中、我が党の協力は『政治の安定』に小さくない意義を持つ」

その上で、「まさに一石三鳥なのに、官邸はそれを拒否した」と断じ、高市首相に対しては、「どうかメンツではなく国民生活最優先の政治を進めていただきたい」と求めた。

「壁を取っ払うのがお好きな御党に巻き込まれながら…」と発言(3月3日)
「壁を取っ払うのがお好きな御党に巻き込まれながら…」と発言(3月3日)

また、高市首相のある国会答弁にも言及し、「大きな違和感を覚えたが、この間の予算案採決をめぐるやり取りは、その違和感をさらに大きくした」と不快感を示した。

玉木氏の指摘した「大きな違和感を覚えた」国会答弁とは何か。それは衆院予算委員会で3日、国民民主党所属議員の質問に対し、高市首相が「壁を取っ払うのがお好きな御党に巻き込まれながら」と発言したことだ。

その日の夜、玉木氏は自身のSNSに投稿し、次のように苦言を呈した。

「高市首相は一緒に『壁を取っ払う側』の仲間だと思っていたが、すっかり『壁を守る側』になられたのか」

そして、「『年収の壁』を動かしたことは、自民党の公約集の1ページ目にも実績として高らかに掲げられている。冗談で言われたのだと思うが、残念だ」とした上で、次のように続けた。

「首相、官邸の壁の中から、納税者の顔は見えているか」

高市首相の発言について、ある幹部は「あまりにも失礼だ。選挙に勝ったことで慢心しているのではないか」と不快感を示す。

幹部の苦悩「衆院解散で崩れた信頼関係、再構築目指すも」

「きょう(13日)深夜までやるのであれば、月曜日(16日)に参院の委員会をどうするか。月曜日中の明るいうちにしっかり(質問)通告をして、その答弁を役人の皆さんが作って火曜日(17日)から委員会をやるというのがどう見ても常識的だ。まさか野党第1党がこれを認めることは常識的にはないので、しっかり火曜日から審議を積み上げていきたい」

先述の13日の会見で、榛葉氏は参院での16日審議入りについて、閣僚らの答弁資料作成にあたる官僚の負担に言及し、「参院の野党第1党の立憲民主党の斎藤国対委員長も当然、飲まないと思う」と強調した。

立憲・斎藤国対委員長と自民・磯崎参院国対委員長(3月13日)
立憲・斎藤国対委員長と自民・磯崎参院国対委員長(3月13日)

しかし、この発言から時間を置かず、自民党の磯崎参院国会対策委員長と立憲民主党の斎藤国会対策委員長が16・17両日に高市首相が出席する基本的質疑、18日にも高市首相出席の一般質疑を行うことで合意した。

合意に至った理由について、斎藤氏は記者団に対し、「参院側では、例年の例にならって充実した審議を行うという約束を明確にいただいた」と説明した。

これに対し、国民民主党のある幹部は「ありえない。衆院で職権連発の委員会運営、そして数の力による強行採決、それなのに参院では何ですぐに審議に入るのか。与党も与党だが、立憲民主党も立憲民主党だ」と怒り心頭に発する。

2024年の衆院選での与党過半数割れを受けて、国民民主党は自らが掲げた「年収103万円の壁」引き上げなどを実現することで存在感を高め、党勢拡大を進めてきた。2025年12月、「年収の壁」の178万円への引き上げなどで、自民党と合意し、予算案の年度内成立に向けた協力を約束した。しかし、その後、高市首相が衆院の解散に踏み切ったため、協力を再考する考えを示していた。幹部の1人は「衆院を解散されたことで高市政権との信頼関係が崩れた。もう一度、信頼関係を築き直すため、16日の採決を提案した。しかし、それも拒否された」と苦しい胸の内を漏らす。

先述の会見で、玉木代表は予算案に反対した理由について、「審議のあり方は財政民主主義の観点からもおかしい。参政党やチームみらい、比較的これまで政権に協力的だったところまで大反対した。それは瑕疵がある」などと説明する一方、次のように言及もしている。

「我々は予算案には反対したが、関連する法案には全部、賛成している。ある意味、316議席、自民党が取っている以上、参院でどうなろうと、予算案に関しては衆院の優越があるから通る。問題は優越が必ずしも認められていない特例公債法案、税制を我が党がどう判断するかで、国政を前に円滑に進めるという意味では重要だ。これに関しては賛成を全部している。我々は衆と参で賛否は変えない。我々のある種の政権の向き合い方を理解いただきたい」

そして、「思い切りパスを出したが、なかなかパスがパスと認識されずゴールしていただけなかった。そこはちょっと残念だという気がする。我々は常に対決より解決、政策本位だ」と強調した。

参院では与党が過半数割れしており、高市政権が目指す年度内成立は不透明な状況が続いている。さらに、玉木氏が言及した「国論を二分する政策への協力」の可能性など、国民民主党と高市政権、今後も両者の距離感は注目を集めそうだ。
(フジテレビ政治部 野党担当キャップ 木村大久)

木村 大久
木村 大久

フジテレビ政治部(野党担当キャップ・防衛省担当)、元FNN北京支局