従来の「紙・プラスチックの健康保険証」が“完全廃止”されてから3カ月。
保険診療を受けるためには、「マイナ保険証」か「資格確認書」を利用することになるが、政府は混乱を避けるため、今月末まで暫定的に「期限切れの健康保険証」などの利用を認めていた。
あくまで期間限定だったはずだが…
大阪府保険医協会の最新調査によると、「期限切れの健康保険証」など“暫定措置”での対応を経験した医療機関は8割にものぼるという。
そして19日、上野賢一郎厚生労働大臣は、この暫定措置を3月末から7月末まで延長すると明らかにした。
予想通りの現場の混乱を受けてなのか―。
しかし、これにより、さらなる混乱が懸念されるという。
調査を担当した大阪府保険医協会の坂元いづみさんに詳しく聞いた。
■8割の医療機関が経験した「暫定措置」対応
【大阪府保険医協会 坂元いづみさん】
去年12月2日に健康保険証が「完全廃止」されたことを受けて、大阪府保険医協会ではマイナ保険証の利用状況について調査を実施し、620件を超える医療機関から回答を得ました。
健康保険証廃止後の混乱を避けるため、政府は「期限切れの保険証」や、マイナ保険証を登録した人に送られる「資格情報のお知らせ」だけでの受診も可能とする暫定措置を期間限定でとっています。
調査の結果、去年12月からの2カ月で、医療機関の8割がこの「暫定措置」による対応を経験していたことが分かりました。
多かったのが「資格情報のお知らせ」を“健康保険証の替わり”だと勘違いしているケースです。
本来、「資格情報のお知らせ」は、マイナ保険証とセットで持ち歩き、マイナ保険証をリーダーにかざしても情報が表示されない時などに補助的に利用するもので、単独で保険診療を受けることはできません。
従来の健康保険証の替わりに、マイナ保険証を登録していない人や後期高齢者に配布されたのは「資格確認書」です。
「資格確認書」と「資格情報のお知らせ」。この2つは名称や大きさ(カードサイズ)が似ているため、多くの方が混同している実態が明らかになりました。
また、社会保険(社保)の方で多かったのが「有効期限切れに気づかなかった」ケースです。
もともと社保に有効期限はありません。退職や転職がなければそのまま使い続けます。
健康保険証の有効期限が切れるということを知らずにそのまま受診しようとしたケースが多数、報告にあがりました。
ほかにも、これまで持ち歩いていた「健康保険証」を「マイナ保険証」もしくは「資格確認書」と入れ替えるのをうっかり忘れてしまっていたケースも多かったようです。
■国のアナウンス不足は否めない…
マイナ保険証や資格確認書について、現在もよく分かっていない人が数多くいるのが現状です。
「自分がマイナ保険証の登録をしているのか、資格確認書が届いているのか把握していない」、「『資格情報のお知らせ』が『保険証の替わり』だと勘違いして単独で持ち歩いている」人は非常に多くいらっしゃいます。
高齢の方だけでなく、現役世代や子育て中の若い方が有効期限切れを知らなかったという例も少なくありません。
「従来の健康保険証を廃止する」という、すべての人に大きく関わることを始めた以上、全員が正しく理解できるまで周知徹底させるのは、国の責任ではないかと思います。
政府は今月末で「期限切れの健康保険証が利用できる」などの暫定措置を終了するとしていましたが、土壇場になって一転、3月末から7月末までへの延長を明らかにしました。
しかしこれはさらなる混乱を引き起こしかねません。
4月から新年度を迎え、引っ越しや就職などで「資格情報」が変わる人は大勢います。
期限切れの紙・プラスチックの保険証に記載されている「資格情報」は古いものです。
古い誤った資格情報で受付をしてしまったら、その後、医療現場に混乱が起こるのは必至です。
行き当たりばったりの政策が、大きなトラブルを招こうとしているのです。
医療現場と患者にこれ以上の負担と混乱をもたらさないために、国は周知活動を強めると同時に、資格確認書の全員配布といった対応も早急に検討していただきたいです。
(大阪府保険医協会 坂元いづみさん)