イランとアメリカの軍事衝突が激化し、ペルシャ湾の出口にあたるホルムズ海峡が事実上封鎖されています。

世界の原油生産のおよそ3割を占める中東からのエネルギー輸送ルートが遮断されたことで、日本の生活・産業に広範な影響が及び始めました。

関西テレビ「newsランナー」が関西各地を徹底取材しました。

■「名神を通り越して渋滞を起こした」駆け込み給油が示す不安の深さ

尼崎市内のガソリンスタンドでは、3月初めに1リットル140円台だったレギュラーガソリンが、わずか数週間で180円台へと跳ね上がりました。

値上がり前に給油しようとする“駆け込み客”が殺到し、隣接する名神高速道路まで渋滞が伸びたといいます。

同店の立石久美子店長代理は「名神の高速が見えるが、あっち(高速)も通り越して、渋滞を起こしていた」と振り返ります。

政府は3月19日の出荷分から、ガソリン価格を1リットルあたり170円程度に抑える補助措置を実施する方針を示しました。あわせて民間事業者の備蓄を3月16日から15日分放出し、その後は国家備蓄を1カ月分放出するとしています。

立石店長代理は「高くなれば車の需要が少なくなって、お客さんが減るんじゃないか」といいます。補助措置が需要の冷え込みと収益悪化をどこまで食い止められるかは、不透明です。

■「クリーニング屋さんっていつも我慢している」地域商売を直撃する複合コスト

大阪市内のクリーニング店では、ドライクリーニングに使う石油系溶剤の価格が現在1リットルあたり350円。

「ガソリンが上がるにつれて、これも一緒に上がっていきます。100円とか上がったらちょっと厳しい」と、クリーニングコージーの益田浩二社長は表情を曇らせます。

溶剤だけでなく、ボイラーで使うガス、機械を動かす電気、プラスチックのハンガーや包装カバーといった石油由来製品がすべて値上がりする構図です。

にもかかわらず、値上げに踏み切れない理由を益田社長はこう語ります。

「地域商売じゃないですか、クリーニング屋さんって。近くのお客さんが1人来られなくなったら、その分の売り上げがなくなってしまう」。

生活圏密着型の小規模事業者が、エネルギーコストの上昇と価格転嫁の難しさという二重のしわ寄せを受けている実態があります。

■「米不足も考えられないことはない」食卓を揺るがす農業への打撃

昨年、日本列島を騒然とさせた“米騒動”の再来を懸念する声が農家から上がっています。

京田辺市で45年にわたり稲作に従事する松井雅彦さん(68)は、1シーズンで耕運機、コンバイン、もみ乾燥ヒーターなどに合計1,800リットルの灯油・ガソリン・軽油を使うといいます。

「燃料代プラス肥料代、非常に高くなるかなと思っています。赤字になるか黒字になるか、厳しいところですね」と松井さんは語ります。

海外から輸入する肥料代もホルムズ情勢の影響で高騰しており、状況が悪化すれば米の生産を縮小する農家が出てくる可能性もあります。

【米生産者 松井雅彦さん】「すべての経費が高くなってくるので、お米の値段も今よりは場合によっては高くなる。米不足も考えられないことはない」

■「オイルショックだと思っています」ナフサ不足がプラスチック産業を直撃

原油高騰の影響は食品・エネルギーにとどまりません。

原油を蒸留して得られる「ナフサ」は、プラスチック製品の原料となるエチレンの素材であり、その輸入の多くを中東に頼っています。

ホルムズ海峡の封鎖によって、ナフサの調達難が現実味を帯びてきたことから、大阪に工場を持つ三井化学などは先週、エチレンの減産に踏み切りました。

和歌山県内の工場で、卵のパックなどに使うプラスチックシートを製造するRP東プラでは、ホルムズ海峡封鎖を受けて原材料価格が約4割上昇したといいます。

RP東プラ和歌山工場の大塚浩二事業所長は「ここ2~3カ月に関しましては、(在庫で)生産可能なんですが、場合によっては我々の生産ラインがストップするなどの影響が出てくる」と警戒感を示します。

特に春先は食品の新製品発売が相次ぎ、プラスチック需要が高まる季節です。

政府の石油備蓄放出が、化学製品向けにどれだけ回るかも見通せないなか、調達部門の担当者は率直に言葉を絞り出します。

【RP東プラ・田辺一世調達部長】「ここまで高くなったのはほぼ初めてじゃないかなというのは感じています。これが長期化すれば、自分で鍋を持って、昔のように豆腐を買いに行くようなことになってくるのかなと。オイルショックだと思っています」

■「船員たちが頑張って物資を届けようとしている」命がけで海峡を行き交う商船

ホルムズ海峡はペルシャ湾と外洋を結ぶ唯一の出口であり、世界の原油生産の約3割が通過する要衝です。

イランの新たな最高指導者モジタバ師は3月12日の声明で「敵へ圧力をかける手段として、ホルムズ海峡を封鎖し続けるべき」と宣言しており、封鎖の長期化が現実的なリスクとなっています。

現時点でペルシャ湾内には、日本関係の船舶が45隻足止めになっており、アメリカメディアはイランが海峡に機雷を設置する準備を進めていると報じています。

自身もホルムズ海峡を航行した経験を持つ日本船主協会の平尾真二常務理事は、乗組員の心理的負担を最も心配すると言います。

「機雷が除去されたといったときに、本当に機雷が完全に除去されているのかと。それから、空から何か降ってこないかと。最初の間はそういったことを心配しながら通らなければいけないので、かなりストレスがある」。

そのうえで平尾理事はこう付け加えました。

「そんな中でも頑張って、日本へ物資を届けようと、船員たちが船を動かしているんだということを理解していただけると、我々としてもまたやりがいが出てくるのではないかと感じております」。

経済問題として語られがちなこの危機の裏には、危険を冒して海峡を渡り続ける人々の存在があります。

■「燃油サーチャージ引き上げの可能性」航空インフラへの波及も

原油高騰の影響は空の交通にも及んでいます。

関西空港では現状、航空機用燃料の供給そのものが途絶える事態には至っていないものの、中東向け航空便はすでに欠航が出ています。

日本航空によると、原油高騰が続いた場合には、航空券に上乗せされる燃油サーチャージの引き上げが検討されるといいます。

中東へのルート変更を余儀なくされた航空会社は、より多くの燃料を消費せざるを得ず、コスト増が利用者に転嫁される形になりかねない事態となっています。

■日米首脳会談のゆくえ「早くやめてほしい、それをどれだけ伝えられるか」

19日(日本時間20日)に予定される日米首脳会談について、政治ジャーナリストの青山和弘氏はスタジオでその複雑な構図を解説しました。

【青山和弘氏】「この首脳会談は、日中関係が緊張しているので、米中首脳会談の前にトランプ大統領が中国と日本の頭越しにディール(=取引)しないで』と言いに行くことが最大の目的でした」

しかしイラン情勢の急激な悪化により、状況は一変していることから、「今トランプさんの頭の中はイラン問題でいっぱいだと思う」と青山氏。

日本側が中国問題での協力を求める一方、アメリカ側からは「イラン攻撃への支持表明や自衛隊の艦船派遣、機雷敷設に対応する掃海作業への協力などが求められる可能性がある」と青山氏は話します。

【青山和弘氏】「日本の自衛隊は戦争中の戦地に行かないというのが、戦後80年間の不文律。存立危機事態の認定もかなりハードルが高い。

どれだけ高市さんがトランプさんに寄り添おうとするのか。それ次第では、さらなる困難に日本が直面することもある」

さらに、日本はイランとの関係を伝統的に良好に保ってきたという外交的背景もあります。

【青山和弘氏】「国際法違反と言われている今回のイランへの攻撃を簡単に支持するとは言えず、高市さんの手腕が問われる。『早く(イランへの攻撃を)やめてほしい』とトランプ大統領にきちんと話をできるかがポイントだと思います」

(関西テレビ「newsランナー」2026年3月16日放送)

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