県外から長野県東御市に移住してジビエの飲食店をオープンさせた男性がいます。猟師として捕獲した有害鳥獣を使ってジビエ料理を作り、「地域の味に」と奮闘しています。また、猟師の担い手不足など地域の課題にも向き合い、次の世代につなげたいと意気込んでいます。

■ジビエ料理店をオープン

だしを使って作った自慢のカレーに。焼いた肉をタレに漬け込んだ丼も。これらの料理に使われている肉は全て東御市内で捕れたシカやイノシシの肉「ジビエ」です。

猪丼定食を注文した客:
「初めてだけど、結構肉々しい。普通の牛とか豚とはまた違ううまみがある」

2026年1月、東御市にオープンしたジビエ料理店「山肉料理ふくふく亭」。一人で店を切り盛りするのは、福島俊治さんです。

ふくふく亭・福島俊治さん:
「こんな感じでちょっとピンク色で」
「基本的にイノシシとシカは1年中、東御市内で捕獲したジビエです」

■金融マンから「猟師」「店主」へ

福島さんは埼玉県出身の46歳。30歳のころ、勤めていた金融機関の転勤で長野県内の支店へ。信州の自然に触れ、暮らすうちに移住を考えるようになり、5年前に東御市に移住。

そして、2025年5月、23年務めた金融機関を退職し、2026年1月、ジビエ料理の飲食店を始めました。

福島俊治さん:
「地域で捕れた有害鳥獣、捕獲されたシカとイノシシを自分のところのお店でまずは出して、地域の食材として慣れ親しんでいただく1つの拠点みたいなイメージで始めました」

ところで、なぜ、ジビエの料理店だったのか?

福島俊治さん:
「アウトドアの趣味が多くて、アウトドアをやっている中で一つの方向性として狩猟っていうのは興味あったんです。ただ、なかなかハードルは高かったですよね、狩猟免許を取るとか」

実は福島さん、狩猟の免許を持った猟師です。アウトドアが好きで、信州の自然に触れる中で狩猟に興味を持ち、免許を取得。

今は東御市の猟友会に所属し、銃やわなを使って有害鳥獣の駆除を行っています。

福島俊治さん:
「獣道を探して、ここは絶対に毎日通っているはずだよな、きのう通ったよなとか、新しい痕跡を探すとかっていうのも非常に楽しいです」


■DIYで解体処理施設も

福島さんが始めたのはもう1つ。

福島俊治さん:
「こちらが解体施設で、ジビエ処理加工施設。多分、大きさとしては日本で一番小さいくらいの大きさで中古のユニットハウスを使って建てました」

店の隣に自分で作った「解体処理施設」です。約250万円かけて整備し、営業許可も取得。捕獲したシカやイノシシはここで処理しています。

福島俊治さん:
「いっぺんに作業できないので、1頭ずつ作業するにはこのぐらいのスペースがあれば十分できるという感じ」

解体処理した肉は、冷蔵庫で1週間ほど寝かせ、熟成させます。

福島俊治さん:
「ちょうど1週間前に捕獲したイノシシのモモ肉、両足ですね。熟成するようになってから肉のうまみは増したような感じがするし、やわらかい感じがします」

■命を無駄にしない調理法

料理では、肉だけでなく骨も使っています。

福島俊治さん:
「いただいた命なので余すとこなく使いたい。独特の癖が強いのでフードドライヤーで10時間くらい熱風乾燥させて臭みを取る。これはイノシシの背骨ですね」

イノシシの骨とタマネギを使い、料理のだしとして使うコンソメスープを作ります。

弱火でタマネギと共に10時間煮込む―。

福島俊治さん:
「出来上がったスープ自体が、あっさりしているってびっくりされるんですよね。自然の恵みのこのだしを使うっていうのが、ふくふく亭の1つの柱になっている」

■狩猟仲間も認める処理技術

時間をかけて丁寧に取っただしや熟成させた肉を使い、定食や焼肉など、豊富なメニューが並びます。

福島俊治さん:
「お待たせいたしました。カレー定食です」

この日はランチ営業になじみの客が訪れました。

客:
「おいしいよ。本当にシカのカレーだよって言われなきゃ分からない」

客:
「きちんと血を抜いたり、処理の仕方、そういうものをちゃんと熟知しているからよく処理できているんじゃないでしょうか」

■猟師の担い手不足が課題

実はこちらの2人、東御市の猟友会に所属する福島さんの狩猟仲間です。

猟師歴30年:
「もうやめたいって人も結構いるからかなり減るんじゃないかなと思う。私もいつまでもできるわけじゃないから」

猟師歴1年:
「私も山よりもかなり下のところで農業をやっていますが、結構、獣が入ってきている。どこかで防波堤みたいな役割をする人たちがいなきゃいけない」

東御市猟友会によると、地域の高齢化に伴い耕作放棄地が増えて、山と人里との境界が曖昧となり、有害鳥獣の出没が増えているといいます。また、猟師の高齢化や担い手不足も課題です。

■地域の味に 技を次世代へ

猟師として有害鳥獣を捕獲し、それを加工して料理に出す福島さんの取り組みは、地域の課題解決にもつながるほか、次の世代への継承も意識しています。

ふくふく亭・福島俊治さん:
「地域の食材として地域の方に親しんでいただく拠点として、一つ役割があるのかなと思う。もう一つは、これ非常に重要だと思っていて、ベテランの猟師さんの技の継承。狩猟の技とか解体の技とかいろいろあると思うんですけど、それを承継していく。そして次世代の猟師さんにつないでいく役割があるのかなと思います」

長野放送
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