プロボクシングの元世界チャンピオン重岡 優大さんが2月、熊本市内にカフェをオープンしました。世界の強敵と戦ってきたその手で、今度は温かなコーヒーを提供します。決断の裏にはともにボクシングの道を歩んできた弟、銀次朗さんと家族への思いが…。世界王者が歩む第2の人生、そのスタートを追いました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「ボクシングのとき応援してくれてた熊本の方々への僕なりの恩返しというか。心を込めて(朝)『いってらっしゃい』と『きょうも一日頑張りましょう』としてあげられたらいいなと」
プロボクシングの元WBC世界ミニマム級チャンピオン・重岡 優大さん。引退後に選んだ道はカフェの経営です。
開店準備が進む中、ラテアートを描く表情はリング上よりもいくぶん柔らかくなったように感じます。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「ボクシングだったら『どうだい、俺のボクシング?』って言えるんですけど。コーヒーは(小声で)『どうですか?』って。(まだ恐る恐る?)自分でもまだまだなのが分かっているからなんですよね」
熊本市に生まれ、弟の銀次朗さんとともに兄弟で世界チャンピオンの夢をかなえた優大さん。さらなる飛躍を期待されていましたが、去年5月、思わぬアクシデントが兄弟を襲いました。
銀次朗さんが世界戦で頭部にダメージを負い、急性硬膜下血腫を発症。開頭手術の末、一命は取り留めましたが、県内の病院で今も懸命のリハビリを続けています。
優大さんは弟を支えるために去年夏、『引退』という道を選びました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「弟のことを思い出すときはしょっちゅうありますし、そのときは悔しいですよ。ずっと悔しいし。お前がもし退院しても、俺は変わらず、ずっと横にいるし。『だからお前は今やること、やれることを全力でやるんだよ』って。うなずいて聞いてますし、こうしたり、こうやって握手を求めてくるので握手して『頑張ろうぜ』って言って」
元々コーヒー好きだった優大さん。「将来的な弟の居場所を作りたい」とカフェのOPENを決意。畑違いの道に不安もありましたが、兄弟で歩んでいこうと一歩を踏み出しました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「何をするにしても僕の近くには銀がいないと多分、僕のスイッチもどこか入らない部分があるんじゃないですかね。やっぱり兄としてヘタなところ、ダサいところ見せられないじゃないですか、弟に。〈お兄ちゃんカッコイイ〉って思われたい」
新しい店の真ん中には銀次朗さんが東京で暮らしていた部屋から移設したソファーを据えました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「ここで(東京時代)みんなでニンテンドースイッチやスマッシュブラザーズして、マリオカートして、みたいな。練習終わったあととか。みんなで遊んでいた思い入れあるソファーなので絶対置きたいと思っていたし。この棚も銀の家にあった飾り棚なので、銀は見覚えあるはずなんですよ。そこにベルトを置いて、銀がもしこのカフェに来たら、ここに座ってもらって、『お前ん家のソファーだよ、覚えてる?』って」
店内で自家焙煎する自慢のコーヒー、食器にも特別な思い入れがあります。
熊本出身で、幼いころから重岡兄弟と同じ道を歩む現世界チャンピオンの堤 聖也選手がプレゼントしてくれました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「愛してもらえるようなカフェにしたいですね。そのためにもちゃんと僕も一人一人と向き合って、その人に『おいしい』と言っていただけるコーヒーを丁寧に提供できたらいいなと思っています」
優大さんがカフェを始めるにあたって心の支えとなったのは妻の南美(みなみ)さんです。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「人生のパートナーじゃないですけど妻という存在にはだいぶ救われてますね、僕。きょうこの位置まで持ってこられた、お店の雰囲気(内装)とかこの感じも妻がいなかったら絶対無理なので」
そして2人の間には新しい命が…。先月、第1子となる娘・陽和(ひより)ちゃんが誕生しました。
【元WBC世界ミニマム級チャンピオン 重岡 優大さん】
「『よし、ここから俺、マジで頑張んなきゃ』って。うれしかったですし、救われました。まだ銀のこと心配だし、正直、落ち込んでいるけど、これを頑張れば数年後にはめっちゃ明るい未来が待ってるんじゃないかなって思って。夢を追い続ければ絶対かなうんですよ。どこかで妥協しなければ。毎日やり続けたら絶対、夢がかなうということをボクシングを通して僕と弟は(学んで)自信があるんですよね」
生まれてきた子供にもそう教えますし、『夢かなうぜ』って」そしていよいよカフェオープンの日、開店と同時に重岡兄弟を応援する客が店を訪れました。
【重岡 優大さん】
「お待たせしました」
【来店客】
「コロンビアを(飲んでます)。最高です」
「重岡兄弟といえば、みんな知ってますから。昔から応援してます」
【来店客】
「インスタのストーリーズ見て(オープン情報が)流れてたので楽しみに来ました」「ボクシングで培った情熱とか思いがカフェの仕事でもきっと生かされると思うので」
「いちファンとして応援していきたいなと思っています」
店の名前は『Shinonome(しののめコーヒー)coffee』。優大さんは、夜が明ける頃の、空が茜(あかね)色に染まる『東雲(しののめ)』に明るい未来への願いを託します。
「『Shinonome』がカフェをするって決めたときの気持ちなので、心の中って感じですね」
(良い夜明けになるといいですね)
「そうですね、本当、絶対にそうして見せます。良い夜明けに」