道南の海で水揚げが続くニシン。

 函館市の市場にはこの日、約14トンもの新鮮なニシンが並びました。

 かつて北海道の経済を支えた「春を告げる魚」が、いま再び私たちの食卓に戻ってきています。

 主に北斗市の定置網漁で水揚げされたニシンは、大きさも鮮度も抜群。

 漁業者は「(例年と比べて)大きいと思いますね。卵が入っている率も高い。年々安定して取れている」と話します。

 気になる価格は、1キロ当たり平均で卵を持つメスは約500円、オスは約200円ほどです。

 北海道のニシンは明治から大正にかけて、道内経済を爆発的に押し上げた立役者でした。

 明治30年には約97万トンという驚異的な漁獲量を記録し、浜は活気に溢れていました。

 しかしその後、乱獲などによる資源量の低下で漁獲量は大幅に減少。

 漁業関係者らが稚魚の放流を続けるなど、回復に向けた取り組みが進められてきました。

 転機が訪れたのは2017年です。

 道南の江差町の海で約100年ぶりに「群来(くき)」と呼ばれる現象が現れました。

 これは、ニシンの大群が産卵した時に海が乳白色に染まる現象で、かつての賑わいを知る漁業関係者が待ちわびた光景でした。

 その翌年から漁獲量が回復し始め、2022年には36年ぶりに2万トンを超えました。

 漁業者は「スルメイカや秋サケなんかは水揚げ減少に歯止めが効かない状態の中で、ニシンに関してはこの道南地区は毎年続いていますので、少し期待できる商材の一つになっています」と話しています。

 函館市内のスーパーでは、ニシンが100グラム当たり48円で販売されていました。

 大きいニシンが2本も入って約400円、刺身も1パック430円とお買い得です。

 買い物客からは「今、ちょうど旬だから食べている。他のものと比べればずっと安いですよね。そしておいしい」「感覚的に他のお魚より安いので、ちょっと失敗しても買っていいかなと思います」といった声が。

 この店では、ニシンだけで1日に約2万円の売り上げがあるということです。

 店の担当者は「大変豊漁ですので、お客様にお求めやすい価格で販売しています。ニシンはとても栄養価が高い魚でもあるので、お手軽に栄養が取れるという部分で、もっと需要が増えていくのではないか」と話します。

 ただ、ニシンは「小骨が多く食べづらい」とも言われます。

 そこで函館市内の居酒屋で、おいしく食べるプロの技を教えてもらいました。

 一番人気の刺身には、切り方に工夫がありました。

 「骨が入っているところをV字にするように切る。あとは、骨を切るように薄く切る」(いか清 室田秀文さん)

 実際に食べてみると、歯ごたえがありさっぱりとした味わいで、骨もほとんど気になりません。

 1匹丸ごと焼いた塩焼きの場合は、中骨が入っている部分を開き、身をめくるように広げることで、厄介な中骨をきれいに取ることができます。

 中骨を取れば、残りの骨は引っかかるほどのものではなく、そのまま食べる人も多いそうです。

 では、なぜニシンの漁獲量が回復してきたのか。近畿大学の有路教授に話を聞きました。

 まず一つは、網目のサイズを大きくして小型の魚を取らないようにしたことです。

 大きい魚は捕れますが、まだ育ちきっていない魚は逃がせるようにする漁師の工夫が実りつつあるということです。

 資源保護をしながら、漁をしていくというスタイルが広がっているのでは、とみています。

 もう一つが、海水温の上昇に対応できるニシンが増えてきているのではないか、ということです。

 近年、北海道周辺の海水温が上昇していますが、もともとニシンは高い水温を苦手としています。そのため冷たい海を求めて北上してしまい、急に取れなくなったことが原因の一つとされています。

 ただ、この水温に順応してきているニシンが増えてきているのではないか、ということです。

 復活してきた「春を告げる魚」ニシン。漁業関係者の資源保護に向けた努力が実を結び、今が旬の味をお得に味わえるようになってきています。

北海道文化放送
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