三重県の鳥羽市沖で2月20日、貨物船が遊漁船に衝突した事故、2人が死亡、10人が重軽傷を負いました。事故はなぜ起きたのか、専門家は双方の見張りが不十分だった可能性を指摘します。
■「一瞬で海の中に…」減速せず突っ込んだか
今月20日午後1時前、鳥羽市国崎町沖を航行していた貨物船「新生丸」が、遊漁船「功成丸」に衝突しました。遊漁船は2つに割れ、乗っていた13人全員が海に投げ出されました。

遊漁船に乗っていた男性ら:
「何を騒いでいるのかと見に行く途中で衝撃がきて、一瞬で海の中に。自分がまさかこんなふうになるとは思ってもいなかった」
「真っすぐ来ていますよね、避けることはなかった。とにかくドンドンドンドン(近づいてきた)。空のクーラーボックスにつかまって救助を待った」

鳥羽海上保安部によりますと、この事故で、遊漁船に乗ってアジ釣りをしていた谷口幸吉さん(84)と中川元弘さん(67)の2人が死亡し、10人が重軽傷を負いました。
中川さんの知人:
「まさか乗っていないよね?って連絡したけど、連絡つかずに。私に一から船釣りの楽しさを教えてくれた恩人です」
谷口さんの知人:
「面倒見のいい人。残念。顔を見ていたら涙が出てきた。それぐらいいい人。つらいな」
鳥羽海上保安部は21日、貨物船を操船していた二等航海士の杉本波音容疑者(21)を、業務上過失致死などの疑いで逮捕しました。調べに対して容疑を認めているといいます。

運航会社などによると、貨物船では3人の航海士が4時間おきに交代し操船していて、当日は杉本容疑者が正午から午後4時までの担当で、操船を始めた1時間後に事故が起きたということです。
当日、遊漁船はアジ釣りに行くため、正午ごろに国崎漁港を出発。一方の貨物船は、午前に愛知県の衣浦港を出発し、岡山県倉敷市に向かっている途中でした。

その後、貨物船はいかりを下ろして停泊していた遊漁船の右側に衝突しました。被害状況などから、貨物船は減速せず真っすぐ突っ込んだとみられています。
■2つに割れた船体「なかなかない壊れ方」
衝突から2日後の22日午後には、2つに割れた遊漁船が海面から引き揚げられ、国崎漁港と鳥羽港にそれぞれ運ばれました。
この真っ二つに割れた船体から、専門家は両方の船がともに回避行動を十分に取れなかった可能性を指摘します。

水難学会の斎藤秀俊理事:
「ちょうどど真ん中に当たった、しかも垂直に。なかなかない壊れ方。(両船の)見張り不十分が原因として挙げられるのかなと思います」
鳥羽海上保安部は、遊漁船の男性船長(66)からも任意で事情を聞き、当時の詳しい状況を調べています。
一方、国の運輸安全委員会は22日から船舶事故調査官を現地に派遣し、貨物船の船員への聞き取りや船内の航海データを確認するなど、原因究明に向けた調査を進めています。