トランプ関税をめぐる合憲性が争われた訴訟で、アメリカ連邦最高裁は、相互関税などについて「違憲」と判断、「NO」を突きつけた。トランプ大統領は即座に、10%の関税を課す代替措置を発表し、その後、さらに、15%に引き上げると表明した。自動車や鉄鋼などへの関税は、相互関税とは異なる法律に依拠していて現状のまま継続する。
トランプ政権の「プランB」
新たな一律15%の追加関税は、「1974年通商法122条」に基づいて発動される。この法律は、深刻な国際収支の赤字への対応策として、大統領に原則150日まで最大15%の関税を課す権限を与えているものだが、「違法」判決を受けたトランプ政権の対応の本丸は別のところにある。
アメリカ通商代表部は、直ちに、不公正な貿易慣行への対抗措置の根拠となる「1974年通商法301条」に基づく調査を開始するとともに、現在、自動車などへの関税の根拠となっている「1962年通商拡大法232条」を活用していく方針を表明した。「122条」で時間稼ぎをしたうえで、「301条」や「232条」を根拠にした恒久的な関税措置を打ち出すトランプ政権のねらいが見てとれる。
「301条」は、第1次トランプ政権が対中関税で駆使した実績があるほか、「232条」で、自動車・鉄鋼・アルミニウム製品以外に対象品目を広げていく可能性があるが、ともに、関税発動には詳しい調査など綿密な準備が必要になる。「関税措置のプランB」を狙い通りに進められるかは不透明だ。
今後は、企業が支払ってきた関税の行方も焦点になる。トランプ大統領が2025年4月に相互関税を発表して以降、アメリカの国際貿易裁判所に出された関税関連の訴訟は、日本企業を含めて1800件以上に上り、ブルームバーグ通信によると、企業から徴収済みの関税の還付が認められた場合、最大1700億ドル(約26兆4000億円)の返還が認められると試算されている。
関税が還付される場合、輸出依存度の高い日本企業にはプラスの影響が見込まれるが、トランプ政権は法廷で争う姿勢を示していて、最終的な司法判断が示されるまでには数年かかるとの見方も出ている。
相互関税での特例措置は?
日本に対する15%の相互関税がなくなって、新たに15%の追加関税が課させることに伴い、いま出ているのが、相互関税で設けられていた特例措置はどうなるのかをめぐる懸念の声だ。
日米合意では、相互関税を15%にするとともに、もともとの関税率が15%未満の品目は一律15%に、15%以上の品目は上乗せがない特例措置が盛り込まれていた。
たとえば、従来税率が7.5%と、15%未満だった織物のケースだと、プラス15%で22.5%とはならずに、15%が適用されてきた。今回、特例措置が白紙になったうえに、7.5%に追加関税15%が上乗せされた場合、関税率は22.5%と、現状より高くなってしまうことも想定される。
一方、既存の税率が0%で、相互関税により15%となっていたホタテは、相互関税がなくなった代わりに追加関税が課されるとした場合、税率はそのまま15%が維持される計算になるほか、今回の追加関税では、牛肉など特定の農産品が対象から除外されたため、26.4%が課されている牛肉の関税は変わらない可能性がある。
ただ、追加関税の発動期間が切れる150日後にどうなるかは不明で、農産品をはじめとした対米輸出計画は立てにくい局面が強まっている。
再び高まる不確実性
相互関税をめぐる「違憲」判決に、金融市場も反応した。
20日のアメリカ市場は、関税撤廃が企業負担の減少につながるとの見方が広がって、一般消費財関連の銘柄などが買われ、ダウ平均は200ドルを超えて上昇したが、関税が還付された場合、財政赤字が拡大するとの懸念から米国債が売られ、10年債利回りは前日に比べ0.02%高い水準で取引を終えている。
トランプ政権は看板政策の大きな修正を余儀なくされることになった。関税率引き下げは、企業収益を押し上げる材料になるが、代替の15%終了後の関税措置の行方は予断を許さない状況だ。トランプ関税をめぐる不確実性は、再び一段と高まる情勢になってきた。
(フジテレビ解説副委員長 智田裕一)
