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2024年1月1日に発生した能登半島地震。最大震度7、マグニチュード7.6という巨大地震は奥能登を中心に、石川県の基幹産業である水産業にも甚大な被害をもたらしました。そのとき、首都圏で事業を展開する生協パルシステムが挑戦した「新商品開発」を起点とした支援の形とは? 石川県の原料を使った産地応援! 商品の開発に携わった水産の商品担当職員が、当時を振り返ります。
大地震発生。自分にはなにができる?
「これは大変なことになった、と。でも、そのときはまだ、生協の一職員である自分には何ができるのか、何も頭に浮かんでいませんでした」
パルシステムの水産商品を企画・開発する職員である南翔児(みなみしょうじ)は、2024年の年明けを実家で過ごしながら、突然テレビに流れた現地の模様をただ眺めていました。しかし——ふと、我に返ります。
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パルシステムの水産課担当職員の南翔児
「きっと、なにかできるはず」
パルシステムは、関東を中心に宅配事業を展開する生協のグループ。食品業界に憧れて入協して20年の南は、もともと実家も生協を利用していたこともあって、「生協」に親近感をもって育ちました。
そんな南がパルシステムで仕事をすることの意味を噛みしめることになったのは、東日本大震災のときの経験だといいます。
「東日本一帯のあらゆる産地、メーカーに大きな被害が及びました。職員たちは業務の合間をぬってパルシステムが関わる被災地を訪ねて炊き出しをしたり、カタログやネットショップなどで復興支援のプロモーションを企画し、販促を通じてできるだけ被災地の産業を支えようと腐心していました」
そんな自組織に取り組みは、パルシステムが単なる物売りではなく、「食」を通じてさまざまな人の暮らしを支える協同組合であることを強く自覚することにつながりました。そして、今度は能登で巨大地震が起きてしまった……。
悶々としたまま仕事始めを迎えると、組織対応は思った以上に早く進みます。まずは利用者に向けて呼びかけられた義援金の募集。すぐに集まった1,350万円を届けに(*)、当時の事業トップ、渋澤専務理事を筆頭に、本部長一同は能登へ向かいました。訪ねた先は「JFいしかわ」。
「JFいしかわさんと聞いて、はじめは“え?”と思ったんです。なぜなら、これまでパルシステムと取引したことのなかった漁協さんでしたから」
(*)最終的な募金総額は2.6億円
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写真左から坂本JF全漁連会長、笹原JFいしかわ組合長、渋澤パルシステム連合会専務(撮影当時)
被災地支援でも活きた「お魚食べよう」の精神
パルシステムはこれまで全国のJA(農業協同組合)や農事組合法人と産直提携を結び、独自の栽培基準をもつ青果や、肥育基準をもつ肉や卵など、安全な農畜産物を届けてきました。2009年には水産物についても、海の環境保全や持続可能な漁業の発展をめざすJF(漁協)や水産加工メーカーとの産直提携を加速し、文字通り「産直のパルシステム」の輪を広げて今に至ります。
とくに2024年からは「お魚食べよう」というサステナブルアクションを展開し、水産の産直提携を結んだ産地とともに、日本の水産業の活性につながる新商品の開発や、産地交流ツアーの実施、魚食を楽しむ学習会などを展開してきました。
「いま海は大きく変化しています。気候変動の影響で海水温が高くなり、海流の変化もあって、これまで獲れていた魚が獲れなくなるなどさまざまな問題が起こっています。このままで大丈夫なのか……慣れ親しんだ日本の魚食文化を次の世代にも伝えたい、味わってほしい。その思いで産直産地とは今まで以上に密に連携をはかっていたんです」
金沢に本部を構えるJFいしかわは、能登半島の海岸線に23の支所、2つの出張所をもつ地域随一の漁協です。これまで取引がなかった未知の産地であれば、支援を通じて信頼関係を作っていくことからはじめていこう。これも「お魚食べよう」の推進のひとつになる。そんな機運がパルシステムのなかに高まっていくのも、ごく自然な成り行きだった、と南は振り返ります。
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隆起した震災後の能登の漁港(2025年10月 撮影=南翔児)
水産の「復興商品」を製造する加工場がない……
県全体でいうと69の漁港が点在していた石川県。しかし、今回の地震では、実にそのうち60の漁港が被災していました。とくに日本海側に面した外浦地区の16漁港では、地盤隆起による被害が甚大で、現地の漁師や漁業関係者を打ちのめしていました。
「ひどいところでは4mも地盤が隆起したそうです。自宅を失った方も多く、断水も長期化、日々の生活がままならないなか、かろうじて漁に出ることができても港に船を接岸できず魚を水揚げできない場合も。漁業自体に見切りをつけるケースも出始めていました。JFいしかわさん自身も漁業継続に向けた環境整備は何より重要と考え、まずは被災しつつも稼働していた各港に水揚げされていた魚を金沢にある総合市場に集約し、人材と機能を集中させて漁業を再開しようとしていました」
そこでパルシステムでは、そうした現地の復旧の動きを見据えながら、水産の「復興商品」を開発し、会員に向けてキャンペーンをはることで、復興支援を後押ししようと考えました。しかし、ここで大きな壁が立ちはだかります。
「石川県には、水産の加工場がほとんどなかったんです」
好漁場に囲まれ高品質の鮮魚が水揚げされる石川県は、近くに大消費地金沢があることもあり、鮮魚のまま流通させて高値で取引する土地柄でした。
「それが今回の地震で、これまで消費地だった金沢を含め観光が停滞したことも相まって、獲れた魚は首都圏などの大消費地に運ぶ必要が生じたんです。私たちパルシステム同様、すべての漁業関係者が“どうやって加工すればいいんだ”という問題に直面しました」
「苦しんでる同業者がいたら助けなきゃ」
パルシステムの水産課のメンバーたちは、ほどなくしてその解決策を見つけます。
「石川県外に点在する、産直産地や取り引き先の水産加工メーカーの力を借りれないだろうか、と考えたんです」
それ以降、水産商品開発の伴走者である全国漁業協同組合連合会(以下、JF全漁連)と呼びかけを行い、その思いに協賛した産地やメーカーが名乗りを挙げていくことになります。
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産直産地「シーボーン昭徳」の西木孝明さん
「そりゃあ、黙ってみてるってわけにはいかないでしょ」と振り返るのは、佐賀県唐津の産直産地「シーボーン昭徳」の西木孝明さん。「昭徳の産直九州産天日干しさわら」や「昭徳の産直九州産天日干しあじひらき」など、パルシステムのオリジナル商品を手掛ける老舗加工メーカーの営業部長です。
「うちも近年、原料となるさばが不漁で苦しいところです。苦しいなか、魚食を伝える、残していくのは、もはや使命なんです。今まさに苦しんでる同業者がいたら助けなきゃ。一緒に魚食を守らんと」
このほか産直産地のJF魚津(富山県)やカネリョウ海藻(株)(熊本県)などの水産加工メーカーも参加します。石川県で水揚げされる貴重な原料をスピーディーに商品開発することが求められるなか、これまでなら高値でなかなか手が出せなかった高品質の原料を加工することができる高揚感もあり、貴重な商品開発の現場になっていきました。
開発の際は、原料魚の持ち味を生かすことを心がけました。まず、石川県産の「さわら」は素材がよいので、色の白さや身質のよさが分かるシンプルな切身で提案。関東ではあまりなじみのない「沖ぎす」、この魚は水分が多いため干物に。味付けに石川県特産のいしるを使うことも検討しましたが、塩味にして天日干しにすることで支持が得られるのでは、と試行錯誤しました。また、石川県の特産ぶりを漬け込む際は、パルシステムの利用者に馴染み深いオリジナルの調味料(国産丸大豆しょうゆや花見糖など)を使用するなどしました。そうして開発された商品は9アイテムにのぼります(2026年1月現在)。
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- 産地応援!石川県産さわら切身 3切り200g 498円(税込538円)
- 産地応援!石川県産ぶり漬け丼 120g(ぶり100gタレ20g)498円(税込538円)
- 産地応援!石川県能登産岩もずく 150g 498円(税込538円)
- 産地応援!石川県産沖きすの天日干し 4~6尾180g 498円(税込538円)
- 産地応援!石川県産さわらのバジルオイルソテー 180g(4切~6切)598円(税込646円)
- 産地応援!石川県産船凍するめいか 2尾250g 880円(税込950円)
- 産地応援!石川県産船凍するめいか 2尾400g 1380円(税込1490円)
- 産地応援!輪島丸が獲った石川県産あじの天日干し 2枚165g 328円(税込354円)
- 産地応援!石川県産やわらかぶりの米粉竜田揚げ 200g 498円(税込538円)
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※価格は、2026年2月時点
おいしさだけでなく、商品の背景にある物語も届ける
ある日、完成したサンプル品を試食した南は、鮮魚そのままのうまみが詰まった一品に、思わず「うまい!」。しっとりとしながらも、身がしっかりとし、臭みもありません。「思わず自画自賛したくなるうまさ」と語るそのラインナップは、JFいしかわ、そして産直産地や水産加工メーカーの仲間たち、さらにJF全漁連の力を得て、パルシステムだからできた品々でした。
2024年11月を皮切りにカタログに登場した開発商品たち。随時、被災地の復興の状況も情報として併せて伝えながら、首都圏の利用者へそのおいしさが浸透していくにつれて、パルシステムへ寄せられる声も、次第に増えていったといいます。
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復興開発商品「産地応援!石川県産ぶり漬け丼」
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復興開発商品「産地応援!石川県産沖きすの天日干し」
「石川のお魚、ほんとにおいしいですね。いつか現地でとれたてのお魚を食べてみたいです。」
「美味しく食べながら産地の応援にもなり、一石二鳥の気分です。」
「食べ応えありでした。産地の応援にもなるなら、ぜひまた扱って下さい。」
そこには、消費者一人ひとりが被災地のことを想うあたたかさがありました。商品開発とは単に新しいおいしさを届けるだけでなく、その時々のストーリーも商品を介して消費者に伝わっていくものなんだな、と開発に関わった水産課職員は誰もが再認識した、といいます。
「商品担当という役目は、産地の橋渡しであったり、商品開発なわけです。その役目を通じて、石川県の魚に関わることができました。不幸にも震災というきっかけではあったとはいえ、生まれ変わった形で首都圏の利用者にその希少なおいしさを届けることができたこと、そして何より現地の方々と顔の見える関係ができたことは、貴重な経験でした」
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パルシステムで展開された商品カタログやチラシでの「復興開発商品」の取り上げの一例(2026年1月時点)
いま水産業を取り巻く環境には、厳しいものがあります。前述の海洋環境の変化や後継者問題はもちろん、さらに深刻なのは「魚食離れ」の加速。骨をとるのが面倒、肉の方が腹持ちがいい、味にインパクトがない……。共働きが当たり前になり、コスパやタイパが重視される時代にあって、魚食の分はさらに悪くなるばかりです。
だからこそ、と南は言います。
「ひと手間かけた魚料理は一生忘れられないくらい記憶に残るおいしさです。一度でも食べればわかってくれる。これからの社会を背負って立つ子どもたちに対しては、とくにそう思います。まさに“みんな、お魚食べよう”ですね!」
パルシステムの「お魚食べよう」の取り組みは今年、3年目を迎えました。これからもずっと、日本の魚を食べ続けることができるように——魚食の豊かさを届けるパルシステムの挑戦は、続きます。
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【関連リンク】
パルシステムでは2024年1月に発生した能登半島地震と豪雨に対して、募金を活用した経済的支援や業務やボランティアの支援を目的に職員を派遣する人的支援などを行っています。
https://information.pal-system.co.jp/tag/noto-disaster-relief/
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パルシステム生活協同組合連合会
所在地:東京都新宿区大久保2-2-6 、理事長:渋澤温之
13会員・統一事業システム利用会員総事業高2,604.2億円/組合員総数176.2万人(2025年3月末現在)
会員生協:パルシステム東京、パルシステム神奈川、パルシステム千葉、パルシステム埼玉、パルシステム茨城 栃木、パルシステム山梨 長野、パルシステム群馬、パルシステム福島、パルシステム静岡、パルシステム新潟ときめき、パルシステム共済連、埼玉県勤労者生協、あいコープみやぎ
HP:https://www.pal-system.co.jp/
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