滋賀県南部に位置する湖南市の下田地区。「弥平とうがらし」は、この地域に100年以上前から伝わる伝統野菜です。その特長は、鮮やかなオレンジ色の見た目と、タカノツメの2倍という刺激的な辛さ。それでいて甘さや旨み、芳醇な香りを持つという唯一無二の唐辛子です。
近年、栽培農家の減少や高齢化で、その希少性が高まる中、この地域にしかない「良いもの」を守り伝えていきたいという思いから、「弥平とうがらし」の加工品製造・販売に取り組んでいるのが株式会社fm craic(エフエム クラック)。同社が発信するクラフトソース&スパイスブランド「ぴりり」は、「日常に、ぴりりとしたスパイスを」というコンセプトのもと、弥平とうがらしの魅力を活かした商品づくりを行っています。
家庭用はもちろん、2026年からは業務用スイートチリソースの販売もスタート。弥平とうがらしの知名度向上をめざして奮闘する代表の釘田和加子(くぎた わかこ)さんにお話をうかがいました。
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代表 釘田 和加子さん
●「弥平とうがらし」を守り伝えるために生まれたクラフトソース&スパイスブランド「ぴりり」。はじまりは新規就農で起業した二人の女性の熱い思い
・・・はじめに、「弥平とうがらし」とはどんな野菜ですか?
弥平とうがらしは、湖南市下田地区に100年以上前から伝わる伝統野菜です。名前の由来は、下田に住んでいた“弥平さん”がこの地域に持ち帰ったのがはじまりといわれています。地元の方から聞いた話では、下田には同じく伝統野菜の「下田なす」があるのですが、それを使って漬物を作る時に、この弥平とうがらしを使うために畑の片隅で栽培されていたそうです。下田の土壌は弥平とうがらしの栽培に適していて、農家の人たちは漬物に使ったり、火であぶってお酒のアテにしていたようです。
オレンジ色のかわいい見た目に反して激辛で、その辛味レベルはタカノツメの2倍。ですが、ただ辛いだけではなく糖度が高いので、辛さの中に甘みがあり、独特の芳醇な香りも感じられるところが、他にはない特長です。
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鮮やかなオレンジ色の弥平とうがらし
・・・その弥平とうがらしを使ったブランド「ぴりり」誕生のきっかけは?
一部の地域で親しまれていたこともあり、同じ市内でもその存在を知る人は少なく、地元の人も特に珍しいという認識がない中で、「この希少な伝統野菜を大切に後世に残していきたい」と立ち上がったのが、創業者である二人の女性です。
もともと株式会社fm craicは、脱サラして農業を始めた女性二人が2011年に立ち上げた会社です。「地域の良いものを残していきたい」という理念を掲げ、湖南市の伝統野菜である下田なすや弥平とうがらしの栽培に取り組んだのが最初です。その後、加工品の製造販売も手掛けるようになり、「ぴりり」ブランドの商品が誕生しました。彼女たちの活動をきっかけに、弥平とうがらしが広く知られるようになりました。現在は「弥平とうがらし保存会」のほか数件の農家が栽培しています。
「ぴりり」ブランドの商品群
●創業者の思いを受け継ぎ、リブランディングを経て新たにスタート。日常に彩りをそえるスパイス「ぴりり」を通して女性を応援したい
・・・いつ、どのような経緯で事業を引き継がれたのですか?
事業を引き継いだのは2021年です。もともと国際協力や社会貢献活動に興味があり、独立行政法人 国際協力機構(JICA)インド事務所で、NGOデスクコーディネーターとして約4年間、働いていたこともあります。滞在中に起きた東日本大震災をきっかけに、日本への思い、生まれ育った滋賀県への思いが強くなり、帰国後も地域や人を応援する活動をしたいという思いをずっと持っていました。そんな時、湖南市が地域おこし協力隊を募集していることを知り、応募しました。
着任後は湖南市へ移住・起業する方たちの支援を行っていたのですが、その活動の中で創業者の女性と知り合いました。当時は一人で事業をされていたので忙しい時は手伝っていたのですが、ご本人の出産、転居など家庭の事情で事業の継続が難しくなったことから、事業承継を打診されました。
それまでは起業家をサポートする側で、起業経験はなかったので悩みましたが、「地域の良いものを残したい」という理念への共感、起業への興味、さまざまな思いを経て、引き継ぐ決意をしました。
・・・代表就任後、最初に取り組まれたことは何ですか?
一人でするには、農業までは無理だと思ったので、材料の弥平とうがらしは農家さんから仕入れ、製造販売に集中することに決め、最初の一年間は商品のイメージカラーや価格設定の見直しなど、リブランディングに取り組みました。
ブランドコンセプトは、「日常に、ぴりりとしたスパイスを」。自分も含めてですが、女性は仕事、結婚、子育て、介護など、人生の中でさまざまな転機があり、大変だなという実感があります。ですから女性が手に取ってリフレッシュできる、ひと息つけるような商品を届けることで応援したいという思いがあります。
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イタリアンスパイシー
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柚子ぴりり
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インディアンスパイシー
●インドでの経験を活かしてビリヤニキットを開発。弥平とうがらしの風味豊かなソース、スパイス、業務用商品も販売中
・・・「ぴりり」商品の特長は?
弥平とうがらしの収穫時期は8月から9月なのですが、収穫後は新鮮なうちに乾燥して保存、必要な時に必要なだけ加工することで風味を損なわないよう徹底しています。
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パウダータイプの商品は、弥平とうがらし100%の「一味とうがらし」のほか、柚子、イタリアン、インディアンのミックススパイスがあります。クラフトソースは、甘辛エスニックの「スイートチリソース」と、辛味が強い「ホットチリソース」の2種類があります。業務用として弥平とうがらしの粉末と乾燥させたもの、2026年1月からスイートチリソースの業務用(1000ml)も販売を始めました。
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スイートチリソース
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ホットチリソース
・・・「ビリヤニ」が作れる商品もあるんですね。
これは事業を引き継いだ後に、最初に新商品として開発したもので、私にとって思い入れのある商品です。ビリヤニはインドの炊き込みご飯のような料理で、現地のご家庭で作り方を教えてもらい、商品化しました。
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ビリヤニキットを使えば自宅で本格的な味が楽しめる
実は中学生の頃からインドが好きで、民族楽器「シタール」の音楽をきっかけに興味が増し、大学時代にはヒンディー語も学んでいました。ですから、地域おこし協力隊として湖南市に来てからも、インド人の友人とヒンディー語講座を開いたり、イベントでビリヤニランチを提供したり、コロナ禍には、いまの商品の原型ともいえるビリヤニキットを作って販売もしていたんです。自分の経験を生かして考えた商品を、買ってリピートしていただけることはとても嬉しく、やりがいを感じています。
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●「地域の良いものを残していく」、「女性を応援する」。基本理念2本柱で事業の発展をめざす
・・・今後について、どのような目標をお持ちですか?
基本理念として、「地域の良いものを残していきたい」、「女性を応援したい」という思いが2本柱としてあります。
インドにいた時、地方に行くと、その土地の文化、例えば工芸や言語などが時代とともに消えていくことを体感しているので、地域の良いものを無くしたくないという思いは根本にあります。私の場合、たまたまご縁があったのが「弥平とうがらし」であり、事業を受け継ぐのも自然な流れだったと感じています。
まだ地元でも弥平とうがらしを知らない方も多いので、もっと知名度を上げていくことが課題です。例えば、子どもたちを対象とし、辛いから食べられないと避けるのではなく、栽培や収穫体験などを通じて目にする、触れる機会を増やしていければと考えています。一方で、業務用商品など新たな商品の開発、使い方のご提案を通じて、飲食店をはじめ企業や大学の食堂など、お客様の幅を広げ、販路を拡大していくことも今後の目標です。
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お酒やスイーツとのマリアージュなど、さまざまな楽しみ方を提案
・・・「女性を応援したい」という部分ではいかがですか?
事業を引き継ぎ、最初の1年間はフルで力を注いでいたのですが、2年目に入って「さあここから」という時に、私自身の結婚、出産が重なり、急ブレーキがかかってしまいました。いまは子育てと事業の両立に奔走する日々で、ワークライフバランスが悩ましい状況なのですが、女性を応援したいという思いでやっているブランドなので、この経験も活かしていけるのではと思っています。
この事業を引き継がなければできなかった経験もあり、大変なこともすべて含めて面白い経験をさせてもらっています。規模は小さいですが、株式会社として事業をしていると、代表として出会う人も変わり、学ぶことも多く、成長しているかなと。自分で何かをしたいと思っている女性に、インスピレーションを与えられるような存在であれたらいいなと思います。
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■株式会社fm craic(エフエム クラック)
代 表:釘田 和加子
住 所:〒520-3106 滋賀県湖南市石部中央6-1-53
TEL :080-8504-6844
E-mail : info@fmcraic.com
URL : https://www.fmcraic.com/
Instagram : https://www.instagram.com/fmcraic/
オンラインショップ: https://fmcraic.base.shop/
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