滋賀県愛荘町愛知川(あいしょうちょう えちがわ)、かつて中山道の宿場町として栄えたこの地に、創業268年を迎える日本料理の老舗「竹平楼(たけへいろう)」があります。屋号は、初代・平八さんが旅籠「竹の子屋」を営んだことに由来するもの。明治11年には、明治天皇が民情視察の際に休憩に立ち寄られ、玉座のある「御座所」と「広間」が、国の登録有形文化財として当時のまま残されています。
江戸時代の作庭という庭園を眺めながら、本格的な懐石料理が楽しめる料亭として、古くから多くの顧客に愛されてきた竹平楼。鯉や鮎、びわます、近江牛など地元の食材を使った郷土料理が揃います。調理場を担うのは、次期8代目の西村竹弘さん。日本料理の修行を経て11年前に故郷に戻り、さまざまな改革に取り組んできました。
その一つとして、新たに開発したのが、滋賀県土山産のお茶を使った「ほうじ茶プリン」。地元の材料を使い、丁寧に作られた老舗料亭ならではの和のスイーツは、どのようにして誕生したのか、その経緯や込められた思いをうかがいました。
次期8代目 西村 竹弘さん
●季節のフルーツの代わりに作った食後のデザートが名物に。試行錯誤の末、日本料理と相性のいい「ほうじ茶」を使ったプリンが完成
・・・「ほうじ茶プリン」誕生の経緯を教えてください。
もともと懐石料理の最後に、デザートとして季節のフルーツをお出ししていたのですが、どうしても季節のものが手に入らない時期があります。その時に、プリンやアイスを作るようになって、季節に応じてカボチャ、栗、黒豆、いちご、チョコレートなどを使ったさまざまなプリンを作るようになりました。
食後のお茶は、すっきりと飲める「ほうじ茶」をお出しするのですが、ある時、これをプリンにしたら、すっきりとした甘さのデザートになるのではと考えました。そこで、お茶の産地である滋賀県の中でも、プリンに合うものを探し、土山産のほうじ茶を使った「ほうじ茶プリン」をつくり、食後のデザートとしてお出しするようになりました。
・・・メニューの中の一品として提供されていたのですね。
そうです。当時は季節のフルーツが手に入らない時期のデザートだったのですが、フルーツをお出しした時に、「今日は、ほうじ茶プリンじゃないんですね」と言われることが多くなり、皆さんに気に入ってもらえているということがわかりました。そこで、通年でお出しするようになったんです。最初は陶器の器で提供していたのですが、「家族に持って帰りたい」というお客様も多く、それならと蓋つきの瓶でお出しするようにしました。その場で食べられなくても持ち帰りができるので、そのスタイルが定着し、いまでは「これを待ってたんや」と言ってくださる方も多く、竹平楼の定番デザートになりました。
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常連客が心待ちにする人気デザートとして定着
●ほうじ茶の香ばしさと、ほどよい甘みが特長の濃厚プリン。選び抜いた材料と丁寧な製法で日々調整を繰り返しながら、最適なものを提供
・・・竹平楼さんならではの特長を教えてください。
滋賀県には土山茶、朝宮茶、政所茶など、お茶の産地がたくさんありますが、ほうじ茶を作っているところは限られています。土山産のほうじ茶は、朝晩の寒暖差に加え、被覆をしない(日光を遮らずに育てる)純煎茶なので香りが良く、高火力で一気に火入れをする独自の焙煎方法によって旨みが凝縮されています。その特長を生かしながら、日本茶にも、紅茶にも、コーヒーにも合うように仕上げています。
作る時は、ほうじ茶の香りと旨みを逃がさないよう丁寧に牛乳で煮出し、なめらかさを出すために、卵黄のみを使って仕上げています。材料の配合、蒸す時間や温度など、常に調整しながら日々研究しています。
商品は自社のオンラインショッピングサイトで販売しているほか、ふるさと納税の返礼品やカタログギフトにも採用されています。
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・・・商品化をきっかけに広く知られるようになったのですね。
もともと竹平楼には代表的な名物「鯉のあめ煮」があります。大ぶりの子持ちの鯉を秘伝のたれで煮込んだ郷土料理で、4代目女将が考案して以降、代々受け継がれてきたのですが、なかなか鯉を食べる文化は浸透しにくく、苦手な人もおられます。特に若い人たちには受け入れられにくく、口にする機会がない。そんな課題を抱え、若い人から年配の方まで食べていただける何か新しい名物をつくりたいと考えていたところだったので、ちょうど、ほうじ茶プリンが完成し、「これだ!」と思いました。
竹平楼の名物「鯉のあめ煮」
●竹平楼のある「愛知川」の魅力を、「ほうじ茶プリン」を通じて全国に発信したい
・・・滋賀県の愛荘町愛知川は、どんな地域なのですか?
ここは中山道の愛知川宿のあった場所で、宿場町として栄えていた歴史のある地域なのですが、今は通り過ぎる街でしかなく、ここに立ち寄るという人があまりいないのが残念です。愛知川をもっと多くの人に知ってもらいたいですね。例えば、「ああ、愛知川といえば竹平楼さんがあるとこやね」と言っていただけるように。
私は地元の中学校を卒業後、高校は寮生活、大学は一人暮らしで、そこから修行に行き、この間10年ほど地元から離れていたのですが、いつも出身を聞かれて答えると、「どこ?」と。愛知川、滋賀県がまず認知されないことが多くて、それが悲しいというか、いろんないいものがあるのに知ってもらえていないということを体感し、自分のできる「食」で何か貢献したいと、ずっと考えていました。ですから、この「ほうじ茶プリン」をきっかけに、地元のことを知っていただきたいという思いを持っています。
創業は宝暦8年(1758年)。趣ある佇まいの竹平楼
●この地ならではの食材を使い、手間を惜しまず丁寧に作る日本料理の魅力を届けていきたい
・・・今後に向けての取り組みをお聞かせください。
どの業界にもいえることだと思うのですが、いま、日本料理をつくる職人のなり手が少なく、人材が不足しています。長く続けていくためにも、人材を育てていく必要があると感じています。
そして、日本料理の良さも伝えていきたいと考えています。というのも、私どもが提供する懐石料理は、一品一品にすごく手間と時間をかけています。例えば、「子持鮎の有馬煮」という料理は一週間かかります。素焼きして一日寝かし、番茶で2、3日炊いて骨までやわらかくし、そこから酒と砂糖で味付けをするのに1、2日かけてゆっくりと炊いていくのですが、食べるのは一瞬なんです(笑)。栗の渋皮煮も一週間ぐらい、とても手間がかかります。
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手間暇かけて作られる美しい懐石料理
昔の人は、家庭で作っておられたので手間がかかることをご存じですが、いまは買ってすぐに食べられる時代なので、そういうことが、なかなか伝わらないのが残念です。心を込めて丁寧に作った料理を、「おいしい」と喜んでくださると、作り手としても大変嬉しいので。和食にメイン料理という概念はなく、すべてがメイン料理なんです。ですから説明を添えて、一品一品趣の異なるものとして食べていただくと感じ方も違ってくると思いますので、そうしたことを意識してご提供しています。
土地のもの、季節のものを使い、手間暇かけてつくる伝統的な日本料理を、多くの方々に届けたい。そのためには、まず知っていただくこと。「ほうじ茶プリン」がそのきっかけになればと思います。
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明治天皇ご巡幸時の玉座がある「御座所」
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渋沢栄一直筆の書がある「広間」
江戸時代後期に作庭された庭園
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■有限会社 竹平楼(たけへいろう)
代 表:西村 正司
住 所:〒529-1331 滋賀県愛知郡愛荘町愛知川1608
TEL :0749-42-4007
FAX :0749-42-4008
E-mail: info@takeheiro.com
URL : https://www.takeheiro.com/
■「日本料理 竹平楼」
営業時間:11:30~15:00(入店~13:30)、17:00~22:00(入店~19:30)
全室個室・完全予約制
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