タレントのマツコ・デラックスさん(45)が、耳の三半規管にウイルスが入り、めまいなどを発症。大事を取って都内の病院に入院していました。
16日になって、体調が回復していることを公式サイトで報告しました。
 

めまいの半数を占める病気とは

めまいを訴える人の数は、厚生省の国民生活基礎調査によると、約240万人にのぼっています。

めまいは、からだのバランスを保つ機能に障害が起こると生じます。

耳は音を聞く働きのほかに、からだのバランスを保つ働きもあります。このため耳に異常が生じると、主に回転性めまいが起こります。マツコさんの場合、どういった診断名がついたかは不明ですが、めまいを訴える人のほぼ半数は「良性発作性頭位めまい」という病気です。

2012年、女子サッカー日本代表だった澤穂希さんがこの病気になったことでも知られています。当時、澤選手は約1カ月間治療に専念して完治。無事に戦線復帰を果たしました。
 

原因は耳の中の「石」!

マツコさんの場合は、耳にウイルスが入り込んだことが原因とのことでしたが、「良性発作性頭位めまい」は、耳の中にある小さな「耳石」のかけらが原因となります。
「耳石」は微小な炭酸カルシウムの塊で、内耳の中の耳石器上に乗っています。「耳石」は、前庭と呼ばれる部位の神経細胞に隣接していて、身体が動いた際に神経細胞を刺激し、加速度を感じさせる重要な働きがあります。

またすぐ近くには、半円形をしたチューブ状の3つの器官・三半規管があります。三半規管の中はリンパ液で満たされていて、液体の動きによって体の動きを感知する重要なセンサーの働きをしています。

「耳石」はもろく、ちょっとした衝撃や老化で一部が欠けることがあります。そのため「耳石」が何らかの拍子ではがれてしまい、かけらが三半規管に入ることがあるのです。「耳石」のかけらは、三半規管の中のリンパ液の流れをかき乱し、波のようなものを作ってしまいます。すると、体が揺れていないにもかかわらず、揺れていると感知してしまいます。

実際の姿勢とは異なる情報が送り出されることで、脳が混乱。その結果 起きるのが「良性発作性頭位めまい」なのです。
 

寝相が良いと改善しない!

 
 
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頭部を動かすとめまいがするので、安静にして、なるべく同じ格好で寝てしまいがちです。
しかし、実はこれが良くないのです。

頭を動かさず同じ姿勢で寝ると、「耳石」が新たにジワジワと溜まってしまいます。そして、長時間集まり続けると、1つのカタマリになってしまい、神経細胞を刺激。再びめまいが起きてしまいます。このめまいに限っては、寝相良く寝るのはお勧めできません。

症状を改善するためには、実は頭をなるべく動かす事が大切になります。
「耳石」は、寝返りを打ったり、頭部を動かすことで、リンパ液の中をあちこち動き、だんだんと砕けて、細かくなっていくのです。小さな粒々にまでなれば、神経細胞に大した影響を及ぼさなくなります。

頭部を右・正面・左と細かく動かして、「耳石」のかけらを三半規管内で徐々に砕けさせる「エプリー法」という治療法もあります。
但し、首を動かしすぎると他の症状が出てしまう危険性もあります。耳鼻科の医師や理学療法士などの専門家に施してもらうのがいいでしょう。特に頚椎の疾患がある方は必ず主治医と相談してからにしましょう。

また、枕を高くすることで、めまいが改善された例もあります。
枕を高くして、寝ている時の頭部に角度をつけることで、「耳石」のかけらが三半規管に入りにくくなるようです。
 

予防には牛乳1杯半!

骨粗しょう症の人は「良性発作性頭位めまい」を発症しやすいので、予防のためには十分なカルシウム摂取が重要です。
日本人に必要とされるカルシウム量は1日800mgですが、実際には1日288mg足りていないとされています。288mg分は、牛乳にするとコップ約1杯半になります。
また、カルシウムは他の栄養素と組み合わせないと、40%程度しか体内に吸収されません。

カルシウムを効率よく吸収するには、ビタミンDとビタミンKの摂取が大切です。ビタミンDは魚やキノコなどに、ビタミンKは葉物野菜や納豆などに多く含まれます。牛乳1杯半+それらの食材が、予防につながります。
 

めまいには他の疾患の場合も

めまいの症状が出る疾患は他にもあります。

「良性発作性頭位めまい」の場合は、めまい発作が続くのは数十秒。難聴や耳鳴りなどの症状は起こらないのが特徴です。

発作が1~2時間続く場合、内耳の病気である「メニエール病」の可能性が大きくなります。ほとんどの場合、難聴や耳鳴りを伴います。1日~1週間も発作が続く場合は、内耳の前庭に炎症が起きる「前庭神経炎」が疑われます。

いずれにしろ、早めの耳鼻科受診が大切です。
 

高山哲朗
高山哲朗

日々の診療では患者さんの健康維持・増進により深く貢献できるよう努めております。的確な診断、共に疾患をコントロールすること、日々の健康を管理し病気にならないようにすることは内科医の責務と考えています。常に学ぶこと、根拠に基づく説明を分かり安く行うことを心がけてまいります。
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長