「他人の為に犠牲になるのは無意味」 シリア撤退から予測するトランプと同盟国日本との関係

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  • トランプ大統領は根っからの「ペイリオコン」
  • シリア北部から米軍を撤退させた根拠は信念に基づく
  • 「他人の為に犠牲になるのは無意味」なら、日本との関係は・・・?

トランプ大統領は根っからの「ペイリオコン」

「ペイリオコン」という言葉がある。

「paleo-conservatism」の略で「paleo」はギリシャ語で「古い」。
つまり「古い保守主義」で、「ネオコン(neo-con)」と対比する伝統的保守主義のことを言う。

ウィキペディア英語版で見ると「ペイリオコン」は「移民を制限し、政治の非中央集権化、貿易関税の強化による保護主義、経済民族主義、孤立主義と性別や人種問題で伝統的に保守的な考えを持つ」とある。

これを具体的な政策にしてみると「移民締め出しの壁建設」「規制半減」「対中貿易制裁」「アメリカファースト」「TPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱」「アファーマティブ・アクション(人種差別是正措置)の見直し」などとなるが、これはトランプ政権そのものではないか。

つまりトランプ大統領は根っからの「ペイリオコン」と言えるだろう。

シリア北部からの米軍撤退の根拠

であれば、トランプ大統領がシリア北部駐留の米軍を撤退させて同盟関係にあったクルド族の存在を危うくさせるようなことをしたのも説明がつく。米国は他国のためにつくす必要はないという「ペイリオコン」の基本的な考えがあるからだ。

トランプ大統領の公式ツイッターより

これに対して「トランプは気まぐれから同盟国を捨て去る」などと批判の声が上がっているが、同大統領はツィッターでこう反論している。

「様々なグループが何百年にもわたって争っている中東に米国が介在すべきではなかったのだ。50人の米兵は撤退させる。トルコはクルド族が捕まえたISIS(イスラム国)の戦闘員は欧州が帰還させることを拒否しているので拘束をを引き継ぐべきだ。米国にとってこのバカげた終わりのない戦いはもう終わりだ!」

シリア北部から一部撤退する米軍

「ネオコン」が生まれた経緯

「ペイリオコン」の世界観を知るためには、それと真逆の「ネオコン」が生まれた経緯をみるのが良い。

「ネオコン」は、元々はウッドロウ・ウィルソン大統領からジョン・ケネディ大統領に至る米民主党の理想主義者たちが掲げた世界平和や民主主義などの理念が、ベトナム戦争で破綻し民主党が内向きになったのに失望した民主党リベラル派が共和党にはしって旗上げしたものと言われる。

その基本的な考えは、米国の国益よりも自由や民主主義の確立を優先しそのためには武力介入も厭わないというもので、経済的にはグローバリゼーションを理想とする。9.11の同時多発テロ以降米政界に深く関与し、二つの湾岸戦争を始めたブッシュ親子も「ネオコン」の側近の影響を受けた。

共和党だけでなく、民主党のヒラリー・クリントン氏も基本的に「ネオコン」の世界観を支持している。

トルコによる攻撃を受けるシリア北部

「他人のために犠牲になるのは無意味」

トランプ大統領は、その「ネオコン」が米国政治の表舞台に登場した頃の2001年に党籍を民主党に変えている。その後2004にブッシュ(子)大統領が始めたイラク戦争にも反対していた。その動機は明らかではないが「他人のために犠牲になるのは無意味」という考えが根底にあるのは間違いない。

大統領就任後も対外的に強硬な発言はするものの現実に武力攻撃を命じたのは、2017年7月にシリアの化学兵器使用に対する懲罰的なミサイル攻撃だけだ。

その後も政権内のボルトン氏ら「ネオコン」の重なる進言にもかかわらず、イランへの攻撃を中止させたり、やはりボルトン氏が計画していたとされるベネズエラの反米マドゥロ政権に対する武力介入も排除した。

トランプ政権を去ったボルトン元大統領補佐官

そのボルトン氏も政権から去って、トランプ大統領は「ペイリオコン」の「ハト派」的政策をさらに強く打ち出すことが考えられるが、それは日本にとって歓迎すべきなのだろうか?

「日本のために米国の青年の血が流される時代は終わった」
とトランプ大統領がツィートする日が来るかもしれないからだ。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】

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