最高裁判事の新たなセクハラ疑惑を報じたが・・・

ニューヨーク・タイムズは、どうなってしまったのだろう?

同紙は13日の電子版と15日の日曜版で「ブレット・カバノー最高裁判事の新たなセクハラ」という記事を掲載した。
同判事のイエール大学時代の同級生のマックス・スタイヤー氏の話として、大学時代の乱痴気パーティーで若きカバノー判事は裸同然になり友人が同判事の一物を同席していた女子学生に握らせたというものだった。

2018年9月 上院での聴聞に応じるブレット・カバノー氏
2018年9月 上院での聴聞に応じるブレット・カバノー氏
この記事の画像(7枚)

カバノー判事をめぐっては、昨年10月の議会での承認を前に学生時代の同判事に性的暴行を受けたという女性が複数名乗りを上げて難航したが連邦捜査局(FBI)の捜査の結果「疑惑を裏付けるものは一切なかった」ため最高裁9人目の判事として就任していた。

しかし同判事は妊娠中絶問題や銃規制、人種差別問題で保守的な立場をとることで知られており、任命したトランプ大統領に反対する民主党やマスコミから引き続き攻撃の的となってきた。

ブレット・カバノー氏を最高裁判事に任命するトランプ大統領
ブレット・カバノー氏を最高裁判事に任命するトランプ大統領

色めき立った反トランプ陣営

そこへ伝えられた今回のニューヨーク・タイムズ紙の報道に反トランプ陣営は色めき立った。

「昨年カバノーは上院の調査不十分な審査で承認されてしまったが、それで無罪放免になったわけではない。新たな疑惑は問題だ。彼を指名した者(トランプ大統領)同様に弾劾されるべきだ」

民主党の大統領候補のエリザベス・ウォーレン上院議員はこうツイートした。

民主党の大統領候補 エリザベス・ウォーレン氏
民主党の大統領候補 エリザベス・ウォーレン氏

議会でもカバノー判事の弾劾が民主党議員たちの口にのぼったころに配達されたニューヨーク・タイムズ紙日曜版の同じ記事には、最後に次のような編集者の追記があった。

「この記事はまもなく発行される本より抜粋したものですが、その中で(若きカバノー判事にセクハラを受けたという)女子学生は本の著者のインタビューを受けず、また女子学生の友人は彼女がそうした問題は記憶していないと言っていた部分が記事では欠落していましたので追加します」

また、この疑惑を指摘したという判事の同級生のマックス・スタイナー氏は民主党の活動家でクリントン元大統領夫妻の個人弁護士だが、タイムズ紙のインタビューを拒否したという。

つまりは、トランプ大統領に反対する立場の人物の話を裏付けもとらずに書いた本の一部を、ニューヨーク・タイムズ紙も補足取材をせずに記事にしたということだろう。

トランプに不利なニュースはすべて掲載?

「カバノーの顔に泥を塗るような話に関わったニューヨーク・タイムズ紙の関係者全員の辞任を求める。これは「ロシア疑惑」の魔女狩りと同じようにデタラメだ。古きグレイ・レディ(ニューヨーク・タイムズ紙の愛称)を破滅させ、その美徳を破壊し、信用を失墜させてしまった....」

トランプ大統領の公式ツイッターより
トランプ大統領の公式ツイッターより

トランプ大統領もこうツィートしてニューヨーク・タイムズ紙のフェイク・ニュースを改めて批判した。

ニューヨーク・タイムズ紙の一面の題字左には「印刷に値するニュースはすべて掲載する」と同紙のモットーが記されているが、最近は「トランプ大統領に不利なニュースはすべて掲載する」に変わったのだろうか。

【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【イラスト:さいとうひさし】

「木村太郎のNonFakeNews」すべての記事を読む
「木村太郎のNonFakeNews」すべての記事を読む
木村太郎著
木村太郎著
木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。