大阪・関西万博の影響もあり、多くの訪日観光客が訪れる大阪。
ミナミの街を歩くと、様々な場所でスーツケースが無断放置されるケースが相次いでみられた。
放置によって、ホテルでは1年間の廃棄費用が15万円になるケースも。
海外から訪れた人たちにも実態を聞いた。

■街にあふれる『置き去りの旅の跡』
今、インバウンド増加などに伴う課題として表面化しているスーツケースの放置問題。
実態を探るべく、まず大阪・ミナミに向かった。
記者リポート:ありました。スーツケースです。道の端の方に放置されています。
放置されていたのは、中にごみのようなものが入ったスーツケース。
さらに、ミナミの中心部の大通り沿いの人通りが多い場所でも、車輪の部分が一部ついていないスーツケースが。
よく見ると、フィリピン・マニラから来たとみられる便名が書かれている。
確認できただけでも、およそ2時間で4個のスーツケースが放置されていた。

■関空で放置されたスーツケースの数は過去最多
この状況には大阪の玄関口、関西空港も頭を悩ませているという。
2018年からの関空で放置されたスーツケースの数は、24年度に過去最多を記録。
空港内の調査を始めると…
記者リポート:こちらのスーツケース5個なのですが、ゴミ箱の横に置かれていて、2時間もの間放置されています。
持ち主らしき人物はいつまで経っても帰ってくることはなく、さらに2時間後、関空の警備員が中に危険物が入っていないか、対応にあたることに。

■スーツケースの中からは鍋や出前用の配達箱が…
中から出てきたのは…
記者リポート:服のようなものですかね。大量に入っています。
次々に開けられるスーツケース。
記者リポート:鍋が出てきました。
出てきたのは調理器具とみられるものに…
記者リポート:出前用の配達箱ですかね。そのまま入れられていますね。
中華料理店がそのまま移動してきたかのようなものの数々。

■スーツケースの放置は相次いでいるのか?外国人に訪ねてみると…
スーツケースの放置はなぜ、こんなにも相次いでいるのか。外国人に直接、訪ねてみると…
フィリピンからの観光客:日本で買った物を持ち帰って、自分の荷物を置いていったんじゃない。荷物の追加料金を払いたくないからね。
スペインから来日した人:問題と思う。ホテルで見た。小さい荷物(スーツケース)を捨てるところ。それはたぶん、いっぱい買い物があって、大きい荷物(スーツケース)買ってドンキとかで、小さい荷物(スーツケース)をホテルで捨てる。
ホテルなどに不要になったスーツケースを置いてくるのでは?という指摘が。

■実際に大阪市内のホテルを訪ねると…スーツケースがずらり
大阪市内のホテルを訪ねると、そこには想像を超える現実があった。
ザ ロイヤルパークキャンバス大阪北浜・本間貴之総支配人:先々月には一回破棄をさせていただいて、それでまた貯まったものをここにいれているので、本来であれば違う倉庫として使用したいんですけど」
客室に放置されていたというスーツケースがずらり…
本間総支配人:円安で海外の人が来られて新しいのを買って前のスーツケースはもういいや、いらないやってことで置いてってしまうんではないかなって。
ホテルとしては「忘れ物」として、3カ月の間、丁寧に保管することをルールにしているといいますが…「保管場所に余裕はなく、破損があるなどの明らかな置き去り物は3カ月待たずに処分する場合もある」とのこと。
(Q:実際これ取りにこられる人はいるのか?)
本間総支配人:いないです。一回も聞いたことないです。
忘れ物として保管に場所が必要なうえ、結局、処理をするのもホテル側という厄介な状況。
このホテルでは、廃棄費用は年間約15万円かかっているということだ。

■忘れ物の中には新しいスーツケースも
また、スーツケース以外にも傘や衣服など外国人観光客による物の放置は後を立たない。その一つ一つを見てみると…
本間総支配人:結構スーツケースとしてはかなり真新しいんです。これとかもものすごくきれいですし。
忘れ物は、まだまだ使えそうなものばかり。
そこでホテル側もロビーに衣類の回収ボックスを設置したり、不要な傘は学校などに寄付をするなどなんとか再利用をしようと取り組んでいる。
本間総支配人:(放置されるものなど)そういったものが多くなってくると、ホテルの(保管する部屋の)容量がなくなってきてしまうので、それをどう対応するかってのは、今非常に問題として抱えておりますね。

■対策を模索する行政
今後、この問題をどう解決していくのか、大阪観光局に聞くと…
公益財団法人大阪観光局 溝畑宏理事長:一度ちゃんとホテルに聞きこみ調査やりまして、今は手ぶら観光という形でホテルと旅行会社・運送会社をマッチングして手ぶら観光を推進している。スマートロッカーという形でロッカーの運用もお願いしている。そこでも十分に把握できないこと部分があるとしたら、早急に把握してしっかりと対策を打っていきたい。
大阪観光局は、早急に調査する考えを示した。
インバウンド需要で増えた様々な課題。
今後、課題解決に向けた取り組みが求められる。

■元AERA編集長の浜田敬子さん「捨てないようにもっと周知してもいいのでは」
元AERA編集長の浜田敬子さんは、スーツケース放置問題について、「旅の恥はかき捨て」という言葉を思い出した」と批判し、「捨てないようにもっと周知すべき」と提言した。
ジャーナリスト浜田敬子さん:自分の地元では絶対にしない行為を旅先だからやるのは悲しいなと思います。(ホテルでは、忘れ物の)再利用もされていて、これ以上の負担は難しい。本来捨てる場合は粗大ごみで有料。ホテル側が『置いていかないで下さい・捨てるのは有料』と打ちだしたり、空港のゴミ箱に『スーツケースは捨てないで下さい』と周知してもいいのかなと思いました。
関西テレビ・神崎博報道デスク:行政側が(スーツケースなどを)回収する施設を作って、(回収の)無料クーポン券を渡す代わりに、応分負担という形で出国税を値上げして、観光客にまかなってもらう仕組みを考えたほうがいいのかなと思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2025年6月24日放送)
