絶対上陸させてはいけない殺人アリ!

 
 
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「ヒアリ」は南米原産の赤茶色の小型のアリで、体長は2.5mm~6mm。スズメバチと同じくらい強力な毒を持ちます。

腹部にある針で刺されると火傷のような激しい痛みが生じ、アレルギー反応によって死に至ることもあります。ハチのように刺した後に針が取れることはないため、続けて7~8回相手を刺すことが出来ます。

「ヒアリ」は相手を問わず攻撃し、しかも集団で襲ってきます。ネズミや爬虫類などの小さな生き物なら、集団で食い殺してしまいます。人体や自然環境に大きな影響を及ぼすことから、世界各地で大きな問題となっています。

多くの生命を奪い、経済にも大打撃が

 
 
 
 

「ヒアリ」の毒への反応は人によって大きく異なり、軽度から重度まであります。重度の場合、アナフィラキシーショックを起こし、生命の危険を伴います。

「ヒアリ」の毒には、ハチの毒との共通成分があるため、ハチに刺されてアレルギー反応をおこした経験のある等、ハチ毒アレルギーを持つ人は特に注意が必要です。アメリカでは「ヒアリ」の被害が年間8万人以上に上ると報告されており、うち100人以上がアレルギー反応によって亡くなっています。

農業への影響も深刻で、多種多様な作物を食い荒らします。また電気に引き寄せられる性質を持ち、電気設備に侵入し破壊することもあります。「ヒアリ」がアメリカ経済にもたらす損失は、年間で数千億円に昇るのです。

天敵のいない国で大増殖!

南米中部が原産ですが、現在では北米はじめ、フィリピン、中国、台湾、タイ、オーストラリアなどの環太平洋諸国に定着しています。北米には、原産地の南米の5~10倍のヒアリが繁殖しているとされます。

なぜ、そんなに広範囲に定着してしまったんでしょうか?

「ヒアリ」の原産地;ブラジル・アマゾンには、天敵や他の攻撃的なアリ等が生息し、「ヒアリ」だけが生態系を変えるほど増えることはありません。しかし、人間がライバルのいない別の土地に「ヒアリ」を運んでしまったことから、「新天地」で大増殖を始めたのです。

無敵の「殺人アリ」に残酷な天敵がいた!

近年、アメリカ農務省農業研究局が、「ヒアリ」の天敵を利用する新たな対策に乗り出しています。その天敵とは、アマゾンなどに生息するノミバエというハエ。

ノミバエは「ヒアリ」が出すフェロモンを検知して、「ヒアリ」の巣を発見します。そして、腹部のトゲを「ヒアリ」の体に突き刺して、一瞬で200個の卵を産み付けて寄生させます。

孵化した幼虫;ウジムシは、「ヒアリ」の体液を吸って成長。そして「ヒアリ」の頭部に向かってゾロゾロ移動します。

幼虫が「ヒアリ」頭部に入ると、今度は「ヒアリ」の脳を食べながら、酵素を分泌します。その結果、頭部内はドロドロに溶かされ、ついには「ヒアリ」の頭部がはポロリと転げ落ち、落ちた頭部の口から、たくさんのノミバエの成虫が現れる…。まるでSFホラーの様相ですが、アメリカの一部の州では、既に導入されているそうです。

 
 
高山哲朗
高山哲朗

日々の診療では患者さんの健康維持・増進により深く貢献できるよう努めております。的確な診断、共に疾患をコントロールすること、日々の健康を管理し病気にならないようにすることは内科医の責務と考えています。常に学ぶこと、根拠に基づく説明を分かり安く行うことを心がけてまいります。
慶應義塾大学病院、北里研究所病院、埼玉社会保険病院等を経て、平成29年 かなまち慈優クリニック院長。医学博士。日本内科学会認定医。日本消化器病学会専門医。日本消化器内視鏡学会専門医。日本医師会認定産業医。東海大学医学部客員准教授。予測医学研究所所長