――加藤教授から「キイロネクイハムシ」と思われる昆虫の解析を頼まれたとき、どう思った?

晴天の霹靂でした。すぐに標本(形態)を見て、間違いないことを確認しましたが、分子系統の解析でどんな結果になるか、興味をそそられました。


――絶滅したはずの「キイロネクイハムシ」が琵琶湖で発見された。この理由について、どのように考えている?

これまでの数少ない採集記録のほとんどは、小規模な池などでのものですが、そのような生息場所では水質が悪化して、1960年代ごろまでで、すべて絶滅したと思われます。

1例だけ琵琶湖での記録がありましたが、この虫が小規模な池などばかりでなく広大な湖にも生息するとは考えられておらず、実質的に有効な探索が行われていなかったと考えます。このようにして、採集されなくなったので、絶滅とされましたが、実は琵琶湖にはずっといたということです。

キイロネクイハムシ(右)と生息場所(左)
キイロネクイハムシ(右)と生息場所(左)

――今回の発見は、今後の研究のどのようなことに活かされる?

今回の再発見で得られた経験は、今度、絶滅が危惧されている、希少な水生生物の分布調査に活かされると思われます。

「大発見の手伝いができたことはうれしい」

――曽田教授にとって、加藤教授はどのような存在?

1976年に京大農学部の同じ学科に入学し、大学院でも同じ研究室(昆虫生態学)でした。同じ研究分野にいても、指向性は違いますが、多少、競い合うところもあるような、気の置けない友人関係がずっと続いてきました。


――論文が共著であることをどのように受け止めている?

今回の発見は、加藤君でなければ、できなかったと思います。その大発見の報告の手伝いができたことはうれしいです。加藤君と私は今年度で定年を迎え、来年の3月末に退任するのですが、私達の現役最後の年に、たまたま、このような共著の論文が出せたことは、予期せぬことで本当にありがたいと思っています。

 

絶滅したはずの昆虫「キイロネクイハムシ」が琵琶湖で見つかったことは、約60年ぶりの大発見だ。発見した加藤教授、そして遺伝子解析を行った曽田教授。

同期でしかも今年度で定年を迎える2人が、定年前にこのような大発見の論文を共著で発表できたという事実には、さらなる驚きがあり心も温まった。定年後も、気の置けない友人関係が続くことだろう。

プライムオンライン編集部
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